テスラ モデル Yに試乗。世界で最も売れているクルマが、この2代目で本格的なアップデートを果たした。しかし、それはチャートのトップを維持するのに十分なのだろうか?
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いいね!乗り心地、ステアリング、快適性、効率性のすべてが向上
イマイチ以前より妙に一般的で、インテリアのハイテクはまだ時々、中身よりスタイル重視に感じられる
テスラ モデル Yに試乗する機会を得た。日本ではRWD(5,587,000円)とロングレンジAWD(6,476,000円)の2グレード構成で、今回はRWDに乗った。今年の補助金は、これまでの車両性能に加え、原材料の調達元や重要鉱物、グリーン鉄などの調達要件が加わっている。サイバーセキュリティの観点もクリアしている。その結果、輸入車ブランドとしては最高額、ほぼ満額と言える補助金設定になっている。東京都に在住の場合、167万円、最大で187万円の補助を受けられる計算になり、モデル3 RWDであれば実質購入価格が300万円台後半になるレベルだ。
モデルYの納車台数は2023年、2024年ともに年間100万台に達している。2023年は公式に統計データが取れ、ガソリン車やハイブリッド車も含めた全車種の中で世界ナンバーワンの販売台数を記録した。2024年もデータはまだ出ていないが、おそらく世界で一番売れている自動車と言えるのがモデルYであるということで、このモデルYが新たにフルモデルチェンジしている。
モデルYではヒートポンプを採用しており、エアコンや暖房のエネルギー効率を高めている。テスラはこれを初めて採用した。ヒートポンプの裏側にはオクトバルブという機能があり、「タコ」のようなイメージで8本の空調パイプを繋いでいる。これにより、バッテリーを温めたり、車内を温めたりといったエネルギーマネジメントを効率的に行っている。これはモデルYから導入されている。
中央のアルミダイカストは話題になったが、当初は賛否両論あった。しかし、今では他メーカーもこの技術を採用する方向性で進んでいる。今回のモデルYでは、オレンジ色で示されたリアセクションがワンピース構造になっており、安全性の向上やボディの軽量化に繋がっている。
セーフティテストでは、アメリカ、欧州、中国、オーストラリアの第三者評価機関全てで5つ星を獲得している。アクティブセーフティに関しては、テスラは超音波センサーやミリ波レーダーを搭載せず、カメラのみで周辺状況を把握し、それに応じて動作する。このテストでも、他のメーカーを上回る905点といった高得点を獲得している。
新型モデルYのエクステリアは、フロントとリアのデザインが変更されていて、サイバートラックのデザインコンセプトを引き継ぐような形だ。フロントとリアは今後どちらも一文字のようなデザインになっていくのがテスラのデザインコンセプトの一つだ。リアのテールランプはかなり特徴的だ。光源が上側についており、それをリアパネルに当てて光らせるデザインだ。日陰や夜間に見るとよく分かるとのことだ。後続車からの認識がしやすくなり、バック時の安全性向上に繋がる可能性がある。
運転体験が著しく改善されたということだったが、どうだろう。車重重は約2トンと重いが、EVとしてはあまり重く感じない。最初の印象は、静かさ、しなやかさ、洗練さであり、これらは第一世代にはなかったものだ。車はより高価な感覚を与えてくれる。改善箇所は、多岐にわたる。中心部分の新製造技術(コンポーネント削減と剛性向上)、サスペンションがその役割を果たすためのキネマティクス変更、よりソフトなアンチロールバー、専用コンパウンドのタイヤ、全周のアコースティックガラス、より良い層のホイールアーチ防音材など、これらの要素が組み合わされている。その結果、乗り心地が向上し、バンプや穴をより良く処理できるようになった。新しくクロスフローホイールが19インチの標準設定になっている。アルミとハードプラの組み合わせでデザインされている。前後セクションやスポイラーなどが変わり、風力バランスも27%改善されている。これにより、軽快に走れる車になっている。
ステアリングはわずかに遅くなり、最初のターンインから車がより落ち着いた感じになった。カーブでダイブしなくなり、より成熟した印象を与える。グリップ力は十分にあり、信頼性や再現性があり、予測可能だ。これはファミリーカーに最適な特性だと評されている。ブレーキについては、もう少しフィールとバイト感があると良い。運転は「ナイス」だが、興奮して乗り回すものではないタイプだ。
RWDでは0-100km/h加速は5.9秒、AWD モデルでは4.8秒となる。EV特有の「ギア内」プッシュ感があり、当然ながらギアは一速だけだ。このRWDであっても、典型的な追い越し速度は非常に健全だ。トルクはRWDが450Nm、出力は347ps、ロングレンジAWDが240/350Nm、215/299psで、ファミリーSUVとしては遅くない。最高速はどちらも201km/hで変わらない。しかし、おそらく最も望ましいのは、よりアグレッシブでないRWDではないだろうか。SUVでありながら、CD値は今までのモデルの0.23から0.22まで低下している。これにより、少ないエネルギーで遠くまで走れるデザインになっている。航続距離はRWDが547km、ロングレンジAWDが635kmと88kmの差があるが、ここは充実したスーパーチャージャーを所有するテスラなので、他社のEVとは違ったマイレージ感を持てるだろう。これは主にファミリーカーであり、よりリラックスした運転特性と追加の航続距離、コストパフォーマンスの要素が重要視される。
