日本の侘び寂びに通ずるデザイン哲学 ピニンファリーナ バッティスタとB95公開

アウトモビリ ピニンファリーナが、バルケッタモデル初のEVハイパーカー、B95と、初公開となるBattista Cinquantacinque(バッティスタ チンクアンタチンクエ)をイタリア大使館で発表した。ピニンファリーナの侘び寂びに通ずるデザイン哲学とは?

ピュアエレクトリック・ハイパーカーメーカーのアウトモビリ ピニンファリーナは、同社がデザインした 1955 年型 Lancia Florida に着想を得たバッティスタ Cinquantacinque とハイパーカーでは初のバルケッタモデルとなるB95を、日本のイタリア大使館で初公開した。

イタリア駐日大使のジャンルイジ ベネデッティ(Gianluigi BENEDETTI)は、次のように述べた。「イタリアの芸術とデザインはイタリアのソフトパワーの重要な要素です。デザインは芸術の一形態であり、イタリアのデザインは世界的に高く評価されています。ピニンファリーナは95年の歴史の中で、産業生産におけるデザインの重要性を高めました。ニューヨークのモダンアート博物館(MoMA)で展示された最初の自動車がピニンファリーナのデザインによる202 ベルリネッタです。これはデザインとしての評価を示しています。今回のイベントを通じて、イタリア大使館としてイタリアのデザインの重要性を強調したいです」

ピニンファリーナは「ドリームカーを現実に」というスローガンのもと、東京を拠点に世界トップクラスのラグジュアリーおよびハイパーカーブランドを取り扱うSKY GROUPをリテールパートナーとして迎えた。

まず、バッティスタの方から。Battista Cinquantacinqueは初公開となるモデルで、1955年製のランチア フロリダにインスピレーションを得たこのハイパーGT は、見事なデザインと比類のないパフォーマンスを兼ね備えている。エクステリアの美しいブルー サヴォイア グロスとルーフのビアンコ セストリエーレ グロスがコントラストになっており、マットなアノダイズドブラックジュエリーパックが良いアクセントになっている。インテリアには特注のマホガニー(ポルトローナ・フラウ・ヘリテージ・レザー)があしらわれている。Cinquantacinqueには、そのヘリテージと起源を表すユニークな文字を所々に見ることができる。助手席のドアプレートと可変リアウイングの下側に、Cinquantacinque 55の文字が刻まれている。

バッティスタは4基の独立した電気モーターと120kWh の強力なリチウムイオンバッテリーによって駆動され、最高出力1,900hp、最大トルク 2,340Nmを発揮。0-100 km/h加速1.86秒、0-200 km/h加速4.75 秒という驚異的なパフォーマンスを持ちながらも476 kmもの充分な最大航続距離を実現している。

もう一台は、B95だ。世界初のフル EV ハイパーバルケッタとして、そしてピニンファリーナによる初のコーチビルドカーとして、B95はアジアでのデビューを飾った。フルEVハイパーカーのオープントップモデルであるバルケッタをアジア市場に投入することは、グローバルな展開を視野に入れ、ビスポークされたハイパーカーをデリバリーすること、世界の最先端をゆく極めてまれな体験をお届けするというAutomobili Pininfarina の取り組みを意味している。こちらは、発表当時440万ユーロ(7億円)の値がつけられたが、10台に限定車は完売しているという。だが、今回の日本での発表を契機に、今後もピニンファリーナのハイパーカーが続々登場し、アジアでも入手しやすい状況となることが期待される。

オープントップモデルの流れるようなボディーラインのシンプルさと細部にわたる精密なテクロノジーの見事な組み合わせは、クラッシックレーシングカーをピュアEVという技術によって現代に蘇らせたと言っても良いかもしれない。

Automobili Pininfarina の CEO であるPaolo Dellachàは次のように話している。
「日本市場への参入は、Automobili Pininfarina にとって、世界的な事業展開を続けていく上で非常に刺激的な一歩となります。日本は自動車文化の豊かな国で、芸術性、性能、革新性を重んじる見識の高い顧客層が多い国として知られています。我々は、こうした新たなお客様に対して、イタリアのクラフツマンシップと、それぞれのオーナーの個性をユニークに表現する、Automobili Pininfarina の一台一台に込められたエンジニアリングの卓越性を高く評価していただけると確信しています」

2023年、Battistaと B95に加え、Automobili Pininfarina は画期的なデザインコンセプトとして PURA Vision を発表した。PURA Vision は、同社の未来へのビジョンであり、PURA デザインフィロソフィーを具現化したもので、過去の名車から得たアイデアを近未来的な要素と調和させながら、同社のアイコニックなモデルの持つ DNA を、未来へと昇華させるという原則を意味している。

チーフ デザイン オフィサーのデイブ アマンテア氏に伺った。

―他の高級ブランドや他の車と比べて、ピニンファリーナの車のデザインの最大の違いは何だと思いますか?

