【試乗】新型アルファ ロメオ トナーレ:真の車好き(ペトロールヘッド)に捧ぐ、愛すべきイタリアンSUVの帰還

「アルファ ロメオに乗らずして真のクルマ好きとは呼べない」。我々トップギアの金言は電動化時代も健在だ。品質管理という言葉を覚えたイタリア人が放つ新型トナーレの真価を、高速メインのルートで徹底検証する。


真のペトロールヘッドのための「踏み絵」

「真のペトロールヘッド(車バカ)を自称するなら、人生で一度はアルファ ロメオを所有しなければならない」。我々トップギアが長きにわたり唱え続けてきた、宗教的とも言えるこの教義を覚えているだろうか。

かつてのアルファ ロメオといえば、息を呑むほど官能的なデザインと、魂を揺さぶるエンジンサウンドを代償として、雨が降れば電装系がストライキを起こし、ダッシュボードの警告灯がクリスマスツリーのように陽気に点滅する……そんな愛すべき「じゃじゃ馬」であった。我々は道端でボンネットを開け、天を仰ぐたびに「これもアルファの個性だ」と自分に言い聞かせ、ジェントルマンとしての寛容さを学んできたのだ。

しかし、時代は無情にも変わった。いまやイタリアの伊達男たちも、環境規制や効率化という名の冷酷な現実に向き合わざるを得ない。電動化の波が押し寄せ、SUVが街を席巻する現代において、あの熱狂的なアルファの魂は生き残ることができるのか。

そんな一抹の不安と大きな期待を胸に、私は都内のプレゼンテーション会場へと足を運んだ。デビューから3年を経て、マイナーチェンジ(彼らの言葉を借りれば「フェイスリフト」)を受けたCセグメントSUV「トナーレ」の実力を図るためである。


美しき野獣への進化と、削ぎ落とされたラインナップ

説明会場のスクリーンを横に、アルファ ロメオの担当者が自信に満ちた表情で話し始めた。

「今回リリースされる新型トナーレは、これまでの『ベローチェ』に加え、新たにエントリーグレードの『スプリント(受注生産)』を加えた2グレード体制となります。また、前期型にあったプラグインハイブリッド(PHEV)は終了し、パワートレインはマイルドハイブリッド(MHEV)の右ハンドル・前輪駆動(2WD)のみの設定へと集約しました」

なるほど、重いバッテリーを大量に背負い込むPHEVは潔く切り捨てたというわけだ。無駄な脂肪を削ぎ落とし、身軽な前輪駆動でアルファらしい軽快な走りを楽しめ、という彼らからのメッセージだろう。私は小さく頷いた。

担当者の説明は、我々が最も気にする「美意識」の領域へと入っていく。

「デザインについては、伝説のスーパースポーツ『33 ストラダーレ』や過去の名車からインスピレーションを得ました。フロントバンパーは角度を強めてより筋肉質な印象を与え、エアインテークの開口部を広げて空力性能を向上させています。伝統の『スクデット(盾)』は水平ラインを基調とした立体的なハニカム形状へと進化し、さらに156などに見られた『アゾーレ(ボタン穴)』を復活させ、空力向上に寄与させています」

ブランド戦略に基づき、フロントのエンブレムはカラーからモノクロ(白黒)のロゴへと変更されたという。シックで現代的な装いだが、決して温故知新を忘れてはいない。

特に私の目を釘付けにしたのは、足元に輝く新デザインのホイールだ。

「足元には、33 ストラダーレを彷彿とさせる『三葉(クローバー)』デザインの新型ホイールを採用しました。中が透けて見え、ブレンボ製のレッドキャリパーを美しく強調するデザインです。また、このホイールは単なる装飾ではなく、フロントから取り込んだ空気をサイドへ逃がし、静粛性の向上にも寄与する空力設計がなされています」

