電気自動車のチューニングは邪道か。その答えを“ドリキン”土屋圭市が叩きつけた。Hyundai IONIQ 5 N専用「DK Edition」に見る、新時代のドライビングプレジャーの姿とは。
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電気自動車（EV）のパフォーマンスが、内燃機関（ICE）のそれを凌駕し始めて久しい。0-100km/h加速のタイムを競えば、もはやICEに勝ち目はないのかもしれない。だが、我々トップギアの読者がクルマに求めるのは、単なる速さだけだろうか。エンジンの鼓動、エキゾーストノートの高揚感、そして自らの手でマシンを“育て上げる”チューニングの文化。それらが希薄なEVに、一抹の寂しさを覚えるのは私だけではないはずだ。
そんなEVへの懐疑論に、日本のストリートから世界へと羽ばたいた一人のレジェンドが、真正面から答えを提示した。“ドリフトキング”こと土屋圭市。彼がその名を冠し、監修した Hyundai IONIQ 5 N 専用のパフォーマンスパーツパッケージ「DK Edition」の登場は、単なるパーツの発売ではない。これは、EVという新たな素材に、日本の職人気質なチューニング哲学を注ぎ込むという、壮大な実験の始まりを告げる号砲なのだ。
沈黙の中で磨かれる、ドライビングの純度
Hyundaiの高性能ブランド「N」と、日本のカーカルチャーを支えてきたオートバックスセブン、そして“ドリキン”土屋圭市。この異色のコラボレーションから生まれたのが、IONIQ 5 N専用のパフォーマンスパーツパッケージ「DK Edition」だ。2025年10月1日（水）より、3,300,000円（税込）で販売が開始される。
名称の「DK」が土屋氏の愛称「ドリフトキング」に由来することは、言うまでもないだろう。このパッケージは、日本の自動車文化を牽引し、今なお世界中のドライバーに影響を与える彼のこだわりが、隅々にまで詰め込まれている。その目的はただ一つ、IONIQ 5 Nのパフォーマンスをサーキットから公道まで、あらゆる領域で引き上げることにある。
≪パッケージ構成品≫
カーボンフロントスポイラー
カーボンリアディフューザー
カーボンサイドスカート
カーボンリアウィング
6ピストン・モノブロックブレーキシステム
21インチ軽量鍛造ホイール
ローダウンスプリング
ラインナップを見れば、その本気度が伝わってくる。エアロダイナミクスを司るカーボンパーツは、単なるドレスアップではない。軽量な鍛造ホイールとローダウンスプリングは、バネ下重量を軽減し、よりシャープな回頭性を生むための必然。そして、強大なパワーを受け止める6ピストンのブレーキシステム。これらはすべて、土屋氏の厳しいチューニング基準をクリアするために、綿密に設計されたものだ。
この「DK Edition」が目指したのは、コーナリング性能、走行安定性、制動力、そしてハンドリング性能の劇的な向上。EVの静寂の中で、ドライバーはより純粋に、クルマとの対話に没頭することができる。
ガレージの銘品か、ワインディングの相棒か
さて、我々はこの「DK Edition」をどう捉えるべきだろうか。
例えば、週末のガレージ。ポルシェ911 GT3の隣に佇むIONIQ 5 N。そのカーボンパーツの織り目を眺め、鍛造ホイールの造形美にため息をつく。静寂の中、ハイパフォーマンスカーの機能美を愛でる。そんな知的な楽しみ方も、悪くないだろう。このパッケージが持つ精緻さは、もはや工業製品というより工芸品の域に達している。
あるいは、夜明け前の箱根ターンパイクへ。かつてR32 GT-Rで駆け抜けたコーナーを、今はIONIQ 5 Nでトレースする。ドリキンが監修した足回りは、EV特有の重量を感じさせず、まるで手足のように動く。聞こえるのはタイヤのスキール音と、自らの高鳴る鼓動だけ。内燃機関の咆哮はなくとも、そこには間違いなく、クルマを操る根源的な喜びが存在するはずだ。
EVは、ドライビングの楽しさを我々から奪う存在ではなかった。それは、新たな表現を待つ、真っ白なキャンバスだったのだ。「DK Edition」は、そのキャンバスに日本のチューニング文化という、鮮やかな一筆を書き加えた。この挑戦がEVの未来をどう変えるのか、我々はその歴史の証人となるのかもしれない。
最後に告知を。現在、土屋圭市氏とトップギア・ジャパンで動画のコラボ企画を制作中だ。果たして、どんなクルマを料理するのか？公開を楽しみにしてほしい。
400号記念：UK400マイルロードトリップ／フェラーリ F80／フェラーリハイパーカー：トップギア・ジャパン 069
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