【試乗】テスラ モデルY L:「車輪のついたGrok」になる日も近い?「静寂と極上の乗り心地」を生む電子制御サスペンションの魔法

テスラはもはや自動車メーカーではなく「世界最大のAI企業」だ。本国テキサスで無人タクシーを走らせる頭脳を共有し、将来のAI搭載を待つ新型「モデルY
L」に試乗。劇的に進化した乗り心地と、大人が座れる3列シートの実力を解き明かす。


自動車業界の人間は、どうにも古い概念に縛られがちだ。我々のような英国のクルマ好きは、オイルの匂いがしない車や、スパナで修理できない車に対して、無意識のうちに猜疑心を抱いてしまう。「電気自動車?
ああ、要するに巨大なラジコンカーのことだろ?」と。しかし、今回のテスラからの招待状を受け取り、私は自らの認識を改めざるを得なかった。彼らはもはや、単なる電気自動車メーカーではない。イーロン・マスク率いるテスラは、地球上で最も進んだ「リアルワールドAI&ロボティクス企業」へと完全に変貌を遂げていたのだ。

今回の試乗の舞台は、東京・有明。我々を出迎えたのは、ホイールベースを延長し、待望の本格的な3列シートを備えた新型「テスラ モデルY
L」だ。しかし、クルマに乗り込む前に、テスラの担当者から非常に興味深いプレゼンテーションを受けることになった。

「2026年度第1四半期、テスラは世界で約40万台の車両を生産しました。家庭用・産業用蓄電池などのエネルギー部門も8.8GWhと絶好調です。しかし、我々の真の強みは製造の自動化とAIにあります。ベルリン工場では、タイヤが装着された時点から車両が自律的にラインを進み、完成後は自動で工場外のスーパーチャージャーやトラックヤードへ向かい、空きスペースを見つけて自ら駐車するのです」

ルーカス製の電装品のご機嫌を伺いながら、雨漏りする旧車のエンジンを必死にクランクさせている英国の愛好家が聞いたら、黒魔術か何かだと思うに違いない。だが、これは現実だ。

さらに担当者は、テスラの頭脳であるAIの進化について熱弁を振るった。 「我々のFSD(Full
Self-Driving)は、間もなく累計走行距離100億マイル(約160億キロ)に達します。テキサス州ダラスやヒューストンではロボタクシーのサービスが拡大しており、直近3ヶ月で日本のタクシー利用に換算して約70万回分に相当する距離を無人で走行しています。テキサス工場付近には巨大なAIデータセンター『Cortex 1, 2』を拡張中で、人型ロボット『Optimus(オプティマス)』の工場も建設予定です」

実際、テスラ社内では、イーロン・マスクの立ち上げたAI企業「xAI」の大規模言語モデル「Grok(グロック)」が業務の根幹に組み込まれている。社員たちはコーディングから業務評価に至るまでGrokをベースとしたAIを活用し、数百名規模の従業員が「AIチューター」としてAIの知能向上に努めているという。

担当者は、「本国テキサスでは、すでにAIが車両に組み込まれている」と語った。そう、アメリカ本国では、この「Grok」がテスラ車の車内に統合され始めているのだ。ステアリングのボタンを押すだけで、単なる音声コマンドとは次元の違う、自然言語による優秀なAIアシスタントとの対話が可能になりつつある。

日本の公道を走るこの日本仕様のモデルY
Lで、今すぐ「車輪のついたGrok」と流暢な日本語で世間話ができるわけではない。だが、重要なのはここだ。我々がこれからステアリングを握るモデルY
Lは、テキサスで無人の乗客を運んでいるロボタクシーと同じ「AIを処理するための極めて強力なハードウェア」をすでに搭載している。いずれOTA(Over-The-Air)アップデートの通知が届いたその日から、この車は魔法のように最新のAIデバイスへと進化するポテンシャルを秘めているのだ。

そんな壮大な未来のビジョンに圧倒された後、我々は実際に東京の複雑なストリートへと、この宇宙船を漕ぎ出すことになった。

ドアを開けると、そこにはテスラらしい極限のミニマリズムが広がっていた。コンセプトカーのようなすっきりとしたダッシュボードには新しい質感が加えられ、従来よりも明らかに上質だ。フロントのエンブレムは廃止され、カメラがバンパー中央に移動。ウォッシャージェットまで備わっている。

今回のモデルY
Lにおける最大のトピックは、なんといってもその「広さ」だ。上位モデルであるモデルXよりもホイールベースを長く設計し、3列シートを確保している。一般的なSUVの3列目は「子供の罰ゲーム用」であることが多いが、このモデルY
Lの3列目は、大人がしっかりと座れる本物の空間だ。

