能ある鷹は爪を隠す 1,000cvのPHEV、フェラーリ SF90 スパイダー

週末日帰りでサーキットに出かけるなどで、朝の4時頃に車を出さないといけない場合があるだろう。しかしながら、住宅街で朝の4時にフェラーリのV8の爆音を轟かせるのはどうにも気が引ける…、なんて人もいるのではないだろうか。そんなフェラーリオーナーの願いが叶う一台がフェラーリ SF90 スパイダーである。2020年11月にイタリア、マラネッロにてオンラインで初披露されたSF90 スパイダーが日本で初めてお披露目され、フェラーリ・ジャパン代表取締役社長のフェデリコ パストレッリ氏によるプレゼンテーションが行われた。パストレッリ氏曰く「SF90 スパイダーはスーパーカーの概念を根本的に書き換えられる存在であり、フェラーリが誇るテクノロジーの頂点を極めたパフォーマンスを求めると同時に、UFOを開けて走る喜びも味わいたいと望むオーナーにとって理想的なモデルです」価格は5,856万円だが、内容を見ると、決して高いとは言えないほど充実したスパイダーなのである。

SF90 スパイダーは、フェラーリの中で最もパワフルな、プロダクションスーパーカーシリーズのスパイダーだ。そして、フェラーリ初のリトラクタブルハードトップを備えたハイブリッドカーである。このプラグインハイブリッドシステムは、どんな量産スパイダーモデルも並ぶことができない水準のパフォーマンスを保証している。最高出力780cvを誇るV8ターボが、リアに1基、フロントに2基、合計3基の電気モーターでアシストされ、合計で1,000cvと言うとてつもないパワーを発揮する。給排気システムは完全な新設計とされ、ダクトは全てエンジンのヘッドと同じ高さに揃えられ、ターボチャージャーアッセンブリーの搭載位置は下がり、排気ラインが高くなっている。こうした合理化によって重心が下がるとともに、エグゾーストマニホールドをインコネル製としたことで、全体の重量の削減にも貢献している。フロントに搭載する2基のモーターは、RAC-e(コーナリング・アングル・レギュレーター、エレクトリック)システムを備え、リアのモーターは、跳ね馬のF1マシンで開発され、そこから名付けられたMGUK(モーター・ジェネレーター・ユニット、キネティック)が搭載されている。

新しいeマネッティーノで用意されたパワーユニットモードは4種類。eDriveでは、内燃エンジンは停止したままで駆動力は全て電動をフロントアクスルが担う。電気のみでの最長25kmの走行が可能となっている。Hybridでは内燃エンジンの稼働と停止は制御ロジックが自動で決定している。電気モーターからのパワーフローはバッテリーのパワーを温存するよう制限されている。PerformanceモードではICEが稼働し続ける。効率よりバッテリーの充電を優先するためで、これによって必要な時に瞬時にフルパワーを発揮できるのだ。Qualifyではシステムが最高出力1,000CVを全て解き放ち、電気モーターを最大能力の162kwで稼働させる。

エアロダイナミクスの開発には、最初期のプラットフォーム設計の段階から三つの目標が設定された。リトラクタブルハードトップの展開時にSF90ストラダーレのパフォーマンスレベルを維持すること、RHDの格納時に空力的乱流とノイズを最小限に抑えること、そしてエンジンベイのフローを最適化することである。また、従来のダイナミック・コントロール・システムがさらに強化され、新たにエレクトリック・サイドスリップ・コントロール(eSSC)が加わっている。これは、車両ダイナミクスの状況を、リアルタイムでモニターし、この情報をもとにフロントの電気モーター経由で、イン側とアウト側のタイヤに個別にトルクが分配され、車両の安定性が制御される。コーナリングを立ち上がる際のトラクションが大幅に向上している。

SF90ストラダーレと同様にAWDを供えており、0-100km/h加速は2.5秒、0-200km/h加速は7.0秒というスピードは、驚くばかりだ。最高速度は340km/h。そしてサーキット走行車両としての機能を極限にまで高めたいオーナーのために、標準仕様と大きく異なる専用アップグレードを含んだ「アセットフィオラノ」が用意されている。アセットフィオラノは受注生産となり、サーキット走行のために最適化されたショックアブソーバーや、車重を21kg軽量化することに貢献したカーボンファイバーやチタンを採用しているほか、カーボンリアスポイラーやミシュランのパイロットスポーツカップ2タイヤなどを履き、外観は特別なツートンカラーとなっている。

そして、一番の注目とも言える、リトラクタブルハードトップ。RHTは極めて軽量、コンパクトでシンプルなため、わずか14秒で開閉し走行中も稼働できるという。実際会場で開閉を行ってもらったが、とても早い。これなら気軽に開閉を楽しむことができるだろう。それから、インテリアでは中央にインスツルメント・クラスターが配置され、フルデジタルの16インチ曲面HDスクリーンは、新しい時代のフェラーリらしさを存分に感じさせてくれるものだ。「視線は路上に、手はステアリング・ホイールに」の理念をそのまま具現化させている。これは素晴らしいコックピットの誕生だ。

音もなく出庫し、道中はオープンを楽しみ、サーキットでは1,000cvを発揮、そして家路につくときにも静かに、いつの間にか元の位置へと戻り、充電を行う。まるで、忍者のごとく。能ある鷹は爪を隠す、そんな言葉がぴったりな、フェラーリの新しいスパイダーが登場した。

下に、フェラーリ SF90 スパイダーに関するプレゼンテーション動画を、日本語字幕つきで4本つけてあるので、ご覧いただけると理解が深まると思う。また、SF90についてより詳細に知りたい方は、トップギア・ジャパン039号041号に特集が掲載されているので、そちらもどうぞ。

https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/car-range

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