デジタルの対極に立つ、英国の魂 モーガンとケータハムが名古屋で問う「運転の真理」

効率と電動化が席巻する時代に、英国の職人たちはクルマの「魂」を守り続ける。ハンドビルドのモーガンと、純粋な走りのケータハム。名古屋に並び立つ二つの哲学は、我々が忘れかけた運転という行為の本質を、静かに、しかし力強く突きつけてくるのだ。


我々のガレージは、いつからこれほど静かになってしまったのだろうか。モーターの静粛性、シームレスな加速、そして運転支援という名の無菌化された快適性。自動車が進化の過程で手に入れたものの多くは、同時に我々から何かを奪っていったのかもしれない。路面からの微細なインフォメーション、ギアを叩き込む骨太な感触、そして自らの意思でマシンをねじ伏せるという、原始的な喜びを。

だが、英国の片田舎、マルヴァーンとダートフォードの工房では、今もなお職人たちが時代に抗うかのように「魂」を持つクルマを創り続けている。モーガンとケータハム。アプローチは違えど、彼らが共有するのは「ドライバーこそが主役である」という、決して揺らぐことのない哲学だ。

きたる11月、Japan Mobility Show Nagoya 2025の会場で、この二つのブランドが隣り合ってブースを構えるという。これは単なる偶然ではない。デジタル化の濁流の中で、アナログなドライビング体験という孤高の頂を目指す者たちが、期せずして同じ場所に集うのは必然と言えよう。さあ、英国スポーツカーの二つの答えを、その目で見届けようではないか。

伝統と革新の融合―モーガンが示す「未来のクラシック」

まず我々を迎えるのは、1909年の創業以来、手作業によるスポーツカー製造を貫くモーガンだ。彼らが名古屋で日本初公開するのは、ブランドの新たなフラッグシップ「MORGAN SUPERSPORT」。その姿は、伝統的なハンドビルドの精神と、次世代への設計思想を見事に融合させた、まさに走る芸術品である。

心臓部には、あのBMW製3.0L直列6気筒ターボエンジンを搭載。軽量なアルミ構造の「CXVプラットフォーム」と組み合わされることで、0-100km/h加速を約3.9秒で駆け抜けるという、現代のトップパフォーマーに比肩する性能を手に入れた。

しかし、その本質はスペックだけでは語れない。アッシュ材を用いた伝統的な木製フレーム構造は健在。優雅な曲線を描くボディパネルは、今も職人の手によって叩き出される。快適性を高めたキャビンや新設計のトランクスペースといった実用性を備えながらも、その佇まいは紛れもないクラシックスポーツカーのそれだ。モーガンはSUPERSPORTで、「過去」を懐かしむのではなく、「未来」においても輝き続けるクラシックの在り方を示している。

純粋なる走りの探求者―ケータハムの「今」


モーガンの隣で対照的な輝きを放つのが、ケータハムだ。「PURE SIMPLE FUN」を哲学とし、コーリン・チャップマンの「軽くあれ」という思想を最も純粋な形で受け継ぐ求道者である。

彼らが展示するのは、ブランドの”いま”を象徴する2台。一台は「SUPER SEVEN 2000」。クラシックなスタイルはそのままに、軽量ボディに2.0L自然吸気エンジンを搭載。日常域での扱いやすさと、クルマを操る純粋な楽しさを両立させたモデルだ。余計な電子デバイスを排したシンプルな構造が、ドライバーとマシンとの間に介在するノイズを消し去り、濃密な対話の時間を与えてくれる。

もう一台は、2026年から開始されるワンメイクレースを見据えた「Seven 170R Cup」。公道を走るモデル以上にすべてを削ぎ落とし、「速く走る」という一点のみに性能を振り切ったマシンだ。これはケータハムのもう一つの顔であり、彼らのルーツがサーキットにあることを雄弁に物語っている。

■「Japan Mobility Show Nagoya 2025」開催概要
開催日時: 2025年11月22日(土)~24日(月・祝) 9:00~18:00
開催会場: ポートメッセなごや(名古屋国際展示場)
出展エリア: 第3展示館(ケータハム / モーガンブース)

君は、どちらのステアリングを握るのか

さて、我々の前に、二つの究極の選択肢が提示された。
BMWのパワーと英国の伝統的クラフトマンシップが融合した、快適性と速さを兼ね備えるグランドツアラー、モーガン SUPERSPORT。
そして、すべてを削ぎ落とし、ドライバーの技量と対峙することを強いる、サーキット直系のピュアスポーツ、ケータハム セブン。

どちらも、クルマがコモディティ化していく現代への、痛烈なアンチテーゼだ。それは、ただの移動手段ではない。人生を豊かにするための、最高のパートナーであり、最高の玩具である。

名古屋の会場でこの2台を前にした時、あなたはどちらのキーを手にしたいと願うだろうか。その答えは、あなた自身のドライビングに対する哲学、そして人生の楽しみ方を映し出す鏡となるはずだ。ぜひその目で、英国職人たちの魂が宿る本物のスポーツカーに触れてみてほしい。そこには、我々が失いかけていた、熱い何かが待っているはずだから。

400号記念:UK400マイルロードトリップ/フェラーリ F80/フェラーリハイパーカー:トップギア・ジャパン 069

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