総入場者数11万9266人を動員し、熱狂の渦の中で閉幕した第53回東京モーターサイクルショー2026。国内外のトップメーカーが放ったワールド&ジャパンプレミアの最新モデルをトップギア流に徹底解剖する。
東京モーターサイクルショー2026が閉幕した。ここは最新の電子制御デバイスや、風洞実験室で削り出されたかのようなカーボンファイバーの塊、そして1000ccを超えるスーパースポーツたちが己の存在意義を賭けて火花を散らす、極めて騒々しくも愛すべき見本市である。我々トップギア・ジャパンの読者のような、高度なエンジニアリングに目がないエンスージアストにとって、各メーカーが隠し持っていた最新兵器(ワールドプレミア&ジャパンプレミア)を目の当たりにする至福の空間だ。
今回は、数あるブースの中から特に我々の知的好奇心を刺激した主要メーカーと注目ブランドを厳選し、各ブースの熱気と最前線の情報を徹底的にレポートしよう。
ハーレーダビッドソン
今年の東京モーターサイクルショーにおいて、「ハーレーダビッドソンの新たなイノベーション」をテーマに掲げた同ブースは、単なるモーターサイクルの展示を超え、彼らが提案する「ライフスタイル」そのものを体感できる壮大な空間となっていた。我々イギリス人にとって、アメリカのモーターサイクルといえば「巨大な鉄の塊に農耕機のようなエンジンを載せて真っ直ぐ走るもの」といういささかステレオタイプな偏見があったことは否定しない。しかし、今年のハーレーは違う。プレスカンファレンスでは、人生における“現実の選択肢”としてハーレーを位置づける玉木代表の熱いメッセージが語られた。
最大のトピックは、普通自動車免許でも運転可能な「トライク(3輪)」シリーズの過去最大規模となる大刷新だ。「ロードグライド 3」「ストリートグライド 3 リミテッド」「CVO ストリートグライド 3 リミテッド」の3モデルが展開され、新設計のシャシーとAアームを採用した「ド・ディオン式」リアサスペンションを搭載。これによりホイールトラベルは従来の2倍以上に向上し、ばね下重量を約30kgも軽量化することに成功している。路面のギャップへの対応力やコーナリングの安定性が劇的に向上しただけでなく、スターターモーターを動力とする新設計のリバースシステムにより、取り回しの操作性も大幅に進化を遂げた。
また、スポーツの伝統とモダンなパフォーマンスを融合させた2026年モデルの「ナイトスター」は、150万円を下回る戦略的なプライスタグで登場。フラットトラックレーサー「XR750」のDNAを受け継ぐブラッドオレンジのグラフィックを纏い、より多くのライダーにハーレーの世界を開く役割を担う。
さらに、アメリカ建国250周年を記念した「リバティエディション」が日本初公開。重厚なミッドナイトエンバーのボディにイーグルグラフィックが施されたこの希少な限定コレクションは、日本国内でわずか90台の抽選販売となる。伝統と最新技術が見事に融合したハーレーのブースは、終日多くの熱気に包まれていた。
ロイヤルエンフィールド
1901年の創業から125年。モーターサイクル史上において他に類を見ない、途方もない歴史の節目を迎えたロイヤルエンフィールド。今年のブースは、大英帝国発祥の伝統ある気品と、現代のミドルクラス市場を席巻する熱気が見事に同居する、極めて魅力的な空間となっていた。博物館のガラスケースに飾るための化石ではなく、現在進行形で世界を切り拓く鋭利な武器としてのモーターサイクルがそこにはある。
プレスカンファレンスにおいて最も大きな歓声を集めたのは、なんと言っても国内初披露(参考出品車)となった2つのモデルである。まず1台目は、モーターサイクルの生きた伝説「BULLET 650(ブリット・ロクゴーマル)」。世界で最も長く継続生産されている名車が、ついに待望の650ccツインエンジンを搭載して生まれ変わった。伝統的なティアドロップタンクや重厚な造形美はそのままに、荒れた路面でも確実なトラクションを生み出す最新の空冷並列2気筒エンジンが、ライダーを新たな冒険の旅へと誘う。
そしてもう1台の主役が、「CLASSIC 650 125TH YEAR ANNIVERSARY SPECIAL EDITION」である。ブランド創立125周年を祝うこの極めて特別な限定モデルは、深みのある特別なカラーリングや職人の手による伝統的な装飾が施され、まさに「動くモニュメント」と呼ぶにふさわしい仕上がりだ。
