4.6億円のT50S ニキラウダはゴードン マレーの究極のサーキット専用スーパーカー

2月22日は、3度のF1ワールドチャンピオンである、ニキ ラウダの72歳の誕生日だった。この世にラウダはもういないけれど。だが、ブラバムのチームメイト、ゴードン マレーは 惜しまれつつあるラウダへのオマージュを明らかにした。彼の究極のスーパーカーは、これで11台。そしてこれが最新の作品、GMA T50S ニキラウダだ。

これは簡単に言うと、T50スーパーカーのサーキット専用バージョンだ。たった25台しか生産されない。軽くて、大きくて、速くて、ダウンフォースに飢えていて、「標準」のクルマに比べて、100%道路での合法性が低い。ここを読んでいるあなたならきっと、マクラーレン P1 GTRやフェラーリ FXXKの同類だということで、この話題を聞いたことがあると思う。

しかし、ゴードンはあなたが間違っていると言う。310万ポンド(4.6億円)のT50Sは、単なるボルトオンのスリック&ウイングの仕事よりもはるかに意義のあるものだから。カミソリのように尖ったフィンの名前をつけるためには、そうでなければならなかった。どうやらそれはマクラーレン セナを狙ったものではないようである。

まずはエンジンから始めようか?マレー教授がどれだけ執拗に細部にまでこだわっているかを示すもので、レギュラーT50の記録を更新してしまう、このコスワースV12は、耳をつんざくような特別なものではないと判断されたのだ。もちろん、サーキットモンスターという存在としては、っていう意味でね。いやむしろ、このバージョンでは、ストリートカーでは許されていないようなことをやってのけることができるんだから…。

3.9リッターV型12気筒は、ストリート仕様よりも16kg軽量化され、12,100rpmまでの高速回転と、シリンダーヘッド、カムシャフト、圧縮比の向上により、725hpを発揮するようになった。これは、ストリート仕様から75hp増加したことになる。

RAMインダクションのルーフスクープと12個のスロットルボディから吸い込み、サイレンサーをほとんど使用していない薄肉のインコネルエキゾーストから吐き出す音は、マレーとラウダが世界チャンピオンに輝いていた時代のF1マシンに匹敵するだろう。想像できる?

より多くのパワーは、より重量を減らすことでもたらされる。助手席の右側シート(右利き用のコントロールバンクに交換可能)、厄介な防音対策、インフォテインメントシステムなどを省いたことで、マレーは軽量化との戦いを続けている。イギリスの新しいトラックデイの日が訪れた際には必需品となるであろうこのクルマの重量は、ロードカーよりも134kgも軽い852kg。感動して涙が出てきちゃったよ。

ざっと、こんな感じ。12気筒エンジンを搭載しているにもかかわらず、弾丸のように速いポルシェ 911 ターボ Sの半分強の重さだ。それで、さらに75hpをゲットしてるんだから。「やっちまったなぁ~」くらいじゃ済まないね。

まさに「徹底した」という言葉が頭に浮かぶ。ゴードンはこの限定モデルのためにカーボンモノコックシャシーを見直しただけでなく、「S」にはまったく新しいトランスミッションを搭載している。マニュアルは廃止され、6速のXtracが導入された。6速Xtracのパドルシフト式シーケンシャルボックスは、時速321-338km/hの間でマシンの限界速度を出せるようなギアを搭載している。

小型のゴーカート用とでも言うべき短いスタックレシオながら、スペックシート上の最高速はわずか274km/hだ。ハードウェアはヘッドライトとブレーキだけが変更されていない。トレードマークのファンも、T50と同じサイズではあるが、現在は7,000rpmの「ハイ・ダウンフォース」モードでしか作動しない。

奇妙なことに、マレーはこの武器クラスのユニコーンは、純粋なラップタイムモンスターではないと主張している。公道走行可能なT50が、数字を誇示することよりも、究極のドライビング・センセーションを目指しているように、「S」は親しみやすいようにデザインされている。言うなれば、数学の試験ではなく、サーキットドライビングへのラブレターといったところか。

え?信じられない?君はあの巨大なウイングを見て、これがただのストップウォッチマニア向けだと判断したってことだよね?じゃあ、ちょっとした話をしよう。

コンピューターテストの最中、新しいスプリッター、フィン、サイドダクト、巨大なディフューザー、リアウイングを考案したチームは、このクルマが1,900kgのダウンフォースを生み出すことができると計算した。

これではステアリングやサスペンション、マシンの俊敏性に影響が出るため、ゴードンはダウンフォースをわずか1,500kgに抑えることにした。それさえも完全に調整可能なことである。今は見せびらかしているだけなのだ。

ピットクルーは必要ないだろう。25人の幸運なオーナーを元気づけるためにも…最小限の水洗車で済むように工夫されている。フェラーリ 599XXとは違い、クルマは工場で保管するんじゃなくて、自分のガレージで保管できるし。なんて親切なんだ。

社長自身も言っていた。「T50S ニキラウダは生活しやすく、楽しみやすいクルマだということが、私にとっては不可欠でした。このクルマを所有するのはあなたで、どこで、いつ、どこで楽しむかは完全に自分でコントロールすることができます。私のビジョンは、オーナーがサーキットでタイヤの空気圧をチェックして、乗り込んで、エンジンをかけて、楽しむことです。それが本来あるべき姿なのですから」

エンジニアリング的な完璧さと、哀愁漂うノスタルジーの融合が素敵だよね。25台のT50Sのシャシーにはそれぞれ、ゴードン マレーがさまざまなサーキットでグランプリを制したことにちなんだ名前が付けられる。

そのため、最初のマシンは、ゴードンの母国、南アフリカでのグランプリデビュー戦での勝利にちなんだ「キャラミ」となるんだ。必然的に、他の24台のうちの1台は1978年のスウェーデン GPに敬意を表したものになるだろう。

誕生日おめでとう、ニキ。今ごろきっと、マレーの見事な12,100回転の記念碑を、天国で認めているはずだよ。

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