メルセデスAMGが、4.0リッターV8ツインターボを後輪のみで駆動する655psのスーパークーペ「CLE 646 Spezialanfertigung」を突如発表した。生産台数はわずか30台ですでに完売。「マスタング GTD」や「911 GT3」を仮想敵とする本格的なモータースポーツ改修が施されているが、なぜか栄光の「ブラックシリーズ」を名乗ることはない。価格は1.8億円超とも噂される、この不可解なコレクターズアイテムの真意を探る。
C63が帰ってきた。ツインターボV8を引っ提げて。ただし、いくつかの条件付きだ。実際のところ、かなり多くの条件がある。特に重要なのは、たった30台しか生産されず、すでに完売しており、そしてジンデルフィンゲン(メルセデス・ベンツの主要工場がある街)周辺で最もバカバカしい名前が付けられていることだ。
紹介しよう、メルセデス・AMG CLE 646 Spezialanfertigung(シュペツィアルアンフェルティグング)だ。いやドイツよ、君たちの言語はイタリア語ほど美しくはないし、そう、これが正真正銘の正式名称なのだ。「なぜ『ブラックシリーズ』じゃないんだ?」と疑問に思うかもしれない。それはいい名前だ。ちゃんとしたメルセデスとしての意味と響きを持った名前だ。我々もそう思っている。
このCLE 646(以降はコメディ効果を狙って『Spezialanfertigung』とだけ呼ぶことにする)は、メルセデスがコレクター向けに特化した「Mythos(ミトス)」シリーズの第2弾モデルである。第1弾は2年前に発表された「PureSpeed(ピュアスピード)」。ルーフもフロントガラスもなく、593psを発生する800,000ポンド(1.7億円)のSLだった。250台が生産された。フェラーリ モンツァと同じような妥協を強いられるくせに、華やかさははるかに劣る、廉価版モンツァのような車だ。売るのはさぞ大変だったろうと思うかもしれない。
だが今回のモデルは、その名前にもかかわらず、飛ぶように売れるはずだ。これこそ、我々が何年もの間待ち望んでいたAMGのテンプレート(ひな形)である。4.0リッターのツインターボV8エンジンが655psと843Nmを叩き出し、そのすべてを後輪だけへと送り込む。CLE 53をベースに、補強し、拡幅し、車高を下げ、本格的なモータースポーツ仕様の改造が施されている。フォードの「マスタング GTD」を思い浮かべてほしい。それなのに、たった30台しか生産されないのだ。価格は発表されていないし、おそらく今後も発表されないだろう(※注釈:一部報道では100万ユーロ、1.8億円超とも噂されている)。
これらが主なトピックだが、もう少し詳細に踏み込んでみよう。搭載されるV8は、メルセデスの最新型M177 Evo「ホットV(Vバンク間にターボを配置するレイアウト)」エンジンで、フラットプレーンクランク(V8特有のドロドロ音ではなく、高回転域まで鋭く吹け上がる乾いたサウンドが特徴のクランクシャフト形状)を採用している。おそらく、あなたが期待するような不規則でドロドロとした喉鳴りはしないだろうが、4気筒のプラグインハイブリッドよりははるかにマシな音がするはずだ。
トランスミッションは9速MCT(マルチクラッチ・テクノロジー)、そしてリアの左右輪へトルクを配分する電子制御LSD(e-diff)が備わる。四輪駆動(4WD)ではないため、ゼロ発進はそれほど速くない。0-100km/h加速は3.9秒、0-200km/h加速は11.4秒だ(ちなみにマスタング GTDはそれぞれ約3.5秒と10.0秒である)。最高速度は311km/hに達する。
メルセデスは170kgの軽量化を果たしたと主張しているが、それでも車重は1,895kgある。マスタングよりは軽いが、標準的なポルシェ 911 GT3に比べると400kg以上も重い。AMGが認めるかどうかにかかわらず、これらが「Speciousfartygang(※Spezialanfertigungを文字った悪ふざけの造語)」の最も直接的なライバルとなる。
ライバルたちと同様、これもサーキットに焦点を当てたマシンだ。車高調整式のサスペンションはKW社との共同開発によるもので、4ウェイの減衰力調整式ダンパーを備えている。フロントには420mmのディスクを6ピストンキャリパーで締め付けるカーボンセラミックブレーキが奢られ、車高はフロントで22mm、リアで16mmローダウンされている。そしてボディワークは…大いに「強化」されている。
