日本の脱炭素の競争力をアップ CO2リサイクル技術推進を提言

世界中で脱炭素の動きが加速しており、日本も競争力が必要とされている。もちろん、日本の自動車業界にも深く関わってくる問題である。2016 年のパリ協定発効を契機に世界各国で地球温暖化対策のための行動が加速しているなか、日本の菅義偉総理は所信表明演説において 2050 年カーボンニュートラル実現を目指す方針を宣言した。世界では、米欧中を中心にグリーンイノベーションへの大型投資や予算税制が導入され、SDGs 投融資も加わり、環境と成長の好循環に向けた研究開発や製品規格化へのパラダイムシフトが着実に進んでいる。 日本の経済社会の競争力ある繁栄基盤と安全な国土を将来世代に継承するためカーボンニュートラル推進に不可欠なカーボンリサイクル技術の革新的技術の確立と需要創出の双方における研究と政策推進を行うため、2021 年 3 月に「自民党カーボンリサイクル技術の国内確立及び需要拡大のための議員連盟」(略称:カーボンリサイクル技術推進議連、会長:佐藤ゆかり)が発足した。

6月4 日(金)に、議員連盟の政策提言を河野太郎 行政改革担当大臣及び渡辺猛之 国土交通副大臣へ提出した。

本議連は、カーボンリサイクル技術の開発推進の重要性に着目し、先端技術研究開発や実証研究を行う各産業界・ベンチャー企業などから精力的にヒアリングを実施。海外からの輸入に依存することなく水素の安定供給を確保するためには、国内技術開発におけるベンチャー企業への資金調達支援や、CO2 との合成原料となるグリーン水素等の製造拡大も不可欠な課題となっている。この度カーボンリサイクルの原料としての水素の取り扱いについて、規制緩和や国内法体系の一元化を提言するとともに、先進的なカーボンリサイクル技術である DAC、e-fuel、フードテックなどの CO2 の分離回収・再利用技術についても推進を提言した。

■提言サマリー
1.「グリーンイノベーション投資ファンド」の創設
官民による 2 兆円のファンド創設で、グリーン分野のビジネスを加速
2.「カーボンリサイクル技術ベンチャー等支援制度」の創設
日本のベンチャーからユニコーン企業が生まれる土壌を育てる
3.CO2 の大気中直接回収技術「DAC」の国内実用化推進
大気中の CO2 を直接回収し、燃料や食材、マテリアルに活用する国内技術の加速
4.自動車産業で注目の e-fuel(液体合成燃料)の国内実用化支援
自動車産業 550 万人の雇用維持、エンジン車を活用してもグリーンな燃料を実用化
5.脱炭素マテリアル開発とフードテックの審査基準簡素化の推進
CO2 吸収セメントや人工樹脂、プラスチック、人工肉や人工ミルクまで…畜産分野もグリーンに
6.グリーン水素製造促進を円滑にする「水素総合法」の制定
水素の国内製造を促進し、水素独自の取り扱いを容易化する法の一元化
7.2025 年大阪・関西万博におけるグリーンイノベーションの展開
万博ドローンタクシーや OC2 由来人工肉、人工光合成による野菜生産などの万博フードの実装

■提言詳細
1.「グリーンイノベーション投資ファンド」の創設
カーボンニュートラルの実現に向けて NEDOに創設された 2 兆円のグリーンイノベーション基金は、上流の技術開発から社会実装までを支援する一方、新規需要創出や商用化というビジネス先行投資に対する支援体制はない。
そこで、官民による「グリーンイノベーション投資ファンド」を創設し、革新的燃料・エネルギーも含めた各産業分野のカーボンリサイクル製品に対して切れ目なく支援する目的の 2 兆円官民ファンドを創設すること。

2.「カーボンリサイクル技術ベンチャー等支援制度」の創設
研究開発に関する委託事業・補助金・基金等は大手企業や中小企業でも繰り返し選考されるリピーターが多く、 欧米と異なり、新規ベンチャー企業に適用される事例が少ない。研究の失敗を嫌忌する体制では、画期的で新たな社会を創る独創的な技術開発は生まれず、ユニコーン企業が生まれる土壌は育たない。カーボンリサイクル技術開発、商用化等を目指すベンチャー企業や研究機関の資金支援を 10 年継続して行う、「カーボンリサイクル技術ベンチャー等支援制度」の創設をすること。

