スポーツ、スーパー、アルティメットシリーズの枠組みを超えたマクラーレン GT
マクラーレンから、昨年発表されたTrack25 ビジネスプランに基づいて投入される第4 車種目の新しいモデル、マクラーレン GTが発表された。価格は26,450,000円で注文受付中、納車は 2019 年末からの予定となっている。
マクラーレンは、アメリカ、イギリスに次ぐ世界で3番目となる日本市場だが、国内累計登録台数が1,000台を超え、昨年比64%増となり、好調だ。そこに新たなGTを投入し、さらなる販売増を狙う。
だが、なぜマクラーレンはここでこのGTを出したのだろうか。最高出力620PS、最大トルク630Nmで0-100km/hは3.2秒、最高速度は326km/hというスペックのGTだが、スペック勝負なら、600PSの600LTや、GTということなら最高速328km/hの570Sでもいいのでは?と思った人もいるだろう。しかし、マクラーレンGTとは、既存のスポーツシリーズ、スーパーシリーズおよびアルティメットシリーズに並ぶ位置づけとなる、マクラーレン・ファミリー初の、真のグランドツアラーだ。まったく新しい概念のドライビングエクスペリエンスをもたらす一台なのである。
「GTとは、ヨーロッパ大陸横断も可能とするような長距離を快適かつ短時間で移動できるクルマのジャンルであったが、時代を経るにつれて、ラグジュアリーな方向性に振られてくることが多くなり、結果、ボディのサイズが大きくなり、重たくなってきた。ドライバーとの一体感を失いつつあるGTの分野に一石を投じたい」という日本支社代表の正本嘉宏氏の言葉どおり、このマクラーレンGTは、グランドツアラーを再定義し、新たな価値を生むという目的で作られた、マクラーレンの中で新しいジャンルのモデルなのである。ポイントは4つだ。
1つ目は、超軽量、革新的な素材の採用だ。強度と剛性を持ったカーボン・ファイバー構造が核となっていて、車両重量が 1,530kg(DIN)であり、最も重い競合モデルよりも200kg 以上軽量である。4.0 リッターV8 ツインターボ・エンジンの最高出力は620PS で、パワー・ウェイト・レシオは 405PS/トンという驚異的な数値となっている。
2つ目は、GTならではの美しいスタイリングだ。マクラーレンのデザイン・チームは、グランドツアラーのデザインの特徴として広く認められている、長くエレガントなシルエットは、すべてのマクラーレン・モデルに共通するエアロダイナミクスの原則に従い、新しいマクラーレン GT にそのまま受け継がれている。リア・フェンダーは、グランドツアラーの歴史を貫くデザイン上の特徴であると同時に、機能を重視したあらゆるマクラーレン・マシンのフォルムを象徴するものにもなっており、エアインテークがエンジンを冷却する高温ラジエーターとつながっている。
3つ目はそのドライビングダイナミクス。そのような性能の源となるのは、620PS の最高出力を発生する新しいマクラーレン 4.0 リッターV8 ツインターボ・エンジンで、このエンジンはM840TE と呼ばれている。マクラーレンのV8 エンジンのファミリーをさらに拡大するこのエンジンは、新しいマクラーレン GT のために製造されたもので、圧倒的なパワーとトルクを発生し、真のグランドツアラーらしい、優れた品質のエグゾースト・サウンドを奏でる。630Nm のトルクが 5,500rpm から 6,500rpm にかけて生み出され、3,000rpm から7,250rpm までで、そのトルクの 95%を得ることができる。この新しいエンジンと 7 速SSG トランスミッションの組み合わせが直線的で、シームレスかつ圧倒的な加速を生み出してくれる。
ローンチ・コントロール機能が停止状態からの加速を最適化しており、0-100km/h 加速は 3.2 秒(0-62mph 加速なら 3.1 秒)、0-200km/h(0-124mph)加速は9.0 秒、最高速度は、326km/hだ。
サスペンション、ステアリングおよびブレーキは、このクルマのためのビスポークで、グランドツアラーの優れたドライビング・エクスペリエンスを生み出すために調整および最適化されており、それによって、他のあらゆるマクラーレン・カーを上回る、独特のバランス、反応の鋭さ、快適さが生み出されている。また、サスペンションは軽量のアルミニウム製ダブル・ウィッシュボーンのデザインで、新しいマクラーレン GT では、油圧式のダンパーとの組み合わせでプロアクティブ・ダンピング・コントロールが可能となっている。サスペンションの制御には、720S 用に開発された、画期的な最適制御理論ソフトウェア・アルゴリズムが最も洗練された方法で受け継がれており、このアルゴリズムがセンサーからのインプットを通じて路面を「読み」、次に起こりそうなことを解釈し、わずか 2 ミリ秒で予測して適切な対応を行ってくれる。基本的には、ボディーの動きは、乗員の快適さを優先したものとなっており、接地荷重と路面との接地面は、グリップ・レベルが向上するように、つねに最適な状態に変更される。そして、3 つのアクティブ・ダイナミクス・ハンドリング・モード、「コンフォート」「スポーツ」があるが、たとえば、コンフォート・モードでは、追従型のセッティングとなる。
油圧式ステアリングによって運転の正確さと楽しさがさらに向上しているが、そのステアリング・レスポンスは、グランドツーリングの多様な運転スタイルのいずれにおいても期待を裏切らない仕上がりだ。タイヤとブレーキも同様で、ピレリ(Pirelli)がマクラーレン GT 用の P ZERO™タイヤを開発した。P ZERO™タイヤの 21 インチのアロイ・リア・ホイールはマクラーレンのクルマにこれまで取り付けられたホイールのなかで最も大きく、20 インチのフロント・ホイールと組み合わせられます。これらホイールには、7 本または15 本スポークのデザインが用意されている。
4つ目は、日常使いにも適したスーパーカーだということだ。マクラーレンGTは、車長がおよそ 4.7m とマクラーレンのスポーツシリーズまたはスーパーシリーズのどのモデルよりも長い。フロントとリアのオーバーハングは、これまでのマクラーレン・モデルより長いが、フロントのアプローチ・アングルは 10 度(車両リフトシステムの作動時は 13 度)となっているため、路面に施されたスピード・パンブにも対応することができる。また、路面と車体との隙間が 110mm(車両リフトシステムの作動時は130mm)あるため、都会でのあらゆるシチュエーションでもきわめて使いやすくなっている。また、「リフト」モードでは、主流のセダン同様の地上高になる ガラス張りで縦開きの電動式リア・テールゲートから出し入れできるリアに配置されたラゲッジスペースは、バッグやスキー板、ゴルフクラブなどが収納でき、容量はフロントと合計で 570 リッターになっている。
注目記事
トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2019/06/19088/trackback