書評コーナーは、ダットサン/ニッサン フェアレディ。日産自動車創立90周年記念で、ダットサンブランドによるスポーツカーの足跡をたどる。
ダットサンとは日産の源流ともいえるブランド名で、戦前からスポーティな味わいのあるモデルが用意され、多様な需要を掘り起こす意欲がうかがえた。
本書では、ダットサン時代の初期のスポーティなモデルから、フェアレディZが誕生する以前のフェアレディSR311や初代シルビアまでの軌跡を、当時の貴重なカラーカタログを中心に解説する。
本書によると、ダットサンのルーツは1931年に橋本増治郎が中心となって設立した快進社と1919年にウイリアムRゴルハムが中心となって設立された実用自動車が改組合併を経て創立されたダット自動車を鮎川儀介が1931年に戸畑鋳物傘下に入ったことが起点となる。
1932年に10型を発表。もともとはダットソン10型とされていたがソンが損に繋がるということからダットサンとされた。
その後続々の新型車を投入するとともに、いまでいうマーケティング戦略も取り入れた。例えば女優を使った広告展開などだ。そして戦後、フェアレディの前身となるダットサンスポーツを経てフェアレディがデビューするのだ。
本書にはそういった経緯とともに、開発途上のコンセプトモデルの写真も多く登場。また、当時のカタログもページの多くを占めて掲載されている。特に初期は写真ではなくイラストで作られていることもありその雰囲気を味わえ、楽しめる1冊に仕上がっている。
2023年に日産自動車が創立90周年を迎えたことを機に、既刊のダットサン/ニッサン フェアレディの内容はそのままに、日産自動車製作による90周年記念のロゴ”を配した新しいカバーデザインに一新し、500部を製作した新装版である。(内田俊一)
ダットサン/ニッサン フェアレディ〈新装版〉
日本初のスポーツカーの系譜1931~1970
著者:自動車史料保存委員会委員会 当摩節夫
発行:三樹書房
定価:4,400円
ISBN978-4-89522-802-2
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