【試乗】アルファ ロメオ ジュニア:情熱のイタリアンSUVが日本上陸 限定車「Ibrida Speciale」の走りとデザイン

アルファ ロメオから待望の新型コンパクトSUV「ジュニア」が登場。115年の歴史と情熱が宿るデザイン、そしてモーターの力で走りの歓びを増した新世代ハイブリッド。200台限定の「Ibrida Speciale」に試乗し、その実力を都内で徹底検証。これはただのSUVではない。

クラシックCASIOなら公式CASIOオンラインストア
外車限定の車買取サービス【外車バトン】

アルファ ロメオ ジュニア Ibrida Speacile 5,330,000円
いいね!
唯一無二のイタリアンデザインと限定車ならではの特別な内装。低速ではEVのように滑らか、踏めば情熱的に加速する走りの二面性も魅力

イマイチ
グループ共通部品が散見される内装の質感は価格相応か。後席の広さは十分とは言えず、限定車の価格はライバルと比べるとやや強気な設定

2025年、夏の気配が色濃くなってきた東京、お台場。近代的なビル群とレインボーブリッジが織りなす景観の中に、ひときわ鮮烈な一台のコンパクトSUVが静かに佇んでいる。その名は、アルファ ロメオジュニア。単なる新型車ではない。合理性や静粛性がトレンドと化した現代の自動車市場に、イタリアの情熱、官能的な色気、そして「操る快感」という名の「爆弾」を投下すべく現れた存在だ。

アルファ ロメオは、今年で115周年を迎えるミラノ生まれの伝説的ブランドである。その輝かしい歴史の中で、常にレースで勝利し、人々の心を昂ぶらせるクルマを創り出してきた。そして今、かつてジュリエッタやミトを愛したファンを救済し、次世代の「アルフィスタ」を創出するという大きな使命を帯びて、このジュニアが日本の地に降り立ったのだ。

今回ステアリングを握るのは、そのローンチを記念して200台のみが生産される限定車「Junior Ibrida Speciale(ジュニアイブリダスペチアーレ)」。ラインナップの最上位に位置し、ジュニアの持つ魅力を最大限に凝縮した特別なモデルである。その挑戦的な表情と秘められた性能を確かめるべく、走り始めた。

魂を揺さぶるデザイン言語:「必要な美しさ」の哲学
ジュニアを目の前にして、まず心を奪われるのは、その唯一無二のスタイリングだ。これは、トリノのアルファ ロメオチェントロスティーレ(デザインセンター)が情熱を注ぎ込んだ、まさに動く彫刻である。ボディには平らな面が一切なく、光と影が複雑に絡み合い、静止しているにもかかわらず、今にも駆け出しそうな躍動感を生み出している。限定車「Speciale」のフロントマスクには、BEVモデルと同じ「プログレッソ・デザイン」のスクデット(盾グリル)が採用されている。これは、アルファ ロメオの象徴である盾を、未来への移行を表現する大胆なグラフィックで再解釈したもので、伝統と革新が見事に融合している。その両脇で睨みをきかせるのは、特徴的な3x3ライティングシグネチャーを持つLEDマトリクスヘッドライト。ジュニアの「目」として、強い決意を持って前方の路面を捉えるその様は、まさにアルファ ロメオのスポーツスピリットそのものだ。

サイドに回り込むと、コンパクトなボディサイズ(全長4.17m)からは想像できないほどの存在感に圧倒される。限定車に標準装備されるマットブラック&レッドインサートのボディキットが、その引き締まったフォルムを一層スポーティに際立たせている。そして、リアへと視線を移すと、そこにはアルファ ロメオが1960年代に確立したデザイン手法「コーダ・トロンカ」(切り詰められた尾)が見事に再現されている。これは、最高の空力性能と美しさを両立させる「ネチェッサリア・ベルレッツァ(必要な美しさ)」というデザイン哲学の現れであり、歴史的な名車ジュリアTZの面影も感じさせる。リアウィンドウの円形を帯びたデザインや、スクデットを主役とするためにオフセットされたナンバープレートなど、細部に至るまでアルファ ロメオの美学が貫かれている。お台場の洗練された街並みの中で、ジュニアのデザインは決して周囲に埋もれることがない。それは、単に奇抜なのではなく、115年の歴史に裏打ちされた機能美と情熱が、見る者の魂に直接語りかけてくるからだろう。

