【トップギア試乗】アストンマーティン V12 ヴァンテージ:狂気漂うV12の咆哮

「ピュアな見かけながら過剰な実力、そして狂気が漂っていることは称賛すべき」

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見た目がハンパないとこ、走る気満々なとこ、みんな大好き

イマイチ
音が大きくないし、没頭できない。内装はまずまずだけど、チョイやりすぎなとこ

概要

どんなクルマ?
目の前にあるヴァンテージを、他のクルマと見間違うことはないと思う、マジで。今回紹介するのは、新しく出たV12ヴァンテージ。DB11やDBS スーパーレッジェーラに搭載されてる5.2リッター ツインターボV12エンジンが詰め込まれた、比較的小型のヴァンテージだ。

通常のヴァンテージには、ノーズ部分にもっとずっとコンパクトで軽量のツインターボV8エンジンが積まれてる。しかし、アストンマーティンにとっては新しいアイデアってわけじゃない。ボディワークやエアロダイナミクスの変化はかなり微妙なレベルではあったんだけど、2009年に登場したオリジナルで、アストンマーティンはヴァンテージにV12を搭載した経験がある。

今回のヴァンテージは最高出力700ps、最大トルク746Nmで、1トン当たりが390psを発揮。V12エンジンは重量級で有名なため、後者はちょっと控えめだ。それでも0-100km/hが3秒台半ば、トップエンドが2トン越えのヴァンテージだから、決して無視できない存在だ。

さらに、V12を積んでて、しかも後輪駆動だ。V12エンジンの奏でるサウンドは何物にも代えがたく、後輪駆動ともなればお楽しみは格別で、タイヤにかかる費用も喜んで負担できる(「喜んで」は言い過ぎとしても、少なくとも「心安らかに」は、払えるんじゃない?)。

とはいえ、そこまで大人しくはないよね?

その通り。仕上がりはスペックにかなり左右されるんだけど。トレッドが40mm拡大されただけで大したことがないように聞こえるかもしれない。だが、この変化だけで、V12 ヴァンテージは分厚くて幅広に見える。エクステリアに施された明らかに分別のない改造が、真剣な面持ちの顔つきという印象を強めている。

それじゃ、フロントから見ていこう。新しいカーボンファイバー製のフロントバンパーとスラッシュカット(斜めカット)の蹄鉄型ベンチュリーが追加されている。カーボン製のフロントウイングが、新しい一体型カーボン製サイドスカートでリアとリンクし、とってもかっこいい。このサイドスカートって「モータースポーツ」をイメージしてデザインされた。ルーフもカーボン製で、リアバンパーとベンチュリーもおニュー(もちろんカーボンファイバー製)だ。センターマウントの2本出しエキゾーストは実際のメタルでできてて、普通より薄いから軽量だし、熱くて溶けることもない。

カーボンのトランクリッドの上には、巨大なウイングがのっかってる。そのおかげで、カスタマーペイントするよりも、実際にいきいきして見えるんだ。けれど、おもしろいことに実は「ウイングなし」ってオプションもあるんだよね。でもウイングなしで、もっと地味な色味にしちゃったら、「あれ?これアイロン台だったっけ?」って思うこと必至(アストンのQ部門に頼めば、どんな色や模様も思いのままだ)。

とくに、「全体的なダウンフォース量こそ減るけど、ウイングが無くとも同レベルの高速安定性がある」と、アストンマーティンでは言っている。時速200マイル(322km/h)で少なくとも204kgのエアロを発生させる…風洞の中とかナルドにいない限り証明するのは難しいんだけど。

そんだけカーボンだらけなら、ヴァンテージのRSバージョンってこと?
うん、そんな風に考えられないこともないね。新しいエキゾーストでマイナス7.2kg、オプションのカーボンシートでマイナス7.3kg、さらにカーボンセラミックブレーキでマイナス23kgの減量に成功してるんだもんな(細かいとこまで自慢げに宣伝してるのは、減量にこだわったって証拠)。でも、シート自体は相変わらず一部しか電動でなく、座面の上下、背もたれの調整は一部でしか使えないし、センターコンソールでのコントロールは重複しているところもある。V12はコンパクトでも特にスカスカってわけでもない。実際、V8クーペよりも少なくとも150kgは重たいんだ。と言うわけで、「これってヴァンテージのRSバージョン?」の答えは「ノー」だ。じゃあ、これはイカレたマッスルカーなのか?それとも、サーキットでの迷える子羊なのか?ちょっとややこしい。

でも、やっぱり注目だよ。速いに違いない
ああ、速いよ。そこに関しては何の疑いの余地もない。ノイズだっていいんだよ。でも、何かが足りないんだ。ドライバーの毛を逆立ててるような、最後のクレッシェンド、一押しがない。音を減衰させてるターボのことかもしれないし、エキゾーストの設定のことなのかもしれない。どっちにせよ、ノイズの大小ではなく、効果的な側面での影響だ。

あと、パワーの波が比較的ゆっくりってのもあるね。外観から想像されるようなアグレッシブなモーターの動き、あれがないんだ。V12は高回転をキープしてパワフルに走るのが得意だから、もっとドライバーを叱責するような性格の方が合ってんじゃないかな?もっとキレキレで、ハードエッジなものの方がいい。27万ポンド(4,400万円)という価格は、レギュラーまたは14万ポンド(2,300万円)のF1エディションのヴァンテージのほうが断然安いし、速さもそこまで変わりないんですけど。

結論は?

「ピュアな見かけながら過剰な実力、そして狂気が漂っていることは称賛すべき」

ピュアな見かけだけど、過去のV12ヴァンテージほどの途方もない突き抜けっぷりはない。絶対的なスピードよりも、興奮と過剰さの方を重視してるね。この新バージョンは、強烈に見せることには成功してるけど、どこか真面目すぎるほど真面目なんだ。

ここでの狂気は祝福を受け、支持されて楽しいのは確かだ。だが、誇張されたことを受け入れた上での反応なのである。でも、周りが何を言おうと変わることはもうない。だって限定の333台すべてが既に完売なんだから。きっと買った人たちは、欠点を十分に承知した上で花火を楽しめる人たちなんだろうな。

そう、まさに花火だ。V12も派手な爆発音を立てて消えていき、それはやがて暗闇になる。「効率的なパワートレインがアストンマーティンのポートフォリオに加わるため、このクルマがV12 ヴァンテージの最後となるだろう」と語っていた元CEOのトビアス ムアースも花火のようだった。数少ない幸運な人のための最後の一台となったが、それが正しい判断であることは感じられるだろう。



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