ピニンファリーナは王者と呼ばれるべきだと思います。なぜならフェラーリ、マセラティ、ランチア、アルファ ロメオ、ジャガー、ロールス・ロイスなど、誰もが名を挙げられるようなブランドの車をデザインしていたからです。私たちの違いは、多くのブランドのためにタイムレスなデザインを生み出す大きな文化と理解があることです。95年間培ってきた知識を活かし、今回は自分たちのために使うことにしました。だからこそ、顧客に分かりやすい方法でデザイン戦略を説明できるのです。

私は各車を橋だと定義しています。バティスタは過去から現在へとつながる橋です。顧客がフェラーリ、ジャガー、アルファロメオ、ランチアを思い出せるように、意図的にデザインされています。しかし、その中においては、際立つ自分たちの道を定義しなければなりません。そしてバティスタがそれにあたります。間違いなくイタリア的で、美しいのです。デザインと機能の概念が組み合わさっているからです。そして、エアロダイナミクスやパフォーマンスと美しさがうまく溶け込んでいるのです。

そしてもちろん、ピニンファリーナの車にしか無い際立ったイタリアの趣があります。だからこそ、オークションで億の価値がある車の多くがピニンファリーナなのです。タイムレスで、簡潔で、統一感があり、エレガントです。

ピニンファリーナのクルマは、絶対に古くはならないのです。1ヶ月や1年、5年で古びるようには設計されていません。永遠に最高のままでいられるよう設計されているのです。一例として、本物の素材を使っています。プラスチックのボタンはありません。アルミ製のボタンです。なぜなら、より永続的だからです。

私たちは単なる車を作ったのではありません。ピニンファリーナの歴史に顧客が参加する機会を作ったのです。バティスタを所有すれば、1930年からピニンファリーナが自動車メーカーになるまでの歩みの象徴、画期的な節目を所有することになります。使用技術や競合他社との違いは関係ありません。バティスタは唯一無二なのです。定義上、ボンネットの正面にPのエンブレムがあるピニンファリーナ初の車なのです。サイドではありません。つまり、私たちの創設者の夢の実現を永久に体現しているのです。だからこそ唯一無二なのです。単なるモデルチェンジの車とは全く異なります。

実際、これまでコラボレーションしてきた自動車メーカーも、ピニンファリーナのデザインを思い出させる素晴らしいデザインの車を作っていると言えます。今回は私たち自身が、私たちの遺産、歴史、コンピテンス、情熱を活かして、顧客のためのコレクター向けの逸品を生み出そうとしているのです。

そして顧客に対する私たちの約束は、非常に強力なシャシーのバティスタを手に入れられるということです。私たちは最も強力でエレガントな永遠に残る車を創り上げました。おそらく10年後、20年後にコンコルソ デレガンツァで賞を受賞するかもしれません。

さらに、バティスタのコレクションの中には間違いなく、顧客同士の一種のコンテストが今後生まれるでしょう。顧客は「イタリアに行って、デイブに会い、彼と一緒にたくさんのワインを飲み、デザインについて議論しました。彼は家族を紹介してくれました。妻と娘も一緒に。そして私たちは友人になったのです」と言うでしょうね。

そして私はこう言います。「あなた様は単なる顧客としてではなく、洗練されたスポーティな車を求めている人であるのだと、より良く理解できるようになりました。金持ちであることをことさらアピールしたいわけではなく、過剰にはなりたくないのです。そうやって一緒にチームでカスタマイズした車が、顧客の個性を反映するようになりました」

それをすれば、まっすぐ顧客の心に届きます。そして顧客は永遠に、なぜその車を購入したのか、どのように設定されていたのか、細部までを覚えているはずです。なぜその革の色を選んだのか、ステッチをなぜ選んだのか、誰がその色を提案したのかを知っているからです。