さらにブースでは、同社のマシンが「カスタマイズに最適なキャンバス」であることを証明する見事なカスタム車両も展示。日本の気鋭ビルダーであるCustom Worksが手がけたVITAも並び、圧倒的な造形美を誇っていた。「あらゆる人のためのバイク」を標榜し、ライダーの情熱を全肯定するロイヤルエンフィールドの勢いを、まざまざと見せつける出展内容であった。
BMW Motorrad
常に先進的なテクノロジーと洗練されたデザインで業界のベンチマークであり続けるBMW Motorrad。今年の東京モーターサイクルショーでは、未来のモーターサイクル像を提示するコンセプトモデルの本邦初公開に踏み切り、我々のような頭の固いエンスージアストたちの度肝を抜いた。ブースの最前列で圧倒的な存在感を放っていたのが、日本初公開となる「R20 CONCEPT」と「Concept F 450 GS」の2台である。巨大な排気量を持つ伝統のボクサーエンジンの新たな可能性を示すR20と、ミドルクラス・アドベンチャーの枠を根本から打ち破るF 450 GSの登場は、今後の市販化に向けたファンの期待を限界まで膨らませるものだった。
また、市販モデルにおける最大のトピックは、革新的な自動シフト機構「ASA(Automated Shift Assistant)」を搭載した「R 1300」シリーズを含む、約20車種に及ぶ最新ラインナップの一挙展示だ。厄介なクラッチ操作からライダーを解放し、純粋なライディングの喜びだけに集中できるASAのメカニズムは、まさにドイツの高度なエンジニアリングの結晶である。さらにプレスカンファレンスでは、ファンが待ち望んだ新型「M 1000 RR」「M 1000 R」「S 1000 R」の国内価格も正式にアナウンスされ、会場を大いに沸かせた。
ハードウェアの展示だけでなく、BMWブースは体験の面でも極めて上質だ。ロードレース界のレジェンドである青木宣篤氏を司会に迎え、M 1000 RRで全日本や世界耐久選手権(EWC)を戦うトップライダーたちによる熱気あふれるトークセッションを実施。さらに、モータージャーナリストの宮城光氏がBMW Motorradの奥深い魅力を語るステージなど、プレミアムブランドならではの知的好奇心を刺激するコンテンツが満載であり、終日黒山の人だかりが絶えなかった。
ホンダ
世界最大のエンジン屋が本気を出すとどうなるか。ホンダのブースは、ジャパンプレミアの嵐と言っても過言ではないほどの途方もない熱気に包まれていた。まず最大の目玉としてベールを脱いだのが、新型スポーツツアラー「CB1000GT」である。「速く、遠くまで快適に」というコンセプトを体現したこの4気筒マシンは、ダイナミックなエアロダイナミクスと長距離巡航を見据えた充実の装備を誇り、日本市場への投入が正式に計画されていることが明かされた。
さらに、日本のライダーの魂を強烈に揺さぶる「CB」シリーズから、完全新設計となって3年ぶりに復活を遂げた「CB400SUPER FOUR」が関東圏初公開。シルバー×ブルーの爽やかなメインカラーをはじめ、伝統のスタイリングに最新のテクノロジーが注ぎ込まれている。そして、そのフルカウル版となるコンセプトモデル「CB400R FOUR」も登場。400cc・4気筒のフルカウルスポーツモデルとしては名車RVF以来、実に30年ぶりとなるこのマシンの復活劇に、我々のような酸いも甘いも噛み分けたオジサン世代から若いライダーまでが涙を流さんばかりの熱い視線を送っていた。
また、メカニズム面での大きな話題をさらったのが、フレームとエンジンのみのスケルトン状態でひっそりと、しかし暴力的なオーラを放ちながら展示された「V3R_900」プロトタイプだ。なんと機械式スーパーチャージャーを搭載した水冷V型3気筒エンジンであり、低回転域からの怒涛の過給を武器とする次世代パワーユニットの存在が明らかになった。そのほか、話題の「Honda E-Clutch」を搭載してお色直しを図った新型「CB750Hornet」や、最高出力50kW・最大航続距離130kmを誇る次世代電動バイク「WN7」なども展示。内燃機関の極致から電動化へと続く未来へのロードマップを力強く提示する、圧巻のブース展開であった。
KAWASAKI
