フィアット500(チンクエチェント)がワールドプレミアしたと聞いて、初めて見たときに、「えっ、何このグリル!」と驚いた人もいたのではないだろうか。だが、FCA初の電気自動車として登場、と聞いて、「あー、電気自動車ね」とこのスタイリングに納得した。
先に言っておくが、日本ではまだ予約はできない。欧州仕様車の場合だが、航続距離はWLTPサイクルで最大320km、85kWの急速充電器を標準装備している。また、レベル2の自動運転を実現する最初のシティカーで、UConnect 5インフォテインメントシステムを搭載している。欧州ではすでに各市場500台の限定予約で、ローンチバージョンである“La Prima”のオンライン事前予約を開始。
さて、実際にこの新型500に乗ってみたら、どう感じるだろう?モーターの出力は87kW、最高速度は150km/h(電子リミッター作動)、0-100km/h 加速は9.0秒で、0-50km/h加速は3.1秒だ。
3つのドライビングモードがあり、“Normal”(ノーマル)、“Range”(レンジ)、“Sherpa”(シェルパ)から選択することができる。
“Sherpa”は、目的地に確実に到達できるよう、電力消費量を最適化するモード。このモードは複数の車両コンポーネントを制御して電力消費量を最小限に抑え、ナビゲーションシステムで設定した目的地または最も近い充電ステーションへ確実に到達できるようにする。ヒマラヤのガイド役「シェルパ」が、責任を持って登山隊を頂上へと案内するように、このドライビングモードは最高速度を80km/hに抑え、アクセルレスポンスを調整し、空調コントロールシステムやシートヒーターなどもオフにして(いつでもオンに戻すことができる)エネルギー消費量を抑制する。
“Normal”モードは内燃エンジン搭載車にできる限り近づけた設定だ。
“Range”モードではワンペダルドライブが可能となり、ほぼアクセルペダルの操作だけで新500を走らせることができる。実際のところ、アクセルペダルを足から離すだけで、通常の内燃エンジンが生み出すエンジンブレーキよりもはるかに強力な制動力が発生する。その減速度は、ブレーキペダルを踏んだ時に近い感覚だという。これまでの内燃機関では、クルマを完全に停止させるためにはブレーキペダルの使用が必要だが、日常生活のほとんどの場面において、少し経験を積めばアクセルペダルだけで走行することができるようになる。日産のノート eパワーみたいな感じになるのではと推測される。しかし、ノート eパワーに初めて乗ったときは、ワンペダル操作がこんなに楽なものかと、かなり感動した…。おっと話しがそれた。
肝心の充電システムについて。これも、欧州仕様車の場合となる。85kWの急速充電システムを搭載しており、きわめて短時間で充電が可能となっている。例えば、日常の足としては十分な50kmを走行するために必要な電力は、わずか5分間で充電することができる。急速充電器を使えば35分でバッテリー容量の80%まで充電できる。急速充電器への接続は、車体の右側後部パネルに設置されたコンボ2ソケットを使用し、AC(交流)およびDC(直流)のどちらにも対応している。
さらに注目ポイントとしては、セグメントで初めて、レベル2の自動運転を実現したクルマであることが挙げられる。フロントフェイシング・カメラ・モニタリング・テクノロジーが、車両の全周を監視、インテリジェント・アダプティブクルーズコントロール(iACC)は、検出されたクルマ、自転車、歩行者などに対応して、アクセルやブレーキを操作し、レーンセンタリングは、道路の車線を検出できる場合、クルマの位置をレーンの中央に維持してくれる。
インテリジェント・スピードアシストは速度制限を検出して、それに従うことをドライバーに推奨する。アーバン・ブラインドスポットは、超音波センサーを活用して死角を監視、障害物を検出した場合はウイングミラーに設置された三角形の警告灯を点灯する。アテンションアシストは、長時間走行時にディスプレイに警告を表示し、休憩を取るようにドライバーに推奨する。360°センサーは、車庫入れ時あるいは複数の切り返しが必要な場面において、バードビューを提供し、障害物を避けることができる。
そして、接続プラットフォームであるUConnect 5インフォテインメントシステムを搭載。Android Automotiveオペレーティングシステムを採用しているが、Apple CarPlayも、ワイヤレスで提供可能で、Android Auto向けにも同様の機能を提供する準備が整っている。
ユーザーのスマホとシームレスに連携し、クルマのダッシュボードの10.25インチ高解像度タッチスクリーンに表示される。
ミラノでの発表会には、3台のワンオフカーもお披露目された。ジョルジオ・アルマーニ、ブルガリ、カルテルといった、世界中でイタリアの優秀さを伝え続けるリーディング・ブランドが、変化に新しい息吹を吹き込みたいという共通の願いを持って、新生500のデザインに参加したものである。
63年前の登場時から、2007年に登場した第2世代の500までずっと愛され続けてきた500。13年ぶりに電気自動車として新たなスタートを切る。価格およびインフラ整備の観点からも、100%電気の自動車は、小型車の方が普及しやすいだろう。日本への導入が楽しみだな一台だ。