【試乗】ボルボ EX90:680psの心臓と静寂のキャビン。北欧流フラッグシップBEVの真価を問う

ボルボの新たなフラッグシップとなる3列シートのバッテリーEV(BEV)SUV「EX90」。106kWhの大容量バッテリーを搭載し、航続距離650kmを誇るこの意欲作で、総走行距離420kmに及ぶロングランテストを敢行。市街地から高速道路、ワインディングまで、多彩なシーンでその実力を徹底検証する。


今年7月、ボルボ・カー・ジャパンは新たなフラッグシップSUV「EX90」と個性を表現するフラッグシップ クロスオーバー「ES90」、2台のバッテリー電気自動車(BEV)を発表した。今回、EX90をロングランで試乗する機会を得たので、その印象を報告しておこう。

その前に、EX90の簡単なプロフィールを紹介しておこう。これまでのフラッグシップSUVであるXC90の後継(とはいえ、当面はXC90も継続で併売される)として登場したBEVのSUVだ。3列7人乗りというシートレイアウトはXC90と同様だが、パワートレーンは800Vテクノロジーを搭載し、106kWhという大容量バッテリーで前後の2モーターを駆動する電動4WDだ。今回の試乗車でトップグレードとなるツインモーター パフォーマンスは、システム総合で500kW(680ps)と870Nmを発生し、0→100km/h加速は4.2秒を誇る。

試乗日は梅雨明け前だが好天に恵まれ、東京・青山のボルボスタジオ東京を起点に、首都高速〜東北自動車道〜日光宇都宮道路〜いろは坂を経由して中禅寺湖畔へ。ランチの後、中禅寺湖周辺で撮影を済ませ、帰路は国道120号線〜関越自動車道〜首都高速を経由してボルボスタジオ東京へと戻る。走行距離は約420km、日帰りのメディア試乗会としてはなかなかのロングランだ。EX90の走行可能距離はWLTCモードで650km。夏場の試乗だからエアコンは入れっぱなしで渋滞もありそう。はたして充電せずに走破できるのか。これも気になるところだ。

さて、EX90は発表会で実車を見ていたが、公道上であらためて見ると、その存在感は大きい。全長は5mオーバー、全幅も2m近くと堂々たるサイズのSUVだが、他のボルボ車同様に変な威圧感はない。フラッシュサーフェス デザインの導入により、ボルボのフラッグシップSUVらしい自信に満ちた存在感と先進性を感じさせる。前述のXC90より全長はわずかに長く、全高はわずかに低いものの、全幅はほぼ同じ。ホイールベースも同寸だ。

インテリアは、ボルボのフラッグシップSUVらしい上質な素材とプレミアムなデザインにより、北欧のプライベートラウンジのような空間が展開している。ハンドルの向こうには9インチのドライバーディスプレイとヘッドアップディスプレイ、インパネ中央には縦型14.5インチのセンターディスプレイが備わり、ロングツーリングを快適に過ごさせてくれそうなコクピットだ。

車内に乗り込み、ブレーキペダルを踏みながらステアリングコラム右のATセレクターをDに入れてアクセルペダルを軽く踏めば、システムがシームレスに立ち上がりスッと発進する。乗り出しての最初の印象は、とにかく静かなこと。街中では2m近い横幅が気になるが、アイポイントが高く視界が良いので運転はしやすい。ブレーキの回生モードを強くしておけば、いわゆるワンペダル走行も可能だ。

首都高速を経て高速道路に入ると、EX90はさらにその真価を発揮する。ATセレクターをもう一段下げると「パイロットアシスト(車線維持支援機能)」が作動する。ハンドルは静電式だから軽く手を触れていれば、快適なハイウエイクルージングを楽しめる。22インチの低偏平タイヤを履きながら、エアサスの効果もあってか乗り心地は抜群。室内の静けさも変わらない。

いろは坂の上りのワインディングロードも、2.7トンを超える車両重量を感じさせない加速でグイグイと上っていく。さすがはシステム総合680psのハイパワーだ。それゆえ、意図してアクセルペダルを踏み込めば強烈な加速を見せるため、いろは坂のようなワインディングロードではワンペダル走行のほうが、アクセルペダルを戻しただけで適度に減速してくれて走りやすい。これは下り坂のコーナリングなどでも効果的だ。

帰路の関越道・赤城高原SAに着いたところで、バッテリーの残量は42%、航続可能距離は220km。充電しなくても青山までたどり着けそうだったが、ここには150kWの高速充電器が備わっているので、CHAdeMOの急速充電を試してみた。約20分の充電で77%、航続可能距離は370kmになった。帰路も往路同様に快適なクルージングを楽しみ、首都高速を経由してボルボスタジオ東京に帰着。到着時のバッテリー残量は50%だったから、充電しなくても残り15%で戻れたことになる。大容量バッテリーを搭載したハイウエイクルーザーならではの足の長さだ。

ドライバーの状況を把握して適度なサポートを行う「ドライバー アンダスタンディング システム」は、運転中にセンターディスプレイを操作しているとセンシングが過敏で「運転に集中してください」とすぐに警告してきたり、Bluetooth経由でのスマートフォンとの接続が不安定になる場面があったりといった点は気になったが、EX90はボルボ初のソフトウエア デファインド ビークル(SDV)でもあるから、いずれアップデートされるだろう。

2026年上半期(1月〜6月)に日本で販売されたボルボ車の23.5%、つまり約5台に1台がBEVだったという。そして、EX90の価格(税込)は1199万円〜1399万円と、XC90 PHEVの1294万円と比べても抑えめの価格設定とした。「電気自動車をより自然な選択肢に」を目指すボルボ。このEX90とES90の導入で、その比率はさらに高まるのか、今後に注目していきたい。(文:篠原 政明/写真:原アキラ、ほか)

■ ボルボ EX90 ウルトラ ツインモーター パフォーマンス 主要諸元
●全長×全幅×全高:5035×1965×1740mm
●ホイールベース:2985mm
●車両重量:2,710kg
●モーター:交流同期電動機×2
●最高出力:前220kW(299ps)、後280kW(381ps)
●最大トルク:前390Nm、後480Nm
●システム総合出力:500kW(680ps)
●システム総合トルク:870Nm
●バッテリー総電力量:106kWh
●WLTCモード航続距離:650km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:前265/40R22、後295/35R22
●車両価格(税込):1,399万円

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