そしてボディカラーである。アルファとして完全な新色だという「モンツァ・グリーン」は、室内では黒っぽく沈んで見えるが、太陽の光を浴びた瞬間に深みのある緑色へと劇的な変化を遂げる。随所に散りばめられたブラックのアクセントと相まって、凄みのある色気を放っている。既存の口うるさいアルファファンも、このルックスの前ではただ息を呑み、沈黙するしかないはずだ。

高速道路で見せた、内燃機関至上主義者への歩み寄り

プレゼンを終え、いよいよ実車に乗り込む。インテリアでは、ベローチェに久々に復活したという鮮烈なレッドのレザーシートが、否応なしにドライバーの気分を高揚させる。2025年モデルから採用されたというロータリーシフトは、センターコンソールをすっきりと見せ、極めて現代的だ。

そしてもう一つ、特筆すべきはヴェローチェに搭載された「harman/kardon プレミアムオーディオシステム」だ。かつてのイタリア車といえば、容赦なく侵入してくる風切り音やメカニカルノイズを「パッションだ」と言い張り、それをかき消すためにカーステレオのボリュームを無駄に上げるのが作法だった。しかし、このトナーレは違う。465Wのアンプと車内を包み込む14基のスピーカーがもたらすのは、極めてクリアで没入感のあるサウンドだ。新設計のホイールによる空力改善がもたらす静粛性と相まって、音の深みと繊細さをパーフェクトに再現している。「エンジン音こそが最高のオーディオだ」と強がりを言っていた我々ペトロールヘッドにとっては、少しばかり寂しく、しかしひどく快適な進化である。

スタートボタンを押し、都心の渋滞を抜け、東京湾アクアラインを経由して千葉・かずさ方面へと向かう高速メインのルートへと走り出す。

まず驚かされるのは、握りしめたステアリングの感触だ。呆れるほどに極太なのである。イタリア人は我々の手に余るほどの太さを好むらしいが、これが実に悪くない。交差点を曲がるだけでも、フロントタイヤが路面をどう掴んでいるかが手のひらにダイレクトに伝わってくる。

「エンジン自体は変わりませんが、可変バルブタイミングの最適化により、低速域でのトルクを向上させています。変速のレスポンスも改善され、0-100km/h加速は8.8秒から8.5秒へと0.3秒短縮されました」

担当者の誇らしげな声が耳の奥に蘇る。首都高の短い合流レーンで、私は右足に力を込めた。

おお、これは見事だ。1.5リッターのマイルドハイブリッドでありながら、電動車特有の不自然な回生ブレーキ感や、モーターの唐突な介入がまったくと言っていいほど感じられない。純粋なガソリンエンジン至上主義者である私でさえ、なんの違和感もなく自然に乗りこなせるのだ。パドルシフトを指先で弾けば、7速デュアルクラッチ・トランスミッションはドライバーの意図を完璧に汲み取り、極めて痛快なレスポンスでギアを繋いでいく。この加速感と極太ステアリングの組み合わせは、往年のファンをも間違いなく満足させる仕上がりだ。

イタリア車が品質管理に目覚めた日

アクアラインの直線区間を心地よくクルージングしながら、私はプレゼンテーションでの信じがたい、しかし非常に興味深い話を思い出していた。

「イタリアの工場では、設計・エンジニアリング・生産現場が三位一体となり、クオリティの改善に取り組んできました。パネルの組み付け時にレーザーで隙間を測る『ギャップ&フラッシュ』のしきい値を厳しく設定し、360度スキャンカメラで塗装のムラや剥がれをデジタルの力で検知しています。さらに、完成工程での細かい傷も専用ライトと工具で検出し、出荷前に完璧に修復する体制を整えています」

イタリアの工場で? レーザー測定? 冗談だろう。ランチタイムのパスタとエスプレッソの時間を削ってまで、彼らが血眼になってパネルの隙間を測っている姿を想像すると、少し可笑しくなってしまう。しかし、目の前のダッシュボードに目をやれば、確かにチリのズレは一切見当たらない。

