【試乗】スズキの世界戦略車:新型フロンクスは2WDと4WD、どっちを選ぶ?

コンパクトSUV市場に新たな刺客が登場した。スズキの新型フロンクスは、トヨタ ヤリスクロスやホンダ WR-Vといった人気モデルにどこまで迫れるのか? デザイン、走り、インテリアなど、フロンクスの魅力を徹底解剖した。

【KINTO】

スズキのコンパクトSUV「フロンクス」が2024年10月16日に発表された。3カ月も前の7月から先行情報を公開し、プロトタイプの試乗記などは当トップギア・ジャパンをはじめ、多くのメディアで紹介された。今回、ナンバープレートを取得した市販車での公道試乗会が開催されたので、そのインプレッションをお届けしよう。

「フロンクス(FRONX)」という車名は、「フロンティア」と「クロスオーバー」をかけ合わせた造語だという。既に多くのメディアで紹介しているように、このクルマはスズキのグローバルモデル生産拠点である、インドのグジャラート工場で生産されている、スズキの世界戦略車だ。

日本仕様のフロンクスは、1.5Lマイルドハイブリッドに6速AT(パドルシフト付き)を搭載し、日本専用の4WDも設定される。インテリアの色使いや前席シートヒーター、リアヒーターダクト、ドアミラーのヒーター、ラゲッジボードのアレンジ、ステンレス製ペダルプレートなどが、日本の使用状況に合わせて専用装備された。

今回試乗した市販車は、じつは以前に試乗したプロトタイプとまったく変わらない。プロトタイプではクローズドコースでハンドリングの良さなどを確認したが、今回は街中での使い勝手や高速道路でのADAS(運転支援システム)などを中心にチェックしてみたい。

街中に佇むフロンクスの姿は、ちょっと日本車っぽくなくていい雰囲気だ。全長は4mを切るコンパクトなサイズながら全幅は1.7mを超えるワイド感が、ヨーロッパのコンパクトSUVを彷彿とさせるプロポーションをなしている。インテリアも、ブラックとボルドーの色使いがシックで、Bセグメントの日本車とは思えない、ソフィスティケートされた印象だ。

試乗は4WD車から。なお、4WD車も2WD(FF)車も見た目ではほとんど変わらない。今回はドライの舗装路での試乗のため、正直にいって4WDの恩恵を感じることはできなかったが、走り出すと、まず乗り心地の良さと室内の静かさで高ポイントをつけられる。リアシートに座った人と普通に会話でき、それは市街地でも高速でも変わらない。フロントシートのサポートは適度で、スポーティな走りにも対応してくれそうだ。

パワートレーンにはマイルドハイブリッドも採用しているが、インジケーターを見ていないかぎりモーターのアシストは分からないほど自然だ。ゴーストップの多い街中では頻繁にアイドリングストップが作動する。燃費効果は高いだろうが、少し煩わしい。最近はアイドリングストップをやめているクルマも多く、ここは一考を要するところかもしれない。

クーペスタイルのSUVゆえ、リアシートは身長170cm以上の人が座るとヘッドスペースは少し不足気味となるが、フットスペースは十分広い。ラゲッジスペースも、おとな4人で出かける荷物は十分に積載可能だし、シートアレンジやラゲッジボードを活用すれば使い勝手は高い。

続いて2WDに。乗り出した瞬間、4WDよりも軽さを感じる。やはり、1.5Lクラスのクルマでは60kgの車重差は大きい。4WDでも重ったるい印象はなかったが、2WDは明らかに軽く、スーッと走る。また、これは4WDでも共通だがトルコンATを採用したおかげで加速時もCVTのように必要以上にエンジン回転数が上がることもなく、スムーズに加速する。

高速道路でアダプティブ クルーズコントロールを試したが、前車との距離感や加減速、車線維持の状態などの精度はいい。エンジン回転数は、6速80km/hで1500rpm、100km/hで2000rpmといったところ。静粛性も良く、高速クルージングは快適だ。

スズキ車に共通ともいえる、ハンドルのロック to ロックはけっこう大きく、3.25回転。ハンドルをグルグル回す感覚だが、最小回転半径は4.8mと小回り性に優れる。しかも、この数値は4WDでも変わらないのがいい。

今回は試せなかったが、以前テストコースで試乗したときにハンドリングの良さは確認済み。パドルシフトも備わるから、けっこうスポーティな走りも楽しめる。スポーツモードにすれば、さらにアクセルレスポンスは向上する。

