【2026 フォーミュラE 東京】ティクタムの奇跡とデ フリースの復権!波乱の第14・15戦を徹底レビュー

2026年、フォーミュラEが再び東京を占拠した。初のナイトレースと予測不能な天候に見舞われた第14・15戦は、まさに波乱の連続。ティクタムの劇的逆転劇から、デ フリースの復活、そしてシトロエン レーシングの涙まで。ロンドン最終戦を前に混沌極まる東京E-Prixの全貌を、トップギア流のシニカルかつ偏愛に満ちた視点でお届けする。


東京の夜を切り裂く、高電圧のラジコンカーたち

巨大な怪獣が海から上陸してきそうな東京の夜景をバックに、22台の「超高額でバカみたいに速いラジコンカー」が甲高いモーター音を響かせて疾走する。2026年、ABB FIA フォーミュラE世界選手権は再びここ日本・東京へと舞い戻ってきた。しかも今回は史上初となるナイトレースを含む、第14戦と第15戦のダブルヘッダーである。内燃機関の咆哮(ほうこう)がないモータースポーツなんて、無糖のコーラみたいなものだと言う古き良きクルマ好きもいるだろう。だが、ストリートという極めて窮屈な檻の中にこれだけの猛獣を放てば、そこには必然的にカオスが生まれる。今回の東京E-Prixは、まさに我々がフォーミュラEに期待する「狂気」と「予測不能」がすべて詰まった週末となった。

第14戦:スマホのバッテリー残量1%で挑むデスマッチ

フォーミュラEの面白さであり、同時にドライバーたちを最もイラつかせる要素が「エネルギーマネジメント」だ。これは要するに、電子レンジとテレビとヘアドライヤーを1つの延長コードで同時に使いながら、ブレーカーが落ちないように祈るようなものである。土曜日の夜に行われた第14戦では、まさにこの「バッテリー残量」が勝敗を分けた。

レースを制したのは、普段は何かと物議を醸す言動で我々メディアを楽しませてくれるダン ティクタム(クプラ キロ)である。予選6番手からスタートした彼は、序盤からピットブーストやアタックモードを巧みに使いこなし、実質的なリーダーへと這い上がった。一方、タイトルを狙うジェイク デニス(アンドレッティ)も負けてはいない。29周目には50kWの四輪駆動ブーストという、まるでマリオカートのキノコのような代物を使ってトップを奪い返した。

しかし、勝負の神様は極めてシニカルだった。最終ラップの最終コーナー手前、デニスのマシンは無情にもエネルギー切れ寸前となり、生き残るためにオートカットが作動。彼はいわゆる「航続距離への不安(レンジアングザエティ)」に屈し、アクセルを緩めるしかなかったのだ。その隙をティクタムが見逃すはずがない。彼はデニスを鮮やかにオーバーテイクし、トップチェッカーを受けた。ティクタムはレース後、「僕は来季の所属先が決まっていないフリーエージェントだ。フォーミュラEに残るべきだと証明するために、これ以上何をすればいいのか分からない」と、最高にトップギアらしい、皮肉と自信に満ちたアピールを残している。一方のデニスも、あわや大クラッシュという事態を避けつつ2位を死守し、ポイントを稼いだことは称賛に値するだろう。

第15戦:F1の落とし子が見せた意地と、大英帝国特有の天候

明けて日曜日の第15戦。東京の空はなぜかイギリスの夏のような気まぐれを起こし、激しい雨の後に路面が徐々に乾いていくという、エンジニアを泣かせるコンディションを作り出した。

ここで輝きを放ったのが、かつてF1の世界で冷酷にシートを奪われた男、ニック デ フリース(マヒンドラ フォーミュラEチーム)だ。マヒンドラ陣営は路面が乾くことを見越したドライ用のセットアップというギャンブルに出たが、これが完璧に的中。5番手からスタートしたデ フリースは、まるで氷の上を歩くバンビのように滑るライバルたちを尻目に、絶妙なタイミングでアタックモードを発動させ、見事に優勝をかっさらった。これは彼にとっても、チームにとっても今季2勝目となる歓喜の瞬間であった。