通常のCLEクーペの全幅は1,861mmだ。AMG CLE 53はフェンダーを膨らませて1,935mmになっている。今回はそこからさらに52mm追加されている。ボンネット、トランクリッド、サイドシル、ルーフ、フロントフェンダーを含むボディワークの大半は、カーボンファイバー製に変更された。その巨大なフロントアーチの中には、305/30 ZR20という極太タイヤが収まり、リアに至っては335幅だ。空気を吸い込み、排出するためのダクトが設けられ、フロントスプリッターとリアウィングは角度調整が可能、リアのグラスエリアはポリカーボネート(軽量な樹脂)製となっている。
室内にはロールケージ、レーシングバケットシート、9段階のトラクションコントロール、そしてカーボンドアパネルが装備される。リアシート、遮音材、パーキングセンサーはゴミ箱行きだ。バックする時はカーボンをぶつけないように気をつけてほしい。インフォテインメントや運転支援システムも削減されているが、これに車線逸脱警告や速度制限警告の廃止が含まれているかどうかはまだ不明だ。
しかし、全体として見ると、フォードがマルチマティック社と共同でマスタングに施した「GTD」の改造ほど、極端で練り込まれたものには見えない。マスタング GTDは、完全に新設計のリアサブフレームを採用し、ギアボックスを車体後部へ移設(トランスアクスル化)し、インボード式サスペンション(プッシュロッド式)まで備えていた。フォードはポルシェ 911 GT3 RSを本気で打ち負かそうとしていたのだ。
メルセデスはもっと慎重だ。たしかにサーキット専用車だが、AMG GT ブラックシリーズほど過激ではない。ましてやマスタング GTDや911 GT3 RSには遠く及ばない。結果として、この車には、筋肉質で轟音を轟かせる公道のロケットであること以外に、特定の目的や役割が見当たらないように感じられる。別にそれが悪いと言っているわけではない。ブラックシリーズとは常にそういうものだったのだから。それなら、なぜもう少し生産台数を増やして、「ブラックシリーズ」と名乗らないのだろうか?我々から見れば、これは機会損失に思えてならない。
今のところ、我々はメルセデスの担当者に質問をぶつけることができていない。一体何が起きているのか、なぜこれがブラックシリーズではないのか、どうやってCLEにV8をねじ込んだのか、なぜこんなに生産台数が少ないのか、そしてこれが将来のAMG市販モデルに何を(もしあるとすればだが)意味するのか。近いうちに必ず聞いてみるつもりだ。そして実際に運転してみれば、もう少し光明が見えてくることを期待している。
現時点で我々が推測できるのは、AMGは我々が望むものを提供する能力を持っているにもかかわらず、ひどく意地悪をしているか、あるいは排ガス規制によって手足を縛られているかのどちらかだということだ。いずれにせよ、我々は中古のC63クーペ(V8搭載の旧型)をじっくり探しに行くことにしよう。
=海外の反応=
「諸君、これは間違いなく、血の気が引くほど悪趣味な車だよ」
↑「メルセデスは自分たちのクソみたいなデザイン言語を早急にどうにかするべきだ。もはや彼らは、まともな見た目の車を一台たりとも作れていない」
↑「悪いけど、『もう全部売り切れました。でも気にしないでください、どうせあなたがお金を持っていても売りませんから』的な車は、もうウンザリなんだよ。夢にも出てこないね。どうせ誰も運転しないんだから、気にする必要もないだろ」
↑「↑それな」
↑「笑。ボディの下にカラフルなネオン管でも仕込んでそうな見た目だな」
↑「神よ、こんなの買うのアメリカ人くらいだろ…」
↑「↑アメリカ人しか買えないんだよ」
↑「30台しか作らないのは良いことだ。それでも30台多すぎるがな。何かコメントしようと思ったけど、吐き気がして言葉が出ないわ」
↑「ただのノーマルのアウディ RS3に信号ダッシュで負けるような車に、ずいぶんと安っぽいドラマをまとわせたもんだ」
↑「昔のメルセデスは、750psのV8を積んだFRで、トランスアクスル方式を採用し、車重は1600kg台、実際に世界中のサーキットでGT2 RSやSF90より速いスピードマシン(※AMG GT ブラックシリーズなどを指す)を作ってたんだよな。それが今じゃ、1900kgで655psの鉄の塊を作って、何か画期的なブレイクスルーみたいに自慢してるんだから世話ないぜ」



