倍率約48倍という凄まじい争奪戦を経て即完売となった「マツダスピリットレーシング ロードスター 12R」。国内向けソフトトップに待望の2.0Lエンジンを搭載し、匠の手で200psまで鍛え上げられたメーカー渾身のコンプリートカーだ。総額860万円超となる究極のロードスターは、我々にどんな世界を見せてくれるのか。
マツダスピリットレーシング(MAZDA SPIRIT RACING:以下、MSR)と、彼らが手がけたロードスターについて、トップギアの読者諸氏ならご存じだとも思うが、念のためザッとおさらいしておこう。
MSRは、2021年に設立されたマツダのモータースポーツ直系サブブランドで、社内のモータースポーツ部門でもある。通称「S耐」と呼ばれるスーパー耐久シリーズでMSRが培った技術と情熱を注ぎ込んで作られたロードスターが、MSR ロードスターだ。
MSR ロードスターには、2200台限定の標準モデルと、200台限定のMSR ロードスター 12R(以下、12R)がある。いずれも、国内向けのソフトトップモデルには設定がなかった2.0Lエンジンを搭載(標準のMSRロードスターは184ps)。レカロ社製セミバケットシートも装着して、街中からサーキットまで意のままに走る楽しさを追求した。そして12Rでは2.0Lエンジンを200psにまでパワーアップし、レカロ社製フルバケットシートを装着するなど、サーキット走行を存分に楽しむための技術や装備を搭載したメーカーコンプリートモデルだ。
今回の試乗車は12R。限定200台とは別にマツダがメディアの試乗用に用意した広報車なので、エンジンルームに付けられた限定を示すプレートには「000/200」とある。エクステリアでは、まず前後とサイドにアンダースカート、そしてリアスポイラーとエアロパーツで武装。ボディカラーはエアログレーメタリックのみだが、ボンネットやトランク、サイドにはデカールが貼られている。
インテリアはブラックのアルカンターラで仕上げられ、ノーマルのロードスターより上質だ。前述のレカロ社製フルバケットシートがその気にさせる。とはいえナンバープレート付きの公道走行可能モデルだから、エアコンやパワーウインドー、ディスプレイオーディオなどの快適装備も標準で備わる。
エンジンは匠の手作業による吸気ポート内側研磨などのチューンを施して前述のように200psにパワーアップされ、しかも試乗車はオプションのスポーツマフラーも装着。パワーに見合うようにサスペンションもチューンされ、エンジンルームにはストラットタワーバーも備わる。見るからに、乗る人を「その気」にさせる。それがMSR ロードスター 12Rだ。
前置きが長くなった。フルバケットシートゆえ、少し身体を押し込むようにコクピットにおさまる。座り心地が気になったが、座面のクッションはしっかりあるので思ったより快適だ。
6速MTは、ノーマル同様にシフトタッチが小気味良い。そして走り出した瞬間から低速域のトルクの太さを実感する。低回転でも粘ってくれるので、市街地走行は必要以上にシフトダウンせずにこなしてくれる。アクセルペダルを踏み込んでいくと、4,000-5,000rpmくらいからエンジンの音が変わり、力強い伸びを見せる。ソフトトップを開けて走れば、サウンドと風と一体になれる。
最近は電動車やターボ車の試乗が多く、絶対的な加速力はそれらには及ばない。だが、このチューンした自然吸気エンジンらしい吹け上がりは、サウンドも含めてなかなか楽しい。ノーマルのロードスター(1.5L・132ps)と比べれば68psもの大幅なパワーアップだが、ピーキーさはなく、全域にわたって扱いやすいパワーが上乗せされたという感じだ。
足まわりはサーキット走行を意識して固められているから、不整路面などでは突き上げは大きい。それでも専用ダンパーが効いているようで路面状況が良ければ乗り心地は意外と悪くない。また、試乗車のタイヤはオプションのアドバン ネオバで、けっこうグリップ力は高くハンドリングも素直で、ダンパーも効いておりロールは少ない。ブレンボ製のブレーキはタッチも良く、ペダルの踏み加減でコントロールしやすい。
MSR ロードスター 12Rは、メーカーが仕上げたチューニングカーらしく、それなりにハードだが洗練されたスポーツカーだ。ただし、車両本体価格(税込)は7,612,000円(特別付属品の51万1500円を含む)と、けっこうなプライスだ。しかも試乗車はサーキット走行に対応させるため、さらに1,053,822円(タイヤはオープン価格なので別)の専用アクセサリーが追加され、合計金額は8,665,822円。
2Lの国産スポーツカーとしては高額だが、自分でショップなどに頼んで同様のクルマを仕上げたら、この金額では済まないだろう。そしてその完成度も、ここまでのレベルにするのは難しい。そう考えると、自分が買える買えないは別として、このプライスには納得してしまう。
この12R、限定200台は約48倍(応募約9,500件)もの抽選の結果、既にオーナーが決まっている。また標準モデルの2200台も完売したようだ。この記事を読んで気になった人は、あるかどうかは分からないが第2弾の登場を待つしかなさそうだ。(篠原政明)
■ マツダスピリットレーシング ロードスター 12R 主要諸元
●全長×全幅×全高:3915×1735×1245mm
●ホイールベース:2310mm
●車両重量:1050kg
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:1997cc
●最高出力:147kW(200ps)/7200rpm
●最大トルク:215Nm(21.9kgf-m)/4700rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・45L
●WLTCモード燃費:15.0km/L
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両本体価格(税込):7,612,000円
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