長い人生だもの、昔を懐かしみ、胸がチクチクするような切ない思いをすることがあるのは当然のことだろう。もし君がマルチェロ ガンディーニであれば、話は別だが。今日私たちがやって来たのは、北部イタリアにあるピエモンテ州都トリノに近い、自身で改装する前は修道院だったという豪邸。その吹抜けに腰を下ろして私たちを待っていたのは、あのマルチェロ ガンディーニだ。最近になって移動に杖を必要とするようになったとけど、まだまだ元気でエレガントな御年83歳のジェントルマンである。聡明さは相変わらずで、皮肉交じりで型破りで哲学チックな独特の考えは今でも健在だ。カーデザイン界の真のレジェンドの一人であるけれど、その影響力を考えれば、世界が彼に与えた地位はわずかなものでしかない。
細い指の間に煙草を挟み、「一般的に、昔みんなが好んで乗っていたようなスタイルは、じきに流行らなくなる。時間が経てば、好きじゃなくなっているか、好きでい続けてくれはしない」とガンディーニは言う。「カウンタックは50年後
でも十分楽しめるけれど、ミウラは私を悩ませている」
まぶしそうに目を細め、うらやましいほどフサフサの頭髪をかきあげると、煙草の灰がひらひらと床に落ちた。ミウラって、これまで作られたクルマの中で最も美しいとさえ評価されてるクルマだよ?ベルトーネからジョルジェット ジウジアーロが去る直前の1965年にデザインされ、ガンディーニが引き継いで仕上げられたってアレだ(著作権については、この先もずっと争われるんだろうね)。で、一体そのどこが悩ましいってんだろう?一般人にはとうてい想像がつかないんだけど、ガンディーニはミウラを「ただ大衆を楽しませるだけのクルマ」だとバッサリ切り捨てる。…
フルストーリーは、雑誌「トップギア・ジャパン 045号」でお楽しみください。