ドライバーを昂らせる空間:伝統と先進技術が交差するコックピット
重厚なドアを開け、室内に滑り込む。そこに広がるのは、ドライバーを中心に設計された、まさにアルファ ロメオならではの空間だ。まず身体を預けるのは、この限定車「Speciale」のために用意されたサベルト製のスポーツシート。適度な硬さと優れたホールド性で、身体を深く包み込む。その感覚は、まるで身体に合わせて仕立てられたレーシンググローブのようだ、と表現されるのも頷ける。

目の前には、レザーとアルカンターラで仕上げられたステアリングホイールが鎮座する。しっとりとした感触と確かなグリップ感は、これからのドライビングへの期待を否応なく高めてくれる。その奥に配置されるのは、アルファ ロメオ伝統の「カンノキアーレ」(望遠鏡)と呼ばれる、深く奥まった二眼メータークラスターだ。デジタル化された10.25インチのTFTディスプレイは、伝統的なデザインの中にありながら、必要な情報を鮮明に映し出す。

ダッシュボード中央には、同じく10.25インチのタッチスクリーンが配され、インフォテインメントシステムを司る。UKのレポートでは入力に対する反応の遅さが指摘されていたが、実際に操作してみると、ホーム画面はドライバーの好みに合わせてカスタマイズ可能で、主要な機能へのアクセスは直感的だ。何より、頻繁に使う空調コントロールが物理ボタンとして残されている点は、運転中の操作性を考えた良心的な設計と言えるだろう。エアコンの吹き出し口が、幸運のお守りである「クローバーリーフ」の形をしているのも、アルフィスタの心をくすぐる演出だ。

この限定車にはサンルーフも備わっており、都心のビル群を見上げながら走る際には、格別の開放感をもたらしてくれる。夜になれば、メーターやコンソール周辺に配置されたアンビエントライトが、車内を上質な雰囲気で満たしてくれるだろう。

後席スペースは、コンパクトSUVとしては標準的だが、Veloceモデルに採用されているようなバケットシート形状のおかげで、前席下につま先を入れるスペースが確保され、大人が座っても窮屈さは感じにくい。そして、このセクシーなボディからは想像もつかない実用性が、ジュニアのもう一つの魅力だ。ハイブリッドモデルのラゲッジ容量はクラストップレベルの415リットルを確保。これならば、日常の買い物から週末の小旅行まで、あらゆるシーンで頼りになるパートナーとなるだろう。

ハイブリッドの新たな解釈:都市を駆け抜ける官能的な走り
いよいよ、ジュニアの真価を問う時が来た。シフトをDに入れ、お台場の一般道を滑り出す。試乗車はハイブリッドの「Ibrida」。1.2リッターの直列3気筒ターボエンジンに、21kWの電気モーターを内蔵した6速DCTを組み合わせた、新開発の48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載している。

走り出してすぐに気づくのは、その驚くべき静粛性と滑らかさだ。アルファ ロメオが「従来のマイルドハイブリッドとは異なる」と謳う通り、発進時や時速30km以下の低速走行、渋滞時のストップ&ゴーといったシーンでは、エンジンを停止させ、モーターの力だけで走行する。まるでEVのように静かに、そしてスムーズに車体を前に進めるこの感覚は、都会の喧騒の中では非常に洗練された振る舞いに感じられる。モーター走行中であっても、アクセルを離せばクリープ走行を維持してくれるため、違和感も全くない。穏やかな市街地走行では、エンジンが始動する瞬間もほとんど気にならず、エンジンとモーターの連携は極めてシームレスだ。

