ベントレー コンチネンタル GT V8 コンバーチブルの上質なスポーティ感

ベントレーのコンチネンタル GTには4つのバリエーションがある。エンジンのW12とV8に、それぞれクーペとコンバーチブルが設定されているのだ。今回は、V8のコンバーチブルに試乗した。

どんなベントレー車?

ベントレー コンチネンタル GT V8、クーペは2,498.1万円、コンバーチブルは2,736.8万円。クーペの方は、ベントレー コンチネンタルシリーズのエントリーモデルとも言えるクルマで、価格はベントレーコンチネンタルGTのW12よりも185万円ほど低価格で、重さは80kg近く軽くなっている。

むしろ、余分な贅沢感が欲しいんだが?

まあ、黒いゴムのバンパーに、ラジオが入っているべき部分がぽっかりと穴になっているダチア サンデロに対して使われる“エントリーモデル”という言葉と、このコンチネンタル GT V8に使われるそれとでは、全く意味合いが違ってくるのだが。ベントレーの言うベーシックモデルとは、量産されているクルマと比べれば、全くもってベーシックではないのだ。この車も非常に高性能で、馬力550psの4.0リッターV8エンジンを搭載しており、控えめでおとなしいと呼ぶような代物ではない。
実際、ただフラフラと走るだけのものでなく、走りを追求したいのなら、このコンチネンタル GT V8は、購入に値するクルマだと言える。確かに、0-100km/h加速はやや遅めと言われてはいるが、4秒でそこまで加速できるのは、ロンドンにあるたいていのアパートの部屋よりも大きいクルマにしては、尋常じゃない加速性能だ。そして、過酷な環境でも気にせずに運転できる快適さも持ち合わせている。

スポーティ?

流通量が多い2,000万円台の価格帯の他社のクルマとは、比べ物にならないだろう。もしアストンマーティン DB11、ポルシェ911 ターボ、マクラーレン GTといったクルマに乗っている時に、やむを得ず高速道路を避けて遠回りのルートを推奨されたとしたら、非常に不安を感じるのではないだろうか。その点コンチネンタル GT V8 コンバーチブルなら、そのパワープラントに関係なく、快適さを保ったまま長くまっすぐな道を運転することができるし、むしろ、ずっとこのまま遠回りの道を走り続けていたいと思わせてくれる。
しかし、最短ではないルートを選ぶことの楽しみがもう一つある。このV8のコンバーチブルなら、そのノーズはW12よりも軽く、そして四輪駆動のトランスミッションは可能な限り後輪駆動に初期設定されているので、適切な出力で走行することができる。もっと活発に走りたい時には、そうすることもできる。

まるで運転手のようにいうことをよく聞く…

おっしゃる通り、このクルマは洗練された落ち着きを感じさせてくれる。ドライバーが望まなければ、スポーツカーっぽいパフォーマンスを発揮することはない。もし、スポーツカーさしさを望むのであれば、ローレット加工の切り替え用ダイヤルを、ドライブモードからスポーツモードへと切り替えれば良い。これによりサスペンションが強化され、スロットルとギアボックスの反応がシャープになり、V8のパフォーマンスをフルで堪能できる。
ギアをMTモードにするのも良いだろう。このクルマに搭載されているトランスミッションは高性能で、シフトの間違いが起きることはめったにない。ギアをDに入れている時にその美しい造形のパドルシフトを操作すれば、しばらく何もしていない状態が続くと、フルオートモードに戻る。

たまに気が利かないってこと?

正直なところ、そうかもしれない。しかし、運転が楽しいことには違いない。3,000rpm以下では、他の大型エンジンを搭載した車と同じく操作が楽で音も静かだが、その特性こそがこのクルマに隠された最高のユーモアを表している。女王はディナーで何杯か飲んだだけで、最高のジョークとクイーンズイングリッシュを披露してくれると言う。このコンチネンタルGT V8 コンバーチブルが、パフォーマンスを緩めることで、より優雅な走りを発揮してくれるのも、これに似たものだと感じざるを得ない。
幅が狭い道を走ると、その車体の大きさに気づくだろうが、高性能な48V駆動のアンチロールシステムと4WDシステムの組み合わせが、その重量を2.1トンにとどめているため、たいていの道であれば想像よりも簡単に幅に沿って楽に運転できる。そしてきちんとしたタイヤを履いていれば、雨、雪、ぬかるみを物ともせず走ることも可能だ。

911やマクラーレンを凌げないってこと?

いや、そんなことは、ない。クルマを比較する上では、一番に冷静になるべきだ。そして、コーナリングで急ブレーキを踏んだ時の、競合車と比べた場合の質量の違いではっきりとわかる。最終的にGTカーであることに変わりはないが、このクルマは思っていた以上に、スポーツカーとしての印象が良い。
そして、良いGTカーであるかという観点で見てみると、どうだろうか。W12 の方が、さらに操作が滑らかで静かだ。その静寂は、小さな排気システムによって引き裂かれてしまうのだが。しかしコンチネンタルGT V8 コンバーチブルの排気音は素晴らしく、そのノイズを耳にすれば誰しもが驚くだろう。
ダイヤルを「コンフォートモード」か「ベントレーモード」に切り替える(「ベントレーモード」はデフォルトで備わっているモード)と、車間距離と周囲の物との適切な距離をサポートしてくれる。ダーラム州を通り、ロンドンの南からスコットランドの国境の北まで800kmの道のりを走破したが、コンチネンタル GT V8には、一切の故障や不具合は生じていなかった。コンバーチブルなので、ルーフはほぼ開いた状態のまま走り切った結果という事を考えると、感動すら覚える。

結局、アリ?

改めて考えると、ルーフの開閉が自由に出来るというのは驚くべきことである。最近ではたくさんの人が洗練されたコンバーチブルカーに注目しており、そのほとんどがベントレーよりも低い価格だ。だが、コンチネンタルGT V8 コンバーチブルは、別格だ。リアシートのウィンドディフレクターをしまっていなくても、ルーフを閉めた状態なら、すぐにイギリスの速度制限に引っかかる速度まで加速するという、驚きの加速性能を持っている。言うまでもなく、シート、ホイール、アームレストにヒーター(!)が付いているおかげで、寒さはあまり感じない。
ルーフを開けると、このクルマはソフトトップじゃなかったんだ、と実感できる。このコンチネンタルGT V8 コンバーチブルのライバル車にも、一つ欠点がある。信号に引っかかった時、ウィンドウが普通のクルマより3cmほど下にあることで、騒音が聞こえやすいという点だ。それがコンチネンタルGT V8 コンバーチブルでは、歩行者の会話などの雑音は一切聞こえてこない。おそらく、このクルマなら、派手なボディーカラーを選択するのが良いだろう。ちなみに、上の写真は“ジュレップ”という色のV8コンバーチブルだ。

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