BYDは12月1日、日本初のPHEV「SEALION 6」を発売した。398.2万円からの戦略価格と、EV走行100kmを実現する独自技術「DM-i」を搭載。国産SUVの脅威となる新型車の実力を徹底レポートする。
2024年12月1日、BYD Auto Japanは日本市場への導入第5弾となる新型車「BYD SEALION 6(シーライオンシックス)」を発表し、同日より販売を開始した。
これまで「ATTO 3」「DOLPHIN」「SEAL」とBEV(バッテリーEV)を矢継ぎ早に投入してきたBYDだが、今回の「SEALION 6」は日本初導入となる「PHEV(プラグインハイブリッド車)」である。
都内で開催された新車発表会およびテクニカル・シンポジウムには、BYD Auto Japanの東福寺厚樹社長に加え、BYD本社より自動車新技術研究院 DMシステム開発責任者の魯超(Lu Chao:ルー チャオ)氏が登壇。さらにゲストとして国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏を招き、BYDの核心技術であるハイブリッドシステム「DM-i」の全貌が語られた。
本稿では、発表会の内容をもとに、BYDが満を持して日本に投入するPHEVの実力と技術的背景をレポートする。
日本の「EVの壁」を壊すためのPHEV投入
「日本の電動車市場をさらに活性化させるため、BEVとPHEVを『車の両輪』として展開します」
冒頭、東福寺社長は力強く宣言した。日本市場において、BEVの普及には依然として「航続距離」「充電環境」「車両価格」という3つの壁が存在する。BYDはこれまでも十分な航続距離や手の届きやすい価格設定でこれらに向き合ってきたが、ユーザーの不安を完全に払拭するには、ガソリンでも走れるPHEVという選択肢が必要だと判断した。
「SEALION 6」は、全長4,775mm × 全幅1,890mm × 全高1,670mmという堂々たるミドルサイズSUVだ。価格は前輪駆動(FWD)モデルが398万2,000円(税込)、四輪駆動(AWD)モデルが448万8,000円(税込)という戦略的なプライシングを実現した。競合となる国産PHEV勢に対し、装備と価格競争力で真っ向から勝負を挑む形となる。
なお、納車開始はFWDモデルが2026年1月末、AWDモデルは同年3月頃を予定しているが、11月から開始された先行予約では既に300台以上の受注を獲得しているという。
「電気主体」のスーパーハイブリッド技術「DM-i」とは
今回の発表会のハイライトは、第2部のテクニカル・シンポジウムで語られたBYD独自のハイブリッド技術「DM-i(Dual Mode-intelligent)」の詳細解説である。
本社の開発責任者である魯超氏は、「DM-iスーパーハイブリッドは、電気を主役(以電為主)としたシステムです」と定義した。
従来のハイブリッドシステムの多くがエンジンを主動力とし、モーターがそれを助ける構造であるのに対し、DM-iは「大出力モーターと大容量バッテリー」を核とし、エンジンはあくまで発電や高速巡航時の補助として機能する。
システムは以下の3つのモードをシームレスに切り替える。
EVモード(市街地走行の大部分): 18.3kWhの大容量ブレードバッテリーを使用し、モーターのみで走行。
シリーズハイブリッドモード(加速・登坂時): エンジンで発電し、モーターで駆動。エンジンは常に高効率な領域で稼働する。
パラレルハイブリッドモード(高速巡航時): 高速域ではモーター効率が落ちるため、クラッチを繋ぎエンジンが直接タイヤを駆動。必要に応じてモーターがアシストする。
魯超氏は「市街地走行の80%以上はEVモードでカバーでき、ロングドライブでもエンジンの存在を感じさせない静粛性とスムーズな加速を実現しています」と胸を張る。
熱効率43.04%を達成した驚異の1.5Lエンジン
このシステムを支えるのが、PHEV専用に開発された1.5L自然吸気エンジンだ。特筆すべきは、43.04%という世界最高水準の熱効率である。
魯超氏の解説によれば、この高効率化にはいくつかの技術的ブレイクスルーがあった。
圧縮比15.5: 量産ガソリンエンジンとしては極めて高い圧縮比を採用。
アトキンソンサイクル: 徹底したアトキンソンサイクル化。