多くのコレクターは「注文したこのクルマの色は何でしたっけ?」と私たちに尋ね、そして妻に「あの色は何でしたっけ?」と聞きます。しかし、ほとんどの場合「覚えていないわよ、いつも赤でしょ、いつも黄色でしょ」と言われます。そこには魂がありません。だからこそピニンファリーナのデザインは唯一無二でなければならないのです。それぞれのバティスタが一台ずつ異なる傑作となるよう作られています。

私がデザインを導く際の中心哲学の1つであり、本当に信じている原則が「不完全な美しさ」というものです。日本語には「侘び寂び」という言葉があり、こちらも不完全な美しさを指します。これは、ピニンファリーナが唯一無二である理由をまさに表した概念です。私たちは単なる完璧さを目指すのではなく、そこから飽きが生まれるのを避けたいのです。際立ちたいが、同時にバティスタ同士の小さな違いさえも認識されるようにしたい。なぜなら、人間がアルミニウムを手作業で成形できるからです。ロボットなら全ての細部が同じになってしまいます。それでは傑作とは言えません。それは工業製品に過ぎませんから。そういったものには、ピニンファリーナのデザインレベルとは別の領域があります。

日本の「侘び寂び」はまさにその哲学です。日本人は侘び寂びを明確に理解していますね。私はチームにそれを教え込み、それを信じ、他社とは違う車を創る勇気を持つよう促しています。もちろん、単にフェラーリを真似するつもりはありません。

この会社は他の自動車メーカー向けに多くの製品をデザインしてきたので、特定のランチアモデルやフェラーリを見れば、「あぁ、これはピニンファリーナのデザインだ」とすぐに分かるはずです。

―ピニンファリーナのデザインだと感じさせるものは、どこにあるのでしょうか?

シンプルさの美しさが第一の要素です。簡素なボディラインです。光の反射を制御しているので、ボディに光の高低があります。光の反射を制御することで、車から人へと感情を伝えることができるのです。人間が理解できるのは光の高低なのです。だから光の高低を制御すれば、例えばドアの部分には、「ハイパーループ」と呼ぶラインがあります。

これを実現するには、車体を彫刻のように造形し、見る必要があります。心の底からくる感情を求めているのです。ボディだけではありません。単なる計算と精度の問題ではありません。感情の精度なのです。これがピニンファリーナデザインの定義です。一目見れば、首を縦に振らずにはいられない、確かにイタリア的デザインで、ほとんどの場合ピニンファリーナだと分かるのです。

結局のところ、私たち自身のアイデンティティを創り始めたばかりなのです。昨年、3台の車をいっしょに発表ました。最初の量産車をビジョンコンセプトカーとともにデザインしました。普通は違いますよね。最初にコンセプトカーが出て、次に量産車が出ます。

私たちはワイルドな方法を選びました。経験に基づくタイムレスデザインを生み出し、私たちの力を示すためです。量産車を最初に披露し、その後ビジョンを示しました。ピュアビジョンを披露した時、人々は「2019年にバティスタを買いました。そして、2023年になって、未来のビジョンを見ました」と言った。2019年発表で、2023年には顧客やファンと家族的な雰囲気があったのです。バティスタはすでにアイコンなのです。

これは本当に私個人の意見ですが、人間が何かを愛している限り、自然の美しさを否定する必要はないと本当に信じています。自然は自然のままです。好きか嫌いかは別として。何か意図的にそのようにデザインされている理由があるのです。だからこそ、テクノロジーが変わっても、美の原理は変わらないと言うのです。

他のブランドが「電気自動車だから野性的でなければならない。車は全く異なる存在でなくてはならない。空力的に鋭くあるべきだ」と言うのが気に入りません。それは、事実ではありません。この車は最先端の空力設計で、とてもセクシーでスムーズなデザインです。私たちにはそれができるのです。伝統に根ざしながら、未来への解釈を加えることで、これからも特別なものを生み出せるでしょう。

―お気に入りのピニンファリーナデザインは何ですか?

素直に言えば、フェラーリ 250ショートホイールベース、1959年のものです。かわいらしいですね。スーパースリークでキャビンの情動的なバランス、長いフロントフェンダー、超セクシーなボディタイプです。コンパクトさがよくわかります。写真ではわかりません。あのクルマはスポーティで上品なのです。

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