これでアストンマーティン ヴァンテージ博士になれる 70年の歴史を振り返る

V8 ヴァンテージとV8 ヴァンテージ ザガート

次に登場したのが、初代アストンマーティンV8 ヴァンテージだ。このクルマは、先代モデルとはまったく異なるエンジニアリングおよびパフォーマンス面の特徴を備えていた。1977年の発表当時、このクルマは“英国初のスーパーカー”と称賛された。0-60mph(約96km/h)加速ではフェラーリ・デイトナを打ち負かし、最高速度は170mph(274km/h)に達した。

エンジンは、ラゴンダが当時製造していたラグジュアリーセダン用と同じものだったが、高性能カムシャフト、高圧縮比、大径化されたインテークバルブ、新設計されたマニホールド、大型キャブレターなどを組み合わせることにより、出力が向上していた。

V8 ヴァンテージは、英国製の高性能スポーツカーとして、その車重をものともしないパフォーマンスを発揮した。自動車雑誌によるロードテストによると、“保守的な”デザインのヴァンテージは、ランボルギーニ・カウンタック、フェラーリ512BB、ポルシェ911ターボといった同時代のライバルを上回る性能を見せたといわれている。

この世代のヴァンテージが大幅なパフォーマンス向上を果たしたのは、300bhp台のパワーを叩き出したV8エンジンへのアップグレードによるものだ。キャブレターは、より大型のウェーバー製48 IDFが採用され、インテークマニホールドも改良された。大径化されたバルブ、デザインを見直したエキゾーストマニホールド、改善されたカムシャフトと高圧縮比により、馴らし運転が終了したこのエンジンは、380bhpを発生する能力を備えていた。しかし、アストンマーティンは、その強力な最高出力を、いかにも英国らしい控えめな表現で、“適切なパワー”と説明していた。

V8 ヴァンテージのシャシーは、アジャスタブルタイプのKONIダンパー、短縮したスプリング、大径フロント・アンチロールバーによって剛性を引き上げていた。255/60 VR15ピレリCN12タイヤを装着するため、スペーサーを入れてトレッドが拡大された。

空力特性の最適化を図るため、エクステリアは明確に差別化された。標準バージョンのAM V8と比べ、V8 ヴァンテージはフロントエアダム、完全に塞がれたグリルに設置されたシビエ製H4ツイン・ドライビングライト(ラジエーター用の冷却エアはバンパー下から導入)、リアのブーツリッド・スポイラーなどを特徴としていた。これらの空力パーツは、リフト(揚力)を低減させるために不可欠だった。もう1つの大きな特徴としては、ダウンドラフト・キャブレター上に設置された大型エアボックスを覆うために必要な、ボンネットバルジの採用が挙げられる。

V8 ヴァンテージは、30年間にわたって大きな進化を遂げ、1990年に5.3リッター・エンジンを搭載した“X-Pack”仕様が発表されて一つの時代が終わりを告げる。このモデルは、よりボディの短い、先進的で非常に希少なV8 ザガートサルーンのベースとしても使われた。この世代のヴァンテージは、アストンマーティン・ラインナップの絶対的な頂点に君臨するモデルであり続けた。

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