フォルクスワーゲンのコンパクトSUV、T-Crossがマイナーチェンジを行い、試乗を行った。コンパクトSUVで人気を誇るT-Cross。新型になっても、その魅力は輝きを増しているのだろうか。
フォルクスワーゲンのコンパクトSUV、T-Crossがマイナーチェンジを行い、試乗を行った。T-Crossには、329.9万円のActive、359.9万円のStyle、389.5万円のR-Lineの3タイプがあるが、今回試乗したのは、R-Lineで最上位グレードとなり、R-Line専用エクステリア、R-Line専用ファブリックシート、ステンレスペダルクラスター、215/45 R18タイヤ/7Jx18アルミホイール などを標準装備。オプションで、プレミアムサウンドシステム"beats サウンドシステム"を選択可能という全部入りなT-Crossだ。スポーティかつ快適性能なR-Lineだが、じつは旧モデルと比べると、断然お得なのである。Activeが+17,000円、Styleが+21,000円に比べ、このR-Lineは-103,000円で、先進装備付き。まあ、他の他2モデルだって、この物価高の中で、わずかな値上げにとどまっているところは、さすがフォルクスワーゲンだと言えよう。
一路、千葉県のかずさ周辺を目指す。なんだか、雲行きが怪しい。目的地に着いた途端に、雨がひどくなってしまった…けれど、自分の運の悪さを嘆いていても仕方がない、と気を取り直す。T-Crossは、ベースとなっているPoloよりも全長がわずかに長く、全高も高いため、車内空間が広くなっている。特に後部座席の居住性は高く、スライド機能付きの後部座席を調整することで、さらに広々とした空間を確保できる。T-Crossは、Poloと同じMQBプラットフォームを採用し、エンジンなども共通しているが、単なるPoloのSUV風バージョンではなく、独自のスタイリングと機能性を備えている。高速道路を走ったが、サスペンションのセッティングが適切で、シートも柔らかく、長距離走行でも快適である。重量は1,260kgと軽量であるため、ブレーキ性能も良好で、ハンドリングも軽快だ。
パワートレインは、1.0リッターTSIエンジンと7速DSGトランスミッションの組み合わせは従来型から変更なし。最高出力は116馬力だが、コンパクトなボディと軽快なエンジン特性により、街乗りから高速道路まで、あらゆるシーンで快適な走りが楽しめる。また、静粛性、振動対策も徹底的に行われている。最大トルクは200Nmだが、低回転域ではややトルク不足を感じ、高回転域では騒音が大きくなる傾向があった。燃費はWLTCで17.0km/Lと満足のいく数値だが、7速DSGは、燃費向上を重視したセッティングのため、シフトアップが早すぎる傾向があり、力強い加速を求めた際にタイムラグが生じることがあった。
全体的にやや硬めの乗り心地ではあるものの、不快なレベルではない。16インチのActiveや17インチのStyleの小径ホイールを装着すれば、乗り心地はさらに向上する可能性がある。車重が1,260kgと比較的軽量であることが、優れた乗り心地に貢献しているのだろう。背の高い車体のため、コーナリング時に多少のロールが発生するものの、ハンドリングは安定しており、問題なく曲がることができる。ステアリングはクイックな反応ではなく、コーナリングなどでスポーティさや高揚感を求めるドライバーには物足りないと感じられるかもしれない。適度に硬めのサスペンションと柔らかいシートにより、長距離走行でも快適さは保たれたままだと思われる。一方で、大型のドアミラー周りからの風切り音など、ロードノイズや風切り音がやや気になる。高速道路での安定性を高めるためには、ステアリングの直進安定性を向上させたほうが良いと感じた。だが、ステアリングは正確で、意図した方向へ車を向けることができる。フィードバック: 路面からのフィードバックはあまり感じられない、やや軽めの操舵感だ。
エクステリアは、基本的なデザインは踏襲しつつ、よりシャープな印象に進化した。フルLEDヘッドライト、水平基調のフロントグリルを採用し、シャープさを強調している。リアには、ブラックに光るX字のLEDテールランプを採用。デザイン性と安全性を両立させている。リアのウインカーには、内側から外側に流れるように点滅するダイナミックターンインジケーターを採用。新色として、クリアブルーメタリック、グレープイエロー、このキングズレッドメタリックの3色が追加され、全8色のボディカラーバリエーションとなった。