そして、この第15戦で最も頭のネジが外れていた(もちろん褒め言葉だ)のがジェイク デニスである。彼はなんと18番手という絶望的なグリッドからスタートしたにもかかわらず、怒涛のオーバーテイクショーを展開し、3位表彰台をもぎ取ったのだ。彼自身が「300kWでも非常に速く、350kWでは優勝を狙える状態だった」と豪語するように、その走りは圧巻だった。この結果、ランキング首位だったパスカル ウェーレイン(ポルシェ フォーミュラEチーム)やミッチ エヴァンス(ジャガーTCS レーシング)が揃ってノーポイントで終わるという波乱もあり、デニスが堂々のドライバーズランキング首位に躍り出た。

シトロエン レーシングとDS ペンスキーの戦い:悲しみと誇りの狭間で

さて、ここでフランスの血を引く2つの陣営、シトロエン レーシングとDS ペンスキーの週末について触れておかなければならない。我々が手にした公式リザルトを紐解くと、彼らの地道で、そして極めてエモーショナルな戦いぶりが浮かび上がってくる。

シトロエン レーシングにとって、この東京大会は単なるレース以上の意味を持っていた。チーム代表であるシリル ブレイズ氏の突然の訃報という、重く苦しい空気がパドックを包み込んでいたのだ。レース前には彼を偲ぶ黙祷が捧げられ、誰もが沈痛な面持ちであった。しかし、彼らはヘルメットのバイザーを下ろした瞬間、真のレーサーとしての本能を剥き出しにした。ニック キャシディは第14戦で3位表彰台をもぎ取り、続く第15戦でも見事2位を獲得してみせた。連日のポディウムフィニッシュである。チームメイトのジャン エリック ベルニュも、第14戦で6位、第15戦で5位と、ベテランらしい確実な走りで両日ともに上位入賞を果たしている。キャシディが第14戦後に語った「チーム全員が深い悲しみの中にいる中で、最高の結果を残せたことを誇りに思う」という言葉には、どんな美辞麗句も霞んでしまうほどの重みがあった。

一方のDS ペンスキー陣営も、派手さこそなかったものの、堅実にポイントを掻き集める職人技を披露した。テイラー バーナードは第14戦を10位でフィニッシュし、第15戦では8位へとポジションを上げた。マクシミリアン ギュンターも、第14戦の15位から第15戦では9位へと食い込み、しっかりとトップ10圏内に名を連ねた。荒れる展開の中で生き残り、マシンを無傷でポイント圏内にねじ込む。これこそが、数々の修羅場を潜り抜けてきた名門の底力である。

静寂なレーサーと爆音のカスタムビルダー、奇妙な遭遇

コース外でも興味深い出来事がいくつかあった。アンドレッティは、日本のカスタムブランド「Liberty Walk(リバティーウォーク)」とコラボレーションした特別カラーリングを披露した。クロームブルーの「LB-Works」スタイルは確かに東京の夜景に映えていたが、爆音のV8エンジンや極太マフラーを愛するあのリバティーウォークが、無音で走るEVと手を組んだという事実には、思わずニヤリとしてしまう。時代は変わるものだ。

さらに、日本のモータースポーツファンを喜ばせたのは、Juju(野田樹潤)選手による現行マシン「GEN3 Evo」のデモ走行だろう。日本人ドライバーが国内でフォーミュラEマシンを走らせるのはこれが初とのこと。未来の電動モビリティと日本のレース文化が交差する象徴的な瞬間となった。

いざ、決戦の地ロンドンへ

さて、東京での狂騒を終え、ポルシェが早々にマニュファクチャラーズタイトルを決めた一方で、ドライバーズランキングの上位3名(デニス、エヴァンス、ウェーレイン)の差はわずか5ポイントという異常事態になっている。次なる戦いの舞台は、デニスの母国であり、常にドラマが起きるロンドン・エクセル展覧会センターだ。GEN3時代の最後を飾るタイトル決定戦。果たして最後に笑うのは誰か。我々トップギアは、ポップコーン(と、少しばかりのビール)を用意して、彼らが繰り広げる電流バチバチの最終決戦を心待ちにしている。
写真:フォーミュラE

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