「乗るカワサキ」「着るカワサキ」という直球かつ挑発的なテーマを掲げたカワサキモータースジャパンのブースは、今年も圧倒的なライムグリーンの狂気(もちろん最大級の賛辞だ)に満ちていた。今年の目玉は、なんと言っても今夏発売予定の新型スーパースポーツ「Ninja ZX-10R」の関東・ジャパンプレミアだ。「真のチャンピオンに相応しいマシン」と銘打たれたこのモデルは、フロントの接地感を劇的に高める大型ウイングレットを新たに完全武装。次世代Ninjaファミリーを象徴するアグレッシブなニューフェイスを採用している。スーパーバイク世界選手権でライバルたちを絶望させてきたエンジン性能はそのままに、排出ガス性能を向上。ターンバイターンナビゲーションを備えたTFTメーターの採用や、サスペンションジオメトリーの最適化など、サーキットからストリートまで死角のない進化を遂げ、価格は248万6000円(税込)と発表された。
また、世界でわずか500台のみが限定生産される、よりサーキット走行に特化したシングルシートモデル「Ninja ZX-10RR」の存在も明らかにされた。Pankl製チタニウムコネクティングロッドや軽量ピストンを組み込んだ至高のパワーユニットは、カワサキのレーシングスピリットの純粋な結晶である。
内燃機関の極致を見せる一方で、未来へ向けたアプローチも忘れていない。ブースの一角には、水素燃料エンジンを搭載した「HySE-X1」が堂々と展示され、カーボンニュートラル時代における「エンジンのカワサキ」の新たな生存戦略を力強くアピール。さらに、不動の人気を誇るZ900RSシリーズやMeguro K3といったヘリテージモデルから、最新のアパレルラインナップまで、カワサキというブランドの思想を全身で体感できる見応えのある展示となっていた。
スズキ
スズキは今年、「SUZUKI FAN'S GARAGE(スズキ ファンズ ガレージ)」という極めてユニークなテーマでブースを展開した。ライダーなら誰もが憧れる「現代的でありながら、どこかレトロな雰囲気の隠れ家」をイメージした空間は、無機質な展示会場において異彩を放ち、謎の居心地の良さを感じさせる。
そのガレージの中心で最も強烈な光を放っていたジャパンプレミアが、新型クロスオーバーモデル「SV-7GX」である。昨年のEICMA(ミラノショー)で世界初公開されたこのマシンが、ついに日本のファンの前に姿を現したのだ。定評ある水冷V型2気筒DOHC 645ccエンジンを搭載し、市街地から荒れた未舗装路までを軽快に駆け抜けるポテンシャルを秘めている。会場にはツーリングアクセサリーをフル装備した漆黒の「グラススパークルブラック」仕様も展示され、新たな冒険への想像を激しくかき立てた。
さらに、新世代の屋台骨となっているGSX-8シリーズからは、ネオクラシックなスタイリングを身に纏った派生モデル「GSX-8T」およびビキニカウル装着仕様の「GSX-8TT」が国内初披露。「走りは最新、見た目はレトロ」という絶妙なパッケージングは、写真で見る以上に実車の質感が素晴らしく、初見の来場者から圧倒的な支持を集めていた。
また、海外仕様の新型「DR-Z4S」および「DR-Z4SM」や、原付一種の折り畳み電動モペッド「e-PO(エポ)」といった参考出品車も多数展示。そして、例年より大幅に拡大された物販エリアでは、和モダンな空間の中で「スズキオシフェス」と銘打たれた推し活グッズが飛ぶように売れていた。我々が愛してやまない熱狂的なファン(いわゆる鈴菌)の心を鷲掴みにする、スズキらしい変態的……いや、愛に溢れた素晴らしいブースであった。
TRIUMPH
我らが大英帝国の誇り、トライアンフは今年の東京モーターサイクルショーにおいて、国内外メーカーの中でも最大規模となる圧倒的な面積のブースを展開し、王者の貫禄を見せつけた。「“見て・触れて・語って楽しむ”体験のテーマパーク」と銘打たれたその空間には、2025年秋以降に怒涛の勢いで発表された新型バイク、実に27車種が一挙に集結するという壮観極まりない光景が広がっていた。
中でも日本のファンが最も熱い視線を注いだジャパンプレミアが、普通二輪免許で乗ることができる400ccクラスのニューモデル、新型「Thruxton 400(スラクストン400)」と「Tracker 400(トラッカー400)」である。トライアンフの絶対的なアイデンティティである美しくクラシカルな造形美を、ミドルクラスの扱いやすい車格に見事に落とし込んだこの2台は、初めてバイクに乗る若年層から、上質なセカンドバイクを求める目の肥えたベテランまで、幅広い層を魅了する仕上がりとなっている。首都圏で「初展示&初またがり」が可能ということもあり、車両の周りには常に長蛇の列ができていた。
さらに、大幅なアップデートを果たした3気筒ファミリーの新型「Trident 800」や、絶対的なブランドアイコンである「Bonneville」シリーズの最新モデルもずらりと並んだ。