インテリアの質感は、今回のマイナーチェンジでVWが改善した主なポイントのひとつだ。よりソフトな表面素材と目立つインフォテイメントシステムを備えたダッシュボードが再設計され、StyleまたはR-Lineを選ぶと、ドアにはよりソフトタッチの素材が採用される。デジタルメータークラスター(8インチ)を標準装備。オプションで10.25インチに大型化できる。インフォテイメントシステムは、タブレット型の独立したディスプレイを採用。9.2インチのタッチスクリーンで操作する。StyleとR-Lineには、シートヒーター、スマートフォンワイヤレスチャージングを標準装備。標準装備のレザーステアリングホイールは、物理ボタンが適切に配置され、デジタルインスツルメントクラスターは明瞭で見やすい。
T-Crossのホイールベースはポロと同じだが、ボディはあらゆる面で大きくなっており、それに伴って乗員スペースとラゲッジスペースが拡大している。リアシートは問題ない。身長180cmまでの大人が自分の後ろに座っても、膝と頭のスペースが十分にあるので不満はないだろう。ただし、真ん中の席に誰かを座らせれば、不満が出るだろうけどね。決して広い車ではないから。
収納に関しては、リアシートを設置した状態で455リットル、フラットに畳んだ状態で1,281リットルのトランクスペースがある。ポロより10%ほど多い。便利なことに、T-Crossのリアベンチシートは140mm前方にスライドすることができ、トランクルームは455リットルまで拡大できる。
日本ではCセグメント(ゴルフなど)が最も大きな割合を占め、次にBセグメント(T-Crossなど)が続く。SUV市場は拡大傾向にあり、セダンやハッチバック市場は縮小している。コンパクトSUV市場は競争が激しく、国産メーカーの新型車投入も盛んだ。T-Crossのライバルとして、レクサス LBXやトヨタ ヤリス クロスが挙げられるだろう。日本でT-Crossは2020年の導入以来、好調な販売を記録している。コンパクトSUV市場において、輸入車SUVで約25%のシェアを獲得した。2021年と2022年には、輸入車SUVの登録台数でナンバーワンを達成した。2023年はT-Crossの販売台数が2位となったものの、依然として人気車種であることに変わりはない。T-Crossの購入者の約50%は女性であり、30代前半のドライバーに多く選ばれているというから、女性や若年層の心を捉えている存在だ。日本市場ではCセグメントに次いでBセグメントの需要が高い。T-Crossは、日本の道路事情に適したコンパクトなサイズでありながら、クラストップレベルの広い室内空間とラゲッジスペースを備えている点が、日本のユーザーに受け入れられたと考えられる。また、T-CrossがSUVらしい力強いデザインと、街に溶け込む洗練されたデザインを両立させている点、そして多彩なボディカラーが選択できる点が顧客に評価されている。これにより、幅広い顧客層にアピールできた。新型では安全装備が強化され、「Travel Assist」などの先進運転支援システムが標準装備。デジタルメータークラスターやスマートフォンワイヤレスチャージングなどの快適装備も充実しており、これらの点が顧客の購買意欲を高めそうだ。取材を終えた帰り道は、雨が上がり、すっきり。天気同様にクリアになった頭で帰路整理したが、新型T-Cross、日本では、必要なものがすべて揃っているところが人気の秘密だと感じた。
■ フォルクスワーゲン T-Cross R-Line
●全長×全幅×全高:4135×1785×1580mm
●ホイールベース:2550mm
●車両重量:1260kg
●エンジン:DUS/直列3気筒DOHCインタークーラー付ターボ(4バルブ)
●総排気量:999cc
●最高出力:85kW(116ps)/5500rpm
●最大トルク:200Nm(81.6kgm)/2000-3500rpm
●トランスミッション:7速DSG
●駆動方式:FWD
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・40L
●WLTPモード燃費:17.0km/L
●0→100km/h加速:-秒
●最高速度:-km/h
●タイヤサイズ:215/45ZR18
●車両価格(税込):3,895,000円
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