昨年発表された、ベントレーのブロワー再生プロジェクト「ブロワー・コンティニュエイション・シリーズ」。このコロナウイルスで在宅勤務の中でも着実に進められており、このたび、新たに製造する車両のマスターデザインおよび製造技術のリファレンスとなるデジタルCAD(コンピューター支援設計)モデルが完成した。
ベントレーの「チーム・ブロワー」は慎重に解体され、精密なレーザー・スキャンや複雑な手作業による計測を経た後、デジタルの世界で再現された。完成したCADモデルは、630個のコンポーネントで構成された70個のアセンブリーに分かれており、総データ量は2GB以上に達する。
スキャン・データや測定値からモデルを完成させるため、専任のCADエンジニア2名で取り組み、延べ1,200時間を要した。その結果、初めて1920年代のベントレーの正確かつ完全なデジタルモデルが完成したというわけだ。昨今のコロナウイルスの危機の間、技術者たちは在宅で作業しながらモデルを完成させた。ベントレーのテレワーク、すげぇ。
CADモデルのデータから正確なフルカラーのレンダリングを作成することができるため、ベントレーのデザインチームは、部品の設計・開発を支援するプロセスだけでなく、個々の顧客の車両の仕様を支援することも可能になったた。コンティニュエイション・シリーズの車両は、機械的に見ればチーム・ブロワーと同じでだろうが、顧客は現在、戦前のモデルとの視覚的な差別化を図るため、エクステリアとインテリアのカラーパレットや素材を選択する作業を行っている。
「ブロワー・コンティニュエイション・シリーズ」とは、ベントレー・ブロワーの新車を12台生産するというもの。それぞれの車両は、1929年にサー・ティム・バーキンが製作し、レースに参加した「チーム・ブロワー」を機械的に正確に複製したものであり、現在、世界で最も価値のあるベントレーと言える。
これらのコンティニュエイション・カーは、ベントレー・マリナーのクラシック部門の専属チームが製造している。
彼らは最近1939年のベントレー・コーニッシュのレストアを手がけたが、現在、ビンテージ専門のチームと協力して、新しいシリーズに命を吹き込むために必要な一連のパーツを設計・製造し直しているところだ。
全12台の新車はすでに世界中の熱狂的なコレクターに売約済みで、ベントレーが所有するエンジニアリング・プロトタイプ「Car Zero(カー・ゼロ)」の第一段階が、まもなく本格的にスタートする。
チーム・ブロワーについて
1920年代後半、バーキンがレース用に製作したオリジナルの「チーム・ブロワー」は、わずか4台のみ。そのすべてがヨーロッパのサーキットでレースに参戦しており、最も有名な車両であるバーキン所有のチーム・カー・ナンバー2(登録番号UU 5872)は、ル・マンでレースに参戦し、1930年のベントレー・ファクトリー・マシン「スピード・シックス(Speed Six)」の勝利に極めて重要な役割を果たした。現在はベントレー所有の「チーム・ブロワー(車台番号HB 3403)」となったこのマシンは、コンティニュエイション・シリーズのマスター・モデルとなっている。
ベントレー・マリナーの熟練したヘリテージ・テクニシャンは、1920年代のオリジナルの金型や治具、伝統的なハンドツールから最新の製造技術まで駆使して12台分の部品を製作し、新型ブロワーを組み立てる。
ベントレーのオリジナルの「チーム・カー」は、その後、この機会を利用してヘリテージ・チームが詳細に検査を行い、1929年当時のオリジナルの仕様に戻すため、必要に応じて愛情たっぷりに昔ながらの機械的レストアを行っている。90年の歴史を持つこのクルマは、現在でも定期的に道路を走行しており、2019年のミッレミリアの完走、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでのヒル・ラン、最近ではカリフォルニアの海岸線を抜けてラグナセカでのパレードに参加し、2019年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスのクライマックスでは他の3台の「チーム・ブロワー」のうち2台と共に登場した。
オリジナルのチーム・ブロワーを受け継ぐものとして、新しいコンティニュエイション・シリーズの各車両には、鋳鉄製シリンダーライナー、取り外し不可能な鋳鉄製シリンダーヘッド、アルミニウム製クランクケースを備えた4気筒16バルブ・エンジンが搭載される。スーパーチャージャーはアマースト・ヴィリエ・マークIV(Amherst Villiers Mk IV)のルーツ式スーパーチャージャーを忠実に再現しており、排気量4,398ccのエンジンから240hp/4,200rpmの出力を発生させる。車両構造はプレススチールフレームで、半楕円リーフスプリング・サスペンションに複製されたベントレー&ドレイパー(Bentley & Draper)製ダンパーを組み合わせている。
復刻されたベントレー・ペロー(Bentley-Perrot)製の直径40cm(17.75インチ)の機械式ドラム・ブレーキおよびウォーム&セクター・ステアリングが、シャシーを締めくくる。