フォルクスワーゲンが電気自動車「ID.3」に、月額課金で最高出力を解放する有料オプションを導入し、世界中で賛否両論を巻き起こしている。なぜメーカーはこのような「サブスクリプション」を導入するのか?
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今月初め、フォルクスワーゲン(以下、VW)は、同社の電気自動車「ID.3」の最高出力を解放するための月額サブスクリプションを導入した。この「オプション・パワーアップグレード」は、出力を201hpから228hp(※1)に向上させるもので、英国のドライバーは月額16.50ポンド(3,285円)、または年額165ポンド(32,850円)を支払うことになる。この車は工場出荷時から228hpで登録されているため、オーナーがサブスクリプションに加入することを選択しても、保険会社に通知する必要はない。
この発表は、多くの自動車メディアから怒りをもって迎えられた。メディアはどうやら、「あるモノの一部を借りるよりも、モノ全体を実際に買って所有する方がどういうわけか優れている」という、時代遅れの誤解にとらわれているらしい。
実際には、VWの馬力サブスクリプションサービスは、頑なに変化に抵抗するこの業界において、歓迎すべき新風である。
結局のところ、VWは自社の顧客を熟知しているのだ。新車購入者の中には、ID.3をディーラーから乗り出した瞬間に、228頭もの荒れ狂い、唸りを上げる電気馬を操縦たくない人々がいることを、VWは知っている。彼らは段階的にそれに慣れていきたいのだ。まずは人懐っこい201馬力で、放牧場でしばらく過ごし、その後、火を噴くようなフルパワーへとステップアップしたいのである。
確かに、VWは例えば車内の物理的なスイッチでアクセスできる低出力の走行モードを提供するだけでもよい。しかし、おいおい、今は2025年だぞ! なぜそれをサブスクリプションにしない手があるだろうか? みんなサブスクが大好きなのだ! それはまるで「ハローフレッシュ」(※2)が、追加料金を払わない限りオーブンの温度が60度以上にならないようにする方法をどうにかして見つけ出した、というようなものだ。
VWは、月によっては「スローな月」があることを理解している。「うーん、そうだ。今月は自分の車が実際に出せるパワーより10%少ないパワーで走りたくなる、そんな月のひとつになりそうだ」と、例えば9月1日の朝に目覚めて思ったことがないと偽ってはいけない。VWは、それが現実の人間が抱く全くもって正常な人間の思考であることを理解しており、そんなあなたのためにこのサービスを用意したのだ。
実際のところ、これをあなたの車のフル性能を使うための16.50ポンドの「税金」と考えてはいけない。あなたのID.3の性能を人為的に制限することを選ぶ月ごとに、16.50ポンドを「節約」できるのだと考えよう!
VWが説明したように、彼らがここで行っているのは「選択肢の提供」である。これは素晴らしいことだ。なぜなら、新車を買うとき、色、ホイール、内装、オプション、そして「実際のパワーをすべて出すことを拒否しない車を買う」という選択肢以外には、ほとんど選択の余地がないからである。
選択肢は多ければ多いほど良い。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の3枚組ボックスセットを丸ごと買いたい人もいれば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』だけが欲しい人もいる。3枚組ボックスセットを買った上で、さらなる現金を渡すまで『PART3』しか受け取れないようにしたい人もいる。悪い決断をすることを楽しむ消費者がおり、VWは彼らを助けるためにここにいるのだ。
その馬力サブスクリプションをもって、VWは我々の消費社会について、大きく、そして極めて重要な問いを投げかけている。「今朝の通勤に、あなたの車が生産された本来のパワーすべてにアクセスする必要が本当にあるのか?」といった問いだ。そもそも運転する必要があるのか? バスに乗ったらどうか? むしろ、いっそベッドにいたままでいてはどうか?