3.CO2 の大気中直接回収技術「DAC」の国内実用化推進
DAC(大気中の CO2 を直接回収)技術がカーボンニュートラル実現に向けた主要なリサイクル技術であり、CO2のネットゼロまたは、ネガティブエミッション実現のためにも重要な柱。すでにアメリカ、スイス、カナダ、アイスランド等では、回収 CO2 を原料に、炭酸飲料水やドライアイス等の製造方法を開発され、商用化も近づいている。
国内においては、CO2 をアミンや無機材料を活用して低温・常温でエネルギー効率よく分離回収する DAC 技術が開発先行しているものの、回収効率の向上によるコスト低廉化や量産化技術の実用化が課題でもある。国は、DAC の開発推進の積極支援を行うこと。

4.自動車産業で注目の e-fuel(液体合成燃料)の国内実用化支援
CO2 と水素による合成燃料である e-fuel は、乗用車に限らず、バス・トラック・鉄道・飛行機などにも利用でき、 大口需要が期待できるカーボンリサイクル合成燃料である。特に自動車においては、既成のサプライチェーンが活用可能で、550 万人に及ぶ自動車産業全体の雇用維持や設備活用による高い経済効率性が期待できる。同時に、e-fuelは海水から CO2 と太陽光を用いた生成も可能で、国のエネルギー安全保障上、危機対応時の有望な燃料源にもなり得る。国内製造の低廉化や量産化技術の実用化に向けて積極的支援を行うこと。

5.脱炭素マテリアル開発とフードテックの審査基準簡素化の推進
DAC 技術等により回収 CO2 を活用したマテリアルの開発は多様な分野にイノベーションと新たな社会様式の可能性を呈示する。これは回収 CO2 活用による脱炭素セメントの製造から CO2 を人工光合成による人工樹脂・プラスチックの製造、CO2 と水素菌の合成により、人工肉やミルクなどのたんぱく質の製造のフードテックに至るまで技術は進んでいる。しかし、新食品の開発に対し、食品衛生法上の審査基準の設置等、4~5 年かかり得る規制リスクがあり、すでに CO2 由来の食品開発を行う日本のベンチャー技術も、商用化を海外市場で行うなどの技術流出を招いている。
CO2 由来の各産業分野の開発支援、国内競争力強化の推進のため、積極的な国内実用化・商用化支援を行うとともに、食品分野では規制の簡素化・緩和を含めた見直しを行い、国内産業育成をすること。

6.グリーン水素製造促進を円滑にする「水素総合法」の制定
カーボンリサイクル技術の実用化においても、CO2 と水素の合成が重要な要素技術となる中、安価なグリーン水素の製造や既存の水素規制が応用・実用化にとっても不可分な影響を及ぼす。グリーン水素は、水電解法によると再エネ調達のボトルネックが生じるため、水電解と比べ電力使用量のすくない触媒法によるグリーン水素の国内製造も国は積極的に支援すること。
また水素にかかわる国内法制の一元化も必須である。カーボンニュートラルに多面的に係る水素の特性を踏まえた法の一元管理の必要性に加え、水素の国内生産の推進を図るという視点も採り入れた「水素総合法」の設立の有効性について迅速に検討を行うこと。

7.2025 年大阪・関西万博におけるグリーンイノベーションの展開
万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」のもと、アフターコロナの新たな 社会の在り方を提示するとともに、日本の 2050 年カーボンニュートラルの目標実現に向け、日本企業が誇る独自のグリーンイノベーション技術の披露の場とし、参加各国のグリーンイノベーション技術の展示を積極的に招致し、競わせる最も活発な展開にすること。このため、国内研究開発を迅速化するとともに、ネットワーク化し技術が相互接続・連動し合い集合体となったグリーンな未来社会システムとして展示すること。例えば、DAC 技術により回収した CO2と水素を原料に合成した e-fuel で駆動する万博ドローンタクシー、場内モビリティ、CO2 由来のパビリオンや OC2 由来の万博フードの提供など、これらのカーボンリサイクル技術の開発を万博重点分野のひとつとして積極支援する。

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