「ADAS(運転支援システム)のソフトウェアも刷新しました。雨や泥、強い日差しによるカメラの誤検知を防ぎ、過酷な条件下でも正確な運転支援が可能です。また、新しいタッチスクリーンの導入により、シートヒーターなどがワンタッチで操作可能になり、ワイヤレス充電器も熱がこもりにくい設計に改良されています」

イタリア車の電装系とソフトウェアを無条件で信じる日が来るとは、まったく長生きはするものである。もはや、冷徹に作り込まれたジャーマン・プレミアム勢に劣る言い訳はどこにも見当たらない。

カックンブレーキの奥に潜む「対話」の歓び

かずさ方面のインターチェンジを降り、少しばかり曲がりくねった田舎道のワインディングへと入る。ここで私は、このクルマのもう一つの強烈な個性に直面した。ブレーキである。

コーナーの手前でブレーキペダルを踏み込むと、想像を絶する強烈な制動力が立ち上がり、思わず前のめりになってしまった。いわゆる「カックンブレーキ」になりがちなのだ。「おいおい、やっぱり最後にイタリア車のツメの甘さが出たな」と最初は毒づいた。

しかし、何度かコーナーを抜けるうちに、このブレーキに込められた真の意図が読めてきた。クルマが「もっと繊細に私を扱え」と要求してきているのだ。足の裏の感覚を極限まで研ぎ澄まし、ペダルを「踏む」のではなく「薄く触れる」ようにコントロールする。そのコツさえ掴めば、極めて自然で滑らか、かつ絶対的な安心感をもたらす減速が可能になる。誰でも簡単に乗れる没個性なクルマではなく、ドライバーの技量を試し、共に成長することを求める。これこそがアルファ ロメオからの挑戦状である。

「プロポーションを見直すため、全長を10mm短縮し、トレッド幅を前後で計8mm拡大しました。これにより、踏ん張りの効いた見た目と走行安定性を両立しています」

たった8mmの拡大だと鼻で笑ってはいけない。元々備わっている前後重量配分53:47という奇跡的なバランスと、周波数感応型ショックアブソーバーの相乗効果が、このワインディングで爆発するのだ。ノーズは鋭くインを向き、リアは大地を掴んで離さない。SUVであることを完全に忘れさせるほど、その身のこなしは軽快で躍動的だ。

ドライブモードの「DNA」セレクターを「N(ノーマル)」や「A(エコ)」に入れても、その本質は決して揺るがない。可能な限り電気で走行し、トルクが細ったと感じた瞬間にアクセルを踏み直すと、即座にエンジンが目覚めて太いトルクでクルマを引っ張り上げる。エンジニアが「全く異なる味付け」と胸を張ったハイブリッド制御の妙が、もたつきの一切ないスポーティな走りを実現している。

情熱は決して死なない

夕暮れ時、海ほたるパーキングエリアに車を停め、夕日に照らされて緑色に輝くモンツァ・グリーンのボディを振り返る。

新型アルファ ロメオ トナーレは、単なるお化粧直しのフェイスリフトモデルではなかった。ドイツ車のような冷徹な論理的完成度や、日本車のような白物家電的便利さだけを追い求めたわけではない。最新の電動化技術や、かつては無縁だったはずの徹底的な品質管理を受け入れつつも、その奥底には「クルマは情熱で走るものだ」という猛烈な自己主張がマグマのように煮えたぎっている。

太いステアリングを力強くねじ伏せ、気難しいブレーキを優しく手懐け、美しいクローバーホイールの奥で赤く光るブレンボ製キャリパーに惚れ惚れする。このクルマのステアリングを握っている間、あなたは間違いなく特別な存在になれるのだ。

「アルファ ロメオに乗らずして真の車好きは語れない」。我々のその言葉は、退屈になりがちな電動化時代においても決して色褪せることはない。新型トナーレは、我々ペトロールヘッドの知的好奇心と情熱を強烈に突き刺す、愛すべきイタリアンSUVの傑作である。
写真:上野和秀

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