そして、「もし車のパワーを制限したいのなら、そのためにアクセルペダルがあるのではないか? もしもっと遅いID.3が欲しかったなら、大金を節約して代わりにベースの168hpバージョンを買えばよかったのではないか? ID.3を完全に見限って、代わりにもっと楽しくて、しかもすでに利用可能な全パワーを出すことを拒否したりしないヒョンデのアイオニック5を手に入れたらどうなのか?」といった問いもだ。これらこそ、VWの見事な策略が我々に突きつける課題なのである。
※1 hp(horsepower): 英馬力。日本のカタログスペックで使われる「PS(仏馬力)」とほぼ同じ数値を示すため、本記事では「馬力」と表記している。
※2 ハローフレッシュ (HelloFresh): ドイツ発祥の世界的なミールキット宅配サービス。毎週レシピと食材がセットで届くサブスクリプションモデルの代表例として、本文中で皮肉の引き合いに出されている。
アルファ ロメオ 33 ストラダーレ/ランド ノリス✕R32 東京ナイトドライブ/R35日本取材:トップギア・ジャパン 068
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「馬鹿げてるように聞こえるかもしれんが、まあ怒るなよ。元から228馬力出せる車なのに、サブスク払わないと201馬力しか出ないってことに皆キレてるわけだろ。でもな…BMWだって、245馬力版とほぼ同じ2.0Lエンジンを積んだ181馬力の車を、より安い価格で売ってきたじゃないか。あのエンジンはコンピュータ制御でパワーを落としてるだけだ。購入後にパワーアップ版を選べないって点を除けば、大して変わらんよ。まあ、アフターパーツでやれば保証は切れるけどな。
スピードが欲しいと思って買ったけど、結局全開で走るのは年に数回だけだった、なんてケースは山ほどある。だったら、数ヶ月楽しんだ後に解約すりゃいいだけだ。悪魔的な商法に聞こえるけど、よく考えればそこまで馬鹿げた話でもない」
↑「それは非常にフェアな指摘だね。昔乗ってたアウディA6のECU書き換え(リマップ)を検討したとき、誰かがもっとパワフルなバージョンと部品を一つ一つ比較してたけど、全く同じだったのを思い出したよ。
今回の件で本当に違うのは、多分この2点だけかな:
車両が最初から高出力で登録されてるから、保険料も(おそらく)高くなる」
「人工的にデチューンされた内燃エンジンは、(理論上は)燃費が良くなるはず。俺はエンジニアじゃないから、これが電気モーターにどう当てはまるかは分からんけど」
「なんだこの記事は? 皮肉か? 意見か? それともただ議論を煽るためだけの奇妙な試みか?」
↑「皮肉だよ。そして、そういう知的レベルの高い記事は一部の読者には全く通じないもんだ」
「ああ、輝かしい未来が待ってるな。
前の車の排ガスを吸わずにフィルターを通った綺麗な空気が欲しい? →月額5,599円です。
パワーステアリングが欲しい? →月額3,599円です。
電動トランク? →月額599円です。
もし自分の車に毎月金を払いたいなら、最初からレンタルするよ…今までどうもありがとうな」
「工場出荷時から228馬力で登録されてるって事実が、これが最初から計画的だったことを示唆してるよな。ゲームで言う「発売日DLC」みたいなもん。どうせ完成品から意図的に切り出して、後から売りつけてるだけだってすぐ分かるやつ」
「素晴らしいアイデアだと思うし、需要に基づいた自動車利用への第一歩なのは明らかだ。想像してみてくれ。俺の利用のほとんどが大渋滞の都市部で、30馬力か40馬力しか使わないとする。渋滞と時間の長さにイライラするけど、請求されるのはその分だけ。それだけで俺の一日は少し明るくなる。
一方で、お気に入りのワインディングロードを気持ちよく駆け抜け、パワーを楽しみ、太陽の光を浴びている。俺はハッピーだ。だから、使ったパワーに対して喜んで金を払う。
これはまさに神の一手だ。よくやったVW。次のフェーズも期待してるぜ」