1980年代、トヨタはあの過激な「グループB」ラリーシリーズへ、初代MR2で参戦しようと計画していたことをご存じだろうか。実際、750kgの車体に750馬力を積み込むというモンスター級のプロトタイプまで存在した。結局、レギュレーションの廃止により幻となってしまったが、初代MR2の魅力はそれだけではない。ロータスのノウハウが注ぎ込まれた傑作ハンドリングや、コリン マクレーら伝説の一家も愛用した歴史など、今あらためて評価が高まる初代MR2の全貌を、トップギアの視点でお届けする。
面白い事実をお教えしよう。1985年、トヨタはMR2をグループBラリーカーへと仕立て上げようと計画していた。伝説的で過激なラリーシリーズが中止になる直前、何台ものプロトタイプが製作されていたのだ。初代MR2をこれ以上好きになることなんてないと思っていたが、この小さな逸話を知って考えが変わった。
もう一つ、面白い話をしよう。初代MR2のシャシーセッティングを担当したのはロータスだ。それを知ったとき、すべてが納得できた。この車が、運転していてこれほどまでに愛らしい理由がわかったからだ。だが、その話に入る前に、なぜこの角ばった小さなクーペが私にとってこれほどまでに大きな意味を持つのかを説明させてほしい。
1990年代半ば、大学時代に私は学生新聞で車のコラムを書いていた。しかし、友人からノヴァやフィエスタ、あるいは母親のガタつくボルボを借りて運転しようとすると、保険の面倒な問題に直面する。そこで私は、近くのストーク オン トレントにある中古車屋へ向かい、何とか面白そうな車を調達しようとしていた。
中でもフィアット クーペ ターボは記憶に残っている。主に「トルクステア」について最初の授業を受けたからだ。そして、交通整理用のボラード(車止め)に「左側通行を守れ」と警告され、あわや接触という経験もした。ラウンドアバウトを抜けてレーンに戻ろうとしていたのだが、車が言うことを聞かなかったのだ。隣に乗っていた若いセールスマンが震えながら「もう帰ってもいいですか、お願いですから」と言ったのを覚えている。
その経験で懲りた私は、100馬力以上の車はすべて危険な乗り物だと決めつけ、興奮よりも恐怖を抱いて運転するようになった。そんな時、10年落ちのMR2に出会ったのだ。なんて愛らしい車だったことか。軽くて運転しやすく、親しみやすくて正確。私のVWシロッコが一度も話しかけてこなかったような方法で、この車は私に話しかけ、運転するように促してきた。
だがそれ以来、一度も乗っていない。垂直に近いハンドブレーキと、親指を立てたような形のシフトレバーは覚えているが、この車のキャビンの最大の特徴——ステアリングの両側にある、計器盤に取り付けられた分厚いロータリー/レバー式のコントロール類については、全く記憶にない。決して美しいとは言えないが、人間工学的には天才的な出来栄えだ。
それらとエアコンの吹き出し口、ステアリングホイールを除けば、MR2の中で「曲線が存在する」ことを理解している部品はほとんどない。直線だけで構成されたキャビン、そしてくさび形(ウェッジシェイプ)のボディ。
正直、格好いいとは言い難い——これではマツダの愛らしいMX-5(ロードスター)が成功した理由も頷ける。だが、マツダが何もないところから成功を掴んだわけではないこともわかる。5年前に登場したこのMR2は、マツダが成功への道筋——そしてノーフォーク(※ロータスの本拠地)への道筋——を見つける助けになったはずだ。トヨタはロータスを雇ってMR2の完成度を高めただけだが、マツダはオリジナルのエランを丸ごとコピーしたのだから。
1.6リッターのツインカム4気筒エンジンは、リアバルクヘッドに押し付けられるように横置きされ、5速MTを介して後輪に122馬力を送る。約1トンという車重は軽快で、7,000rpmを超えても元気に回る。運転していて実にエネルギッシュで楽しい車だ。確かにロールはするが、決して挙動を乱すことはない。
第2世代のMR2は当初その方向性を見失い、1999年に第3世代のロードスターが登場してようやく、MR2は「ハンドリングの良さ」という名声を取り戻した。しかしその時には時すでに遅く、2007年には終焉の鐘が鳴らされた。
世間が覚えているのは第2世代のMR2かもしれないが、私たちが称賛すべきは、この初代なのだ。AE86と同様に、MR2はトヨタが世界に向けて「カローラやカリーナを作るだけの退屈なメーカーではない」と静かに証明していた証拠である。
もしかすると、グループB計画が実現していれば、この車のステータスはもっと高かったかもしれない。プロトタイプはケーニグセグ並みのパワーウェイトレシオ——750kgの車体に750馬力——を誇ったと言われている。例のフィアットに乗った時の私と同様、完全に制御不能な代物だったらしい。
ヒーローポイント: 1980年代の象徴。美しく走る、車輪のついたくさび
ブーイングポイント: トヨタは結局、グループB仕様を市販しなかった。
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=海外の反応=
「昔からこの車に弱いんだ。mk3(3代目)の状態が良い個体が5000ポンド以下で買えるのに、初代が2万5000ポンド以上で取引されているのを見ると狂気を感じるよ」
「↑トヨタはグループB / グループSバージョンを実際に作ってるよ。222Dというモデルで、ヒストリックラリーのイベントでよく見かける。……らしいんだけど、かなりひどい車みたいだ。600馬力で750kg、しかもとてつもないターボラグがあるんだからね」





