レクサスでおなじみの高級オーディオブランド、マークレビンソン(Mark Levinson)は今年で 50 周年を迎える。その記念として、世界限定販売台数 50 台。ML50 を記念したパワーアンプ(¥6,050,000)
の紹介と、試聴の機会が設けられた。また、6月に発売された、レクサスのワイヤレスヘッドホン(149,600円)も展示されていた。
当日は、ハーマン ラグジュアリー オーディオを牽引している副社長兼GMのデビッド トヴィシ氏と、戦略およびプランニングのシニアディレクター、ジム ギャレット氏によるプレゼンテーションが行われた。
1972年の創業以来マークレビンソンは、音楽を忠実に再現するという、オーディオ業界のスタンダードであり続けていると確信している。この50年間開発設計チームがたゆまない努力を続けてきてくれたことにより数々の賞を受賞している。そしてレクサスとのリレーションシップも、25周年を迎えている。レクサスとマークレビンソンの関係は、常に共通の価値観に基づいて築き上げられているのだ。両社は細部にこだわり、自社製品に対して最高の結果を求めてきた。実際に、何年もの間、走行する車内で満足のいく音響性能を実現することは難しいと考えられてきた。しかしながら、レクサスの妥協を許さない極めて高い自動車設計技術により、類を見ないほどの高い静粛性と乗り心地を追求され続けてきた結果、ついに車載用のマークレビンソンが完成したのである。
マークレビンソンは常に妥協のない音楽の芸術性を追求してきたが、その中でも特筆されるのが、伝統のピュア・パス回路設計だ。信号の入口から出口まで、正確な電気伝送を実現するために慎重に選択されたフルディスクリート・コンポーネントをフルバランス回路構成にて使用することにより、低歪と高いトランジェント能力を実現している。この回路設計の思想を50年継続してきて踏襲しているのが、モノラル・パワーアンプML-50だ。これは表面にガラスを配してエンジニアの努力の結晶を直接確認することができるようにデザインされている。高級スポーツカーによく見られるような、ガラスウィンドウからエンジンを見られる構造からインスピレーションを受け、ガラスを採用し回路設計が見えるようなデザインとした。レクサス LCの限定モデルで行ったように、ML-50は世界で100セット限定で販売を開始した。日本に出荷したセットは、幸運にも全て売約済である。
もう一つは、日本では今年の6月から販売を開始しているレクサスのワイヤレスヘッドホンだ。アメリカでは昨年のCESで発表したが、マークレビンソンにとってこのヘッドフォンはとても重要なものである。家で楽しむハイエンドオーディオとしてのマークレビンソンから、家を飛び出していつでもどこでもまるで相棒のような身近な存在として、その地位を確立したのではないかと思っているという。このヘッドホンはあらゆる人々にとってどうしたのブランドを身近なものにし、マークレビンソンブランドの認知度をさらに高めるものである。この最初の一歩は、マークレビンソンの高級オーディオビジネスだけではなく、レクサスのディーラーにとっても顧客への新たなタッチポイントとなり得るだろう。
ここからは、詳細な商品紹介となる。まずは、ML-50から。
開発にあたり、Mark Levinsonチームは過去のいわゆる“銘機”と謳われたモノラル・パワーアンプのデザイン・設計などを振り返った。そのどれもが以降の製品に多大な影響を与えた製品群だ。「ML-50」の名前の由来は、1977年から1986年に製造された最初のパワーアンプである「ML-2」だ。また、本製品の大きなフロントパンネルハンドルは、1986年から1995年に製造された「No20」とそのアップグレードモデルである「No20.5」、「No20.6」からインスパイアされた。ブランドとして初めて“リファレンス”の名を冠したパワーアンプ「No33」(1994-2003)および「No33H」(1997-2007)は、「ML-50」の強固な基盤を提供する防振アイソレーション・フィートのアイデアの元となり、ガラス製フロントパネルと赤いバックライト付きロゴデザインのコンセプトは、2008年から2019年に製造された「No53」から取り入れられた。そして、「No536」(2015年~)パワーアンプは、本製品のオーディオパフォーマンスのプラットフォームとなっている。
現行の最上位モデルとなるモノラル・パワーアンプ「No536」をプラットフォームとしながら、電源部とオーディオ回路部を大幅に強化した。高電圧電源(電圧ゲインとプリドライバ回路)のコンデンサーの容量を13,200uFまで増加させることでノイズフロアを低減。次に主大電流電源の容量を206,800uFまで最大限に確保し、トランスからフィルターキャッパシターまでの低インピーダンス経路用にショットキー整流器を再構成、動的電力の増加を実現した。さらに出力段のバイアスを増加させることで歪みを低減し、クラスA領域での出力を8Ω負荷時20Wまで確保、クラスAB領域での出力も、8Ω負荷時425Wの過去最高の出力を獲得している。
「Mark Levinson」伝統のピュア・パス回路設計を踏襲。信号の入口から出口まで、正確な電気伝送を実現するために慎重に選択されたフルディスクリート・コンポーネントをフルバランス回路構成にて使用することにより、低歪と高いトランジェント能力を実現している。