さらに、収納力も狂気じみている。トランクは床下を含めて854リットル、シートをすべて畳めば2,138リットルという洞窟のような空間が出現する。おまけにフロントの「フランク」にも117リットルの容量があり、濡れたウェーダーや泥だらけの長靴を放り込めるよう水抜き用のプラグまで完備されているのだ。フライフィッシングを愛するジェントルマンにはたまらない仕様である。

有明の太い幹線道路に合流すべくアクセルを踏み込んだ瞬間、私はさらに驚愕した。UK本国のトップギアの同僚たちが、新型モデルYのレビューで「走行体験が計り知れないほど改善された」と絶賛していたのは知っていたが、彼らの評価は決して大袈裟ではなかった。

かつてのモデルYにあった足回りの硬さや、路面の不整を拾う騒々しさは完全に消え去っている。全方位に採用されたアコースティックガラス(遮音ガラス)とホイールアーチの遮音材強化により、車内は不気味なほど静かだ。リアフロアをダイカスト化(メガキャスト)し、従来70個あった部品をたった1個にまとめたことで、車体剛性が飛躍的に向上している恩恵だろう。

ステアリングのギア比がわずかにスローに設定されたことで、切り始めの過敏さが消え、大柄な車体を落ち着いてコントロールできる。「大人の成熟した走り」とはまさにこのことだ。フロントシートは全車電動・加熱式が標準で、前列および2列目にはベンチレーション機能とシートヒーターが完備されている。19個のスピーカーから流れるプレミアムオーディオの音質も素晴らしい。

さらに特筆すべきは、新採用の「電子制御サスペンション」だ。15インチのセンタータッチスクリーンにある「ダイナミクス」の設定画面から、サスペンションの挙動を調整できる。特に「後席の乗り心地」を重視したセッティングにすると、マンホールの段差や舗装の継ぎ目を見事にいなし、魔法の絨毯に乗っているかのような快適さが得られるのだ。長くなったホイールベースとの相乗効果で、3列目を含めた後部座席に乗っていても、突き上げや窮屈さは全く感じない。

加速性能も申し分ない。0-100km/h加速は5.0秒。スポーツカー顔負けのスペックだが、パワーの出方は極めてジェントルだ。そして何より素晴らしいのが、回生ブレーキのセッティングである。初期のEVにありがちな唐突な減速ではなく、キツめでありながらも非常に自然に減速してくれるため、ワンペダルドライブが信じられないほど楽なのだ。ストップ&ゴーが連続する東京の狂ったような交通環境において、ブレーキペダルを踏みかえる操作回数が劇的に減ることは、ドライバーの疲労を文字通り半減させてくれる。

後席の乗員(子供たちや、文句の多い義理の親)のことも忘れてはいない。2列目以降には8インチのリアタッチスクリーンが装備され、エアコンの独立操作や、ゲーム、動画視聴まで楽しむことができる。

最後に、現実的な価格について触れておこう。「モデル Y L Premium
AWD」の車両本体価格は7,490,000円だ。しかし、日本では今年度も127万円という破格のCEV補助金が適用される。さらに驚くべきことに、6月末までに納車される車両限定で「3年間のスーパーチャージャー無料利用」が付帯するという。つまり、向こう3年間は「燃料代がタダ」なのだ。英国の狂ったガソリン価格に苦しんでいる我々からすれば、詐欺を疑うレベルの好条件である。

テスラ モデルY
Lは、単なる「よくできたファミリーSUV」の枠を完全に超えている。圧倒的な居住性、劇的に進化した乗り心地、そしてやがて本国から降ってくるであろう最新のAI頭脳を受け入れるための器。これは、ソフトウェアアップデートのたびに新しい機能が追加され、家族とともに成長していく「走るスーパーコンピュータ」だ。

もしあなたが、家族全員が快適に過ごせる広さを求め、なおかつ最先端のテクノロジーの恩恵に預かりたいと願う本物志向の持ち主なら、今すぐ最寄りのテスラストアへ向かうことを強くお勧めする。未来はもう、あなたの家族を乗せる準備ができているのだから。
写真:上野和秀

トップギア・ジャパン 072:トヨタが放つV8スーパーカーの衝撃と、2026年を支配する18台

テスラが気になった方へ
中古車相場をチェックする在庫車多数ガリバー

今の愛車の買取価格を調べる カーセンサーで最大30社から一括査定

新車にリースで乗る 【KINTO】

トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2026/04/88892/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

トップギア・ジャパン 072

アーカイブ