2WDで254.1万円、4WDで273.9万円という車両価格だが、安全&快適装備は充実しており、あと必要なのはETCとドライブレコーダーくらいだろうか。ライバルと目されるホンダ WR-Vやトヨタ ヤリスクロスなどと比較しても、十分に納得できるだろう。

年に1〜2回、雪が積もるか積もらないかという地域に住んでいて、ウインターレジャーには出かけないのなら2WDで十分。スタッドレスタイヤを準備しておけば完璧だろう。

正式発表前からの情報公開などの効果もあってか、発表時には9000台もの受注があったという(月間販売目標台数は1000台)。しかも、今までのスズキ車オーナーより若い世代となる20〜30代が3割を占め、また4WDの比率も高いそうだ。

存在感のある顔つきなど、この独特のスタイリングが気に入ったなら、フロンクスはコンパクトSUVの購入を検討している人にはオススメできる1台だ。まずは実車を見て、触って、乗ってみて、自分なりに感じてみて欲しい。(文:篠原 政明/写真:MazKen、ほか)
■ スズキ フロンクス 主要諸元 ※< >内は4WD

●全長×全幅×全高:3995×1765×1550mm
●ホイールベース:2520mm
●車両重量:1070kg<1130>
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:1460cc
●最高出力:74kW(101ps)/6000rpm<73(99)/6000>
●最大トルク:135Nm(13.8kgm)/4400rpm<134(13.7)/4400>
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:横置きFF<フロント横置き4WD>
●燃料・タンク容量:レギュラー・37L
●WLTCモード燃費:19.0km/L<17.8>
●タイヤサイズ:195/60R16
●車両価格(税込):254万1000円<273万9000円>

よくある質問/Q&A
Q1: スズキ フロンクスの魅力は?
A1: 存在感のあるスタイリングと、コンパクトながら広い室内空間、そして充実した安全・快適装備が魅力です。ヨーロッパのコンパクトSUVを思わせる、街中で映えるデザインも魅力の一つです。

Q2: 価格は?
A2: 2WDが254万1000円、4WDが273万9000円です。

Q3: ライバル車と比べてどこが優れている?
A3: ホンダ WR-Vやトヨタ ヤリスクロスなどと比較しても、充実した安全&快適装備を考慮すると、価格以上の価値を感じていただけると思います。

Q4: エンジンの性能は?
A4: 1.5Lのマイルドハイブリッドを搭載し、力強い走りと低燃費を両立しています。

Q5: 燃費は?
A5: WLTCモード燃費は、2WDが19.0km/L、4WDが17.8km/Lです。

Q6: 走り心地は?
A6: 静粛性が高く、街乗りでも高速道路でも快適なドライブを楽しめます。トルコンATを採用したことで、スムーズな加速を実現しています。

Q7: ハンドリングは?
A7: テストコースでの試乗では、ハンドリングの良さも確認済みです。パドルシフトも備わっており、スポーティな走りも楽しめます。最小回転半径は4.8mと小回りにも優れています。

Q8: 後部座席の広さは?
A8: クーペスタイルのデザインながら、身長170cmの人までなら十分な広さを確保しています。

Q9: 荷室の広さは?
A9: 大人4人分の荷物を積載可能です。シートアレンジやラゲッジボードを活用することで、さらに使い勝手を高めることができます。

Q10: 4WDと2WD、どちらを選べばいい?
A10: 雪が年に数回程度しか降らない地域にお住まいで、ウインタースポーツなどを楽しまないのであれば、2WDで十分です。スタッドレスタイヤを装着すれば、より安心です。

Q11: 納期は?
A11: 発表時に既に9000台の受注があり、月販目標台数は1000台です。納期については、販売店にお問い合わせください。

Q12: 若者にも受け入れられそう?
A12: 発表時の受注では、20〜30代の購入者が3割を占めており、従来のスズキ車オーナーよりも若い世代に受け入れられている傾向が見られます。

Q13: 試乗はできる?
A13: 試乗については、お近くの販売店にお問い合わせください。

Q14: グローバルモデルってどういうこと?
A14: インドの工場で生産され、世界各国で販売されるスズキの世界戦略車です。

Q15: 日本仕様の特徴は?
A15: インテリアの色使いや前席シートヒーター、リアヒーターダクト、ドアミラーのヒーター、ラゲッジボードのアレンジ、ステンレス製ペダルプレートなどが日本仕様として専用装備されています。
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