モデルYがハッスルできないわけではありないが、それは車のミッションの中心ではない。プッシュすると、プログレッシブかつ寛大なグリップ力が感じられる。何か手に負えなくなるずっと前に、トラクションコントロールシステムが介入する。高速では非常に安定しており、非常に静かだ。これはEV界隈の中でもさらに特筆すべき点だ。
総評として、運転フィールは旧モデルから夜と昼ほど良い、全く別の車に感じられるほどだ。全体的な剛性、ダンパー、スプリング、遮音性、ノイズ低減に注力した結果、より静かで、より寛容になった。最も精密な運転フィールというわけではないが、より豪華で高価なクルマに感じられる。ステアリングはレーザー精密ではないが、プログレッシブで穏やかで、車全体にサプライズがない点が評価されている。車両の効率性がさらに向上している。
内装は非常にテスラらしいミニマリズムが特徴だ。コンセプトカーのような雰囲気だ。ダッシュボードには目立った装飾は少ないが、新しいダッシュパッドやテクスチャが用いられ、以前より少し豪華な感じになっている。中央には約15インチのタッチスクリーンがあり、ほとんどの機能をここで制御する。
ウィンカーレバーは単機能で残存していて、安心した。モデル3/S/Xとは異なり、モデルYはファミリーカーとしての操作の慣れやすさを考慮した可能性がある。新しいアンビエントライトストリップが追加されている。フロントシートは快適で電動、標準でヒーターとクーラーがついている。リアシートにはヒーターがつき、座面が少し長くなった。ガラスルーフはUVカットが強化されている。非常に高速なワイヤレス充電器が2つあり、センターコンソールやサイドポケットに大量の収納スペースがある。
タッチスクリーンはボタンほど直感的ではないものの、音声操作はうまく機能し、使い慣れることで操作インターフェースに慣れることができる。内装はなにもない「空白」や「間」を感じる体験であり、恋に落ちるというよりは「遠くから評価する」ような感覚だ。中央のタッチスクリーンの機能として、新型モデルYからエアコンの自動ルーバー機能(プロペラに矢印のような表示)や、助手席に人が乗っていない時に自動で送風を止める機能など、快適性に関する機能が追加されている。
実用性はモデルYの大きな強みであり、新型でもそれは変わらない。5人分の適度なスペースがある。リアシートは電動でリクライニング(深くはない)し、電動操作によりトランクからのオートフォールディングが可能だ。トランクスペースは巨大で、複数のレベルがある。床下収納を含めると854リットル、シートを倒すと2,138リットルになる。フランスではリアシート無しの商用車としても購入可能だという。フランク(フロントトランク)は117リットルあり、スーツケースサイズだ。排水プラグ付きで、汚れ物を洗うのに便利。こういうところもファミリーカー仕様だ。
なにかと世間を賑わすことが多いテスラ。車が最も収益の源であり中心だが、他にも事業がある。フルセルフドライビング (FSD)はアメリカで一般向けに解放され始めている。ロボタクシー事業は今年中旬頃からスタートするとイーロン マスク氏が公言している。AIコンピューティングとOptimus人型ロボットも事業として展開している。これらは最終的に同じ「頭脳」を持って動く形を目指している。また、テスラ保険は北米の一部で解禁されている。これまでの自動車保険と異なり、車の利用状況や運転データ(急ブレーキ、急加速、急ハンドル、オートパイロット使用時のよそ見など)に基づいて毎月保険料が変わる、ダイナミックな保険料算出が特徴だ。
スーパーチャージャーは昨年V4と呼ばれる新しいチャージャーが登場し、日本国内でも増やしていく予定だ。エネルギー貯蔵(家庭用蓄電池、産業用充電など)ビジネスも拡大し、電気を作るソーラーパネル事業も行っている。
2025年Q1(1月-3月)の納車台数は33万6千台だった。報道では停滞や減速が取り沙汰されていたが、この時期はモデルのライン切り替えなどでグローバルに多くの工場が停止していたことが影響している。エネルギービジネスがかなりの勢いで増えている。Q1の導入量は10.4GWで、これは車のバッテリー容量に例えると約20万台分に相当する。電力事業者や家庭用蓄電池として導入されている。
現在、日本国内では19箇所で試乗が可能だ。直近では、テスラ渋谷やテスラ梅田といった駅に近い好立地にポップアップストアをオープンし、より多くの人がテスラに触れる機会を増やしている。スーパーチャージャーは、国内で129箇所149基を自社で運営。モデルYの車両は1回の充電で400kmから500km程度走行可能だ。スーパーチャージャー網により、東京から京都や大阪まで行くことも可能で、航続距離はほぼ無限と言える状況になっている(北海道上部などまだ足りない部分もある)。
テスラの設計は人間的な動きに合っていて合理的であり、モデルYではさらに向上している。アメリカのフリーモント工場では、完成した車が無人で納車セクションまで自動で移動しており、これも大きな改善である。新型モデルYに乗っていると、そういった話しも当然のように思えてくるのだ。
写真:上野和秀
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