ステージイベントも非常に豪華で、世界各地で開催された海外試乗会に参加した人気インフルエンサーやモーターサイクルジャーナリストを多数招き、インプレッションを語るトークショーを連日開催。トライアンフが持つ「優雅さ」と、それを裏切るような「凶暴な遊び心」を見事に体現し、来場者のバイク熱を極限まで高めてくれる、非常にエキサイティングなブース構成となっていた。
YAMAHA
ピアノからスーパーバイクまで、世界一多才で謎の情熱を持つメーカー、ヤマハ発動機の今年のブースは「ヤマハで楽しもう」という直球のテーマを掲げていた。単なる移動手段を超えた、日常を鮮やかに彩る「相棒」としてのモーターサイクルの魅力を存分に伝える空間だ。
今年のブースを象徴していたのは、なんといってもヤマハ発動機創立70周年を記念したアニバーサリーモデルの数々である。伝説的な「白×赤のストロボカラー」を纏った「YZF-R7 70th」をはじめ、R1、R9、R3、R25といったスーパースポーツモデルが伝統のレーシングカラーで集結。特に今年からワールドスーパースポーツへ投入され、いきなりチャンピオンを獲得した「YZF-R9」の堂々たる佇まいは、レースファンの心を強く打つものだった。
また、次世代の技術展示として大きな注目を集めていたのが、クラッチとシフト操作を自動化する革新的なトランスミッション「Y-AMT」である。ブースにはこのシステムを搭載した「TRACER9 GT+ Y-AMT」や「MT-07 Y-AMT」が展示され、技術体感コーナーでは実際にそのスムーズな変速メカニズムをシミュレーションすることができた。マトリクスLEDヘッドランプの技術展示などと合わせ、ヤマハの高度なエンジニアリング力が光る内容だ。
そして、プレスカンファレンスでは日本ロードレース界を揺るがす重大な発表が行われた。長年ヤマハのエースとして君臨し、全日本ロードレース選手権で幾多のタイトルを獲得してきた絶対王者・中須賀克行選手が、2026年シーズンをもって現役を引退することが発表されたのである。ファクトリー体制での鈴鹿8耐参戦と全日本でのラストイヤーに向けた中須賀選手の熱い決意表明は、会場に集まった全てのモータースポーツファンの胸に深く刻まれ、万雷の拍手で包まれた。
その他(ダンロップ、オーリンズ、TAICHI、ワークマン)
車両メーカー以外のブースも、最新のテクノロジーと情熱で満ち溢れていた。ここでは我々の心をくすぐった注目すべき4つのブランドをまとめて紹介しよう。
まず「THE MAX OF DUNLOP」を掲げたダンロップ(住友ゴム工業)ブース。目玉は新発売されたばかりのオフロードアドベンチャータイヤ「TRAILMAX MISSION」だ。オン・オフを問わない高い走破性を誇るこのタイヤを装着したトライアンフのスクランブラーなどが展示された。また、全日本ロードを戦うCBR1000RR-Rの展示や、長島哲太選手を招いたスペシャルトークショーも開催され、レースで培った「性能の頂点」を強くアピールしていた。
サスペンションの最高峰ブランドであるオーリンズ(ラボ・カロッツェリア)は、最新のショックアブソーバー単体に加え、オーリンズを装着して極限までセッティングが詰められた至高のデモ車両を多数展示。機能美の塊とも言えるゴールドのサスペンション群は、見ているだけで我々の所有欲を激しく刺激してくる。
アパレル・ギア関連では、RS TAICHI(アールエスタイチ)が2026年春夏の最新コレクションを一挙公開。中でも注目は、真夏のライディングを劇的に変える水冷式冷却システム「LIQUIDWIND(リキッドウインド)」の新作ベストだ。さらに、次世代のプロテクションギア「T-SABE」の作動デモンストレーションも行われ、安全と快適性を追求する確固たる姿勢を見せつけた。
そして近年、ライダーからの圧倒的な支持を集めるワークマン。最大の話題作は、冷却と温熱を切り替えられる大ヒット商品「ペルチェベスト」の2026年特別モデルである。なんとペルチェデバイスを7つに増設するという狂気じみた(もちろん最大の褒め言葉だ)進化を遂げており、ブースでは実際に試着してその驚異的な温度変化を体感する来場者で溢れかえっていた。過酷な環境を生き抜くライダーの強い味方であることを、エンジニアリングの力で改めて証明していた。
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