インテリジェント分流冷却(Split Cooling): 業界初となる技術で、シリンダーブロックとシリンダーヘッドの冷却水路を独立制御。ノッキングを抑制しつつ、摩擦損失を低減させる。
これらに加え、エンジンを発電主体と割り切ることで、負荷変動の少ない「おいしい領域」だけで運転させることが可能となり、圧倒的な燃費性能を実現した。
また、モーター内部には超強力な接着剤技術を用いることで、最大15,000rpmという高回転化とローター強度の確保を両立。永久磁石を直接冷却する技術も盛り込まれている。
これら全てのコンポーネント(エンジン、モーター、バッテリー、半導体)を自社で垂直統合開発している点が、BYDのコスト競争力と技術的な擦り合わせの強さの源泉である。
実用性と快適性を追求したパッケージング
車両概要については、商品企画部長の新道学氏が解説を行った。
エクステリアは「海洋シリーズ」のデザイン言語を継承。フロントフェイスには「X(エックス)」をモチーフにした意匠を取り入れ、リアには「オーシャン・スターテールライト」を採用した。
インテリアはブラックとブラウンの2トーンで、15.6インチの回転式タッチスクリーンや、クリスタル調のシフトレバーを配置。後席は床面がフラットで、大人がゆったり座れる空間を確保している。荷室容量は通常時425L、後席を倒せば最大1,440Lまで拡大する。
搭載されるバッテリーは、BYD自慢のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)を用いた「ブレードバッテリー」。容量は18.3kWhで、EV走行換算距離(等価EVレンジ)は100kmに達する。
また、V2L(Vehicle to Load)およびV2H(Vehicle to Home)に対応しており、アウトドアや災害時の電源としても活用可能だ。補機バッテリーにも業界初となる鉛フリーの12Vリン酸鉄リチウムバッテリーを採用し、長寿命化と環境負荷低減を図っている。
トークセッションに登壇したモータージャーナリストの清水和夫氏は、電動化の潮流について次のように述べた。
「電動化の定義は曖昧だが、重要なのはユーザーにとって気持ちよく、環境に良い車であるかどうか。F1やWECの世界でも、捨てていたエネルギーを電気として回収する技術が定着している。これからは『モーターが主、エンジンが従』という時代だ」
清水氏はかつてBYD本社で開発中の車両テストに参加した経験にも触れ、「当時のBYDはまだ発展途上だったが、今や日本メーカーにとって先生のような存在になりつつある」と、その技術的進歩の速さを評価した。
まとめ:日本市場への「フルコミット」
今回の「SEALION 6」投入は、BYDが日本の乗用車市場をいかに重要視しているかの表れである。
FWDモデルで398.2万円という価格は、補助金を考慮すればさらに身近なものとなる。EVの静粛性と加速感を持ちながら、航続距離の不安がなく、さらに災害時の給電拠点にもなる。「まずはPHEVから」と考える日本のユーザーにとって、この「スーパーハイブリッド」は極めて合理的な選択肢となりそうだ。
BYDは今後、ソフトウェアのアップデート(OTA)を通じてハイブリッドシステムの制御をさらに進化させる構想も持っている。「SEALION 6」は、日本のSUV市場における台風の目となる可能性を十分に秘めている。
【BYD SEALION 6 主要諸元】
項目 SEALION 6 (FWD) SEALION 6 AWD
全長×全幅×全高 4,775×1,890×1,670mm 同左
ホイールベース 2,765mm 同左
パワートレイン 1.5L 直4エンジン + フロントモーター 1.5L 直4ターボ + 前後モーター
システム最高出力 非公表(EHSシステム出力中心) 非公表
0-100km/h加速 8.5秒 5.9秒
バッテリー容量 18.3kWh 18.3kWh
EV走行換算距離 100km 81km
ハイブリッド燃費(WLTC) 22.4km/L 18.1km/L
メーカー希望小売価格(税込) 3,982,000円 4,488,000円
納車開始予定 2026年1月末 2026年3月
※AWDモデルのスペックは豪州仕様参考値を含む。
BYD初のPHEV「SEALION 6」日本発売! 398.2万円からの衝撃価格と航続1,000km超の実力
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