【トップギア試乗】アストンマーティン V12 ヴァンテージ:狂気漂うV12の咆哮

ドライビング

ドライビングはどんな感じ?
冷えたV12エンジンが目覚めるのは、かけがえのない瞬間であり、ヴァンテージもまたその期待を裏切らない。スタートボタンを長押しすると、燃料ポンプがジュースをぐびぐびと飲み干す音が聞こえて、V12ならではのエンジンの鼓動が伝わってくる。V8のぎこちなさはなく、もっとスムーズで高めでハイテンポな音だ。

さて、Dボタンを押して発進だ。8速のZFオートは賢くて巧みで、しゃっくりや異音を出すことなくスイスイと走る。慣れるために、まずはその辺を流してみる。第一印象はグッドだ。普通の走りをしてる限り、特に頑張らなくても難なくこなせるな。手取り足取り面倒を見てくれるというわけではないけれど、使い勝手はいい。

ギアボックスのこと、もっと教えてよ
いいギアボックスだが、すべてが普通に合格ラインなだけで、特に目を見張るほどじゃない。数時間乗ってみたら、その理由がわかると思う。パワーを出すときは、ドライバーが望むような直感的なものではない。ただ、レッドラインに近づくと爆発的に回転数を上げてくる。このクルマは、なんだか拳を握っているようなんだ。もっと短時間で回転数が上がって、もっとガツンとした何かがあって、もっとアグレッシブさが欲しい。V12の洗練されたエンジンではなく、立ち上がりから攻めるエンジンのが良かったのではないだろうか。

違う言い方をすると、V12はちょっとダルい。この類のサスペンションをつけて、スタイリングをしてるヴァンテージなんだったら、もっとチェーンソーみたいに荒々しく回転数を上げるものが必要なのだ。ノイズはマジでナイスで、切迫感がある、波打った泣き声のような、実にいい音。けど、ドライバーの毛を逆立てるほどじゃない。おそらく、ターボの消音効果によって音域が狭くなっちゃってるんだろうけど、もうちょっとやんちゃでもよかったはず。

それは残念。個性を引き出すためのドライビングモードは?
「スポーツ(ノーマル)」と「スポーツ+」と「トラック」、ドライビングモードは全部で3種類ある。下位モードの走りは硬めなんだけど、不快感はないレベルだ。スペックシートを見るかぎり、大理石でできたスケボーみたいに走りそうじゃないか。スプリングレートがフロント50%、リア40%とそれぞれアップされてて、トップマウントの剛性も13%強化されてる。新しいブッシュとジオメトリー、それからアクティブダンパーとステアリングの再調整で、レスポンスがウルトラ級に良くなっている。

トランクを開けると、リアのタワーの間にガッチリ溶接された工業用パイプみたいなストラットブレースがある。見た目はあまりきれいじゃないけど、意図は伝わってくる。走りにポルシェのような流暢さはないし、トラックモードでは、平均的なUKの公共道路はともかく、バウンドしやすいサーキットでは苦戦を強いられるだろう。とは言っても、サーキットこそがV12のアイデンティティを感じることができる。むしろ、薬でもやってんじゃないのかって感じの集中度ではあるが。

じゃあ、ちょっと走ってみよう
スピードが上がってくと、さらに輝きを増してくる。スピードメーターを上げていくと、いつものヴァンテージのシフトチェンジだ。濃密で少し重い雰囲気が、速度が上がっていくにつれて緩和され、まるで別のクルマに乗り換えたような感覚をもたらす。アクセルを踏む力を強めるたびに、クルマがどんどん軽くなっていく。

挑発を止めたときのグリップはとんでもないし、シャープなステアリングで方向転換だってお手の物。だけど、スピードが出てるときに凹凸に遭遇したらラインのキープは難しい。ダンパーを一番柔らかい設定にしてても車が跳ねてリアタイヤからスモークが出るんで、数センチ単位で注意して進まないといけない。

しかし、ハンドリングはエンジンの性能と相反するものだった。V12は、パワーとターボチャージャーの力を集め、内部の運動量がたまるまでに少々時間を要し、トルクを発生させる。でも、いったん走り始めたら、その威力は計り知れないものがある。それから、回転数を下げるのを嫌う。トラクションを失うと、スロットルを閉じて過剰な回転を抑えることができなくなる。エンジンはスイッチみたいには反応しないんだ。そのため、このクルマは、グリップぎりぎりの大きめのカーブが得意だ。けど、短くて凸凹が多いB級道路には向かない。

だから、広くて速くて流れのあるレーストラックに持っていって、実力を是非とも試してみたい。だが、それは、また別の話かもしれない。

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