首都高速の合流車線で、アクセルを深く踏み込んでみる。その瞬間、静寂は破られた。3気筒エンジンが目覚め、モーターが瞬時にブーストをかける。システム合計で145psというスペック以上の力強い加速が、サベルトのシートに身体を押し付けた。これは、単に燃費を稼ぐためのハイブリッドではない。アルファ ロメオの走りのコンセプトを、モーターの力でさらに研ぎ澄ますための新しい選択肢なのだ。可変ジオメトリーターボのおかげで、低回転から高回転までトルクの谷を感じさせず、実に気持ちよく吹け上がる。首都高のカーブ区間に差し掛かる。ステアリングは驚くほどクイックで、わずかな操作にも車体がリニアに反応する。これは、ステランティスグループの共通プラットフォームをベースとしながらも、アルファ ロメオが徹底的に手を入れた証拠だ。足回りは引き締められているが、かつての小型アルファにあったような不快な突き上げ感はなく、路面の凹凸をしなやかにいなす。スポーティさと快適性のバランスが、極めて高い次元で取られているのだ。全車に標準装備されるアダプティブクルーズコントロール(STOP&GO機能付)やレーンキーピングアシストは、高速巡航時の疲労を大幅に軽減してくれる。

パドルシフトを使い、ギアをマニュアルで選択すれば、その楽しさはさらに増す。エンジンの回転数とサウンドを自らの手で操り、コーナーの進入でシフトダウン、脱出に向けてアクセルを開けていく。EVより240kg軽い車体は、鼻先の入りが軽快で、ドライバーの意のままにラインをトレースしていく。これは、効率一辺倒のハイブリッド車では決して味わうことのできない、「人馬一体」の感覚だ。

アルファ ロメオからの挑戦状、そして新たな時代の幕開け
数時間の試乗を終えて、ジュニアというクルマの本質が見えてきた。これは、単に市場の需要に応えたコンパクトSUVではない。アルファ ロメオがその115年の歴史と情熱の全てを注ぎ込み、現代のドライバーに向けて放った挑戦状である。

「ロッソ(情熱)、イタリア(イタリアらしさ)、スポルティーヴォ(スポーティーさ)」を見事に体現したデザイン。ドライバーを昂らせることを第一に考え抜かれたインテリア。そして、効率性とドライビングプレジャーをかつてないレベルで両立させたハイブリッドパワートレイン。その全てが、乗る者の五感を刺激し、日常の移動を特別な体験へと昇華させる力を持っている。

420万円からという戦略的な価格設定は、これまで敷居が高いと感じていた層にも、アルファ ロメオの世界への扉を開くものだ。限定車「Junior Ibrida Speciale」は、その魅力を余すことなく詰め込んだ、まさに究極の仕様と言えるだろう。サベルトのシートに身を委ね、プログレッソ・デザインの盾を正面に据えて都会を駆け抜ける体験は、間違いなくオーナーに特別な満足感を与えてくれるはずだ。

ジュニアは、かつてのジュリエッタやミトのオーナーを呼び戻すだけでなく、新たなアルフィスタを生み出し、日本市場におけるアルファ ロメオの存在感を再び確固たるものにするだろう。東京の街に投下されたこの「情熱の爆弾」は、静かに、しかし確実に、日本の自動車ファンの心に火を点け始めている。

写真:上野和秀、内田俊一

アルファ ロメオ 33 ストラダーレ/ランド ノリス✕R32 東京ナイトドライブ/R35日本取材:トップギア・ジャパン 068
このクルマが気になった方へ
中古車相場をチェックする
ガリバーの中古車探しのエージェント

今の愛車の買取価格を調べる カーセンサーで最大30社から一括査定

新車にリースで乗る 【KINTO】
安心、おトクなマイカーリース「マイカー賃貸カルモ」
年間保険料を見積もる 自動車保険一括見積もり
【tooocycling DVR80】
箱バン.com



トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2025/08/78972/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

トップギア・ジャパン 068

アーカイブ