本体シャーシの4隅すべてに振動を減衰する防振アイソレーション・フィートを搭載。不要な振動を本体から排除することはもちろん、本体を設置面から持ち上げることにより、左右の外部ヒートシンクと合わせて対流冷却を強化。オーディオパフォーマンスの向上と安定した動作環境を提供する。
細部にまでこだわり、整然とした美しい回路設計を見ることができるカスタムガラストップデザインとLED照明を採用。マークレビンソンのシグネチャーカラーであるレッドが輝き、50周年記念モデルにふさわしいプレミアム感を演出する。
1972年の創立から現在に至るまで、すべての「Mark Levinson」のアンプはアメリカ合衆国にて開発・生産がおこなわれている。本製品は全世界100ペア限定の生産となり、厳しい検査基準にクリアした証明と合わせて、シリアルバッジが添付される。また、特別アルバムもつけられている。
もうひとつがレクサスのワイヤレスヘッドホンだ。
製品開発には、すでにヘッドホン製造に長年の経験と実績を持つハーマン傘下ブランドの技術と、綿密なリサーチにより導き出された理想のヘッドホン特性に基づいた音響設計が惜しみなく投入されている。また、マークレビンソンサウンドのフィロソフィーでもある「原音を忠実にライブの感動を再現する」を目指すため、ベリリウムコーティングを施した最高品質の新開発40mm径ダイナミックドライバーを搭載。極限まで研ぎ澄まされた純度の高いサウンドを楽しむことができる。さらにそのサウンドクオリティを十分に引き出すため、業界最上位クラスのハイブリッド式ノイズキャンセリング機能を搭載。音楽情報を損なうことなく、上質な静寂感の中で心行くまで音楽に浸る体験を提供する。
プロダクトデザインはマークレビンソンブランドの高級感を踏襲。アルミを使用するなど、軽量化にもこだわった。ヘッドバンドやイヤークッションにはプレミアムレザーを採用、イヤーカップにはアルマイトフレームにメタリック加工を施すなど、美しいデザインと高い質感を実現するとともに音質に寄与する高い装着感と適度な密閉感を両立している。長時間装着していても疲れないよう、羊の革を使用している。
また、無料のアプリも提供されているので、随時アップデートが可能だ。また、音楽だけでなく、ノイズキャンセリング機能のみを使うことで、使用の幅が広がる。
ジム ギャレット氏によると、レクサスとマークレビンソンの共通点は他にもあり、どちらも年齢層が高めなこと。そこで、今回のようなヘッドホンで、若年層にもユーザーターゲットを広げたいという。
デビッド トヴィシ氏にお話を伺った。
-レクサスとの関係が25年も続いてきた理由は何でしょうか?
「マークレビンソンは常に最高のサウンドを提供しており、それを自動車に搭載したいと考えました。しかし、レクサス車が登場するまでは、Mark Levinsonから得られるサウンドを実感できるほど静かな自動車はなかったのです。レクサスと私たちの関係が25年間続いているのは、そのおかげです。そして重要なのは、その関係が握手しただけのいわば口約束であることなのです。驚かれるかもしれませんが、契約は結んでいません。25年間、私たちはアイデアを交換してきました。信頼関係があるんです。レクサスのチームも、トヨタのグループも、本当に最高の車内体験を望んでいます。そして、その体験をより良いものにするために、私たちは挑戦し続けているのです」
-マークレビンソンの今後の’ラグジュアリー’の姿はどんなものになるでしょう?
「私たちが次のオーディオの消費者のために適切な存在であり続けるためには、その消費者が変化することを見極めていなければなりません。音楽の聴き方も変わってきています。ですから、私たちのブランドも一緒に変化する必要があるのです。マークレビンソンのブランドがスタートした当初は、ノイズのない個室で聴くためのもの、一人で聴くものでした。でも今は、iPhoneやAndroidから簡単に音楽を再生できるような、エンターテイナー向けの製品を作っています。そして、次世代の音楽愛好家も、マークレビンソンの音質を高く評価してくれると信じています。私たちは、製品がいかに魅力的であるかを語っていますが、もっと手に入れやすいものにする必要があります。ですから、ブランドを成長させながら、エントリーレベルの製品を増やしていくつもりです。高級感を維持しながら、エントリーレベルを拡大していきます。また、このブランドを単なるオーディオマニア向けのブランドではなく、ライフスタイルに合わせたラグジュアリーブランドにしたいと考えています。ですから、将来的には、非常にユニークなライフスタイル製品をご覧いただけるようになるでしょう
-マークレビンソンは日本市場をどのように見ていますか?
「日本市場は、私たちにとって最高の市場のひとつです。ジャズ喫茶や音楽鑑賞のスタイルがありますけれど、日本の文化は、音楽が非常に重要な部分を占めています。マークレビンソンブランドは、長年にわたり、常にその文化の一部となっています。ですから、日本のマーケットにフォーカスしていきたいと思います」
-マークレビンソンのスピーカーを作る予定はないのですか?
「全部は話せませんけれど、私は製品をもっとシンプルにしたいと言っています。今は、すべてのスピーカーに対応するアンプを設計しなければなりません。マークレビンソンの仕組みは複雑で、すぐにスピーカーを作るというわけにはいかないのです。ただし、方法がわかれば、それに特化した設計が可能になります。検討は続けて参ります」