ニュルの魔物より厄介な夫婦喧嘩を鎮圧。48Vと魔法のシトロエン製ダンパーがもたらす究極の平和

ニュルブルクリンクのタイムアタックに血道を上げるドイツ車を尻目に、フランスの変態エンジニアたちは「夫婦の会話」を死守するために狂気的なダンパーを開発した。シトロエン C5 エアクロス。もはや車というより、路面の起伏を無慈悲に平滑化する走るラウンジである。その恐るべき快適性の真髄を解き明かそう。


究極の「平和」をもたらす変態的エンジニアリング

我々トップギアの読者は、バックガレージで油まみれになりながら、採算度外視でV12エンジンを組み上げるような狂気的なエンジニアリングを愛してやまない。だが、その「狂気」の矛先がスピードではなく、究極の「平和」に向かったとしたらどうだろうか。

2026年4月に発売されたシトロエンのフラッグシップSUV、新型「C5 エアクロス」が提案するのは、まさかの「リカバリードライブ」である。硬いサスペンションで脊椎を削りながらコンマ1秒をタイムから削り取る現代のSUVトレンドに対し、フランスの変態陣は真っ向から中指を立てた。彼らが全精力を注ぎ込んだのは、同乗者も含めた全員が自然体で過ごし、乗る人同士の時間を「取り戻す」という、お節介なほどに情緒的なミッションなのだ。

徹底的にノイズを排除する「魔法の絨毯」

そのメカニズムは、まさに狂気の沙汰である。心臓部には市街地走行の最大50%を電動でカバーする48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載し、不快なノイズを徹底的に排除。そしてシトロエンの真骨頂である独自のダンパー「PHC (プログレッシブ ハイドローリック クッション)」を標準装備し、路面からの衝撃を「魔法の絨毯」のようにしなやかに吸収してのける。

さらに、シトロエン初採用となる「STLA Medium (ステラ ミディアム)」プラットフォームの恩恵で、後席レッグスペースは50mm、頭上スペースは68mmも拡大された。MAXグレードに至っては、「C-Zen ラウンジ」のコンセプトのもと、アドバンストコンフォートシート、マッサージ機能、シートベンチレーションを完備している。13インチ縦型ウォーターフォールスクリーンがドライバーの認知負荷を軽減し、シトロエン初採用の誤発進制御サポートなどの充実した運転支援機能が日常のドライブにさらなる安心感をもたらす。

極めつけは、専門家の監修のもと開発された「ふたり時間レベル診断」だ。ドライブという「横並びの位置関係」がもたらす自然な会話に着目し、共有時間の質を測定して最適な過ごし方を提案するという。特設サイトでは「d design travel」と共同で、この車を最大限楽しむためのドライブルートとアクティビティまで用意されている念の入れようだ。

現代のオーバースペック競争に対するエレガントな解答

最高出力やラップタイムに一喜一憂するのも悪くない。だが、助手席のパートナーが不機嫌になるようなピーキーなスーパーカーより、この「C5 エアクロス」がもたらす完璧に平滑化された移動空間のほうが、実生活においてはよほど価値があるのではないか。「Caring (人に寄り添う)」「Clever (賢くある)」「Creative (創造的である)」という3つのコアバリューを掲げるシトロエン。常軌を逸した情熱で「快適さ」を追求したこのフレンチSUVは、現代の無意味なスペック競争に対する、最も痛快でエレガントなアンチテーゼである。

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