速度や刺激だけがクルマの価値ではない。移動を極上の癒やしへと変える「究極のコンフォート」を追求し続けるシトロエンから、最新技術と伝統の哲学が高次元で融合したフラッグシップSUVが日本に上陸した。
絶対的なスピードではなく、究極の「コンフォート」を求める旅へ
我々トップギアの読者は、往々にしてクルマのパフォーマンスを数字で測りたくなる生き物だ。ニュルブルクリンクのラップタイム、0-100km/h加速のコンマ数秒の違い、あるいは最高出力の数値。確かにそれらは、エンジニアリングの極致を示す分かりやすい指標である。しかし、真に成熟したクルマ好きであれば、ステアリングを握るすべての時間がサーキットでの限界走行ではないことを深く理解しているはずだ。
気の置けないパートナーや家族とともに、数百キロ先の目的地へと向かうグランドツーリング。そこで真に求められるのは、路面のアンジュレーションを冷徹に伝えるソリッドな足回りではなく、外界のストレスから乗員を隔離し、心身を優しく包み込む「コンフォート(快適性)」である。そして、自動車の歴史において、この「コンフォート」という概念に対して最も特異かつ執念とも言えるアプローチを取り続けてきたブランドこそが、フランスのシトロエンである。
かつて「ハイドロニューマチック」という独自の油圧サスペンションで世界を驚愕させ、「魔法の絨毯」と称された極上の乗り心地を自動車史に刻み込んだ彼ら。そのシトロエンから、現代の持てる最新技術を惜しみなく投入し、ブランドの矜持である「コンフォート」を次世代のレベル(ウェルビーイング)へと昇華させた新たなフラッグシップSUVが登場した。本日2026年4月16日(木)より全国の正規ディーラーで発売される、新型「C5 AIRCROSS(シーファイブ エアクロス)」である。
複雑な道路環境やストレスの多い現代社会において、このフランスからやってきたフラッグシップSUVがどのような「癒やし」と「驚き」をもたらしてくれるのか。そのメカニズムとエスプリの効いたデザインの全貌を紐解いていこう。
新世代プラットフォームと高効率ハイブリッドが生む「静謐な力強さ」
新型C5 AIRCROSSの進化の核心は、その骨格と心臓部にある。本作は、ステランティス(Stellantis)がマルチパワートレインへの対応を前提に莫大なリソースを投じて開発した新世代の「STLA-Medium(ステラ ミディアム)」プラットフォームを、シトロエンとして初めて採用したモデルとなる。この真新しいシャシーは、車内スペースの最大化と低重心化を推し進め、ゆとりある室内空間と、SUVでありながら地に足の着いた安定感のあるハンドリング性能を両立させている。
そして、その強靭な骨格に搭載されるのは、ブランド最新世代の48Vマイルドハイブリッドシステムだ。1.2Lの直列3気筒ガソリンターボエンジンに、電動モーターを内蔵した6速デュアルクラッチ式トランスミッション(DCT)を組み合わせている。システム合計の最高出力は145ps(107kW)と、決してスペックシート上で声高に主張するような強烈な数値ではない。しかし、ここにシトロエンの美学がある。
彼らが求めたのは、首がのけぞるような暴力的な加速ではなく、どこまでも滑らかでよどみのない「静謐な力強さ」だ。低速域では電動モーターが積極的にアシストに介入し、DCT特有のギクシャク感を完全に打ち消す。発進時やストップ&ゴーを繰り返す市街地では、最大50%の時間(信号待ちなどを含む)をエンジンを停止したまま電動走行することが可能であり、高い静粛性と19.4km/L(WLTCモード)という優れた燃費性能を叩き出す。このモーターアシストによるシームレスなトルクの立ち上がりこそが、上質なドライビングフィールを生み出す最大の要因となっているのだ。
さらに、忘れてはならないのが足回りである。新型C5 AIRCROSSには、シトロエン独自のサスペンション技術「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)®」が標準装備されている。ショックアブソーバー内にセカンダリーダンパーを組み込むことで、路面からの入力を段階的に制御・吸収。かつてのハイドロニューマチックを現代的なアプローチで見事に解釈し直したこのシステムは、荒れた路面の凸凹による衝撃を穏やかにいなし、まさに「魔法の絨毯」と呼ぶにふさわしい、フラットでしなやかな乗り心地を乗員すべてに提供する。
空力と造形美の融合。「Oli」の思想を受け継ぐエクステリア
クルマの外観は、そのブランドが向かう未来を饒舌に語るものだ。新型C5 AIRCROSSのエクステリアは、シトロエンが掲げる新しいデザイン言語を体現し、一見して只者ではないオーラを放っている。
ボディサイズは全長4,655mm×全幅1,905mm×全高1,710mm。従来モデルから全長が165mm拡大されたことで、ゆったりと伸びやかなロングホイールベースが生み出す、グランドツアラーとしての安定感あるプロポーションを獲得した。フロントフェイスは、先代の柔らかな顔つきから一転し、シャープでモダンな造形へと進化。水平基調のデザインをベースに奥行きのある立体的な構成を取り入れ、中央には新世代シトロエンを象徴するブランドエンブレムが誇らしげに鎮座する。
さらに、夜間の視認性を飛躍的に高める「LEDマトリクスヘッドランプ」をシトロエンとして初採用。前方の車両や周囲の状況に応じて照射範囲を自動制御し、対向車を幻惑することなく常に最適な視界を確保するこの機能は、長距離のナイトドライブにおける疲労を劇的に軽減してくれるはずだ。
そして、エクステリアデザインにおける最大のハイライトは、リア周りの造形である。空力性能の向上に直結する「Citroën Light Wings(シトロエン ライト ウイングス)」と呼ばれる特徴的な意匠は、2022年のパリモーターショーで発表され話題を呼んだコンセプトカー「Oli(オリ)」の思想を直接的に受け継いだものだ。後方へと流れる空気を綺麗に剥離させるこのデザインは、単なるビジュアルのアクセントにとどまらず、環境負荷の低減と高速走行時のスタビリティ向上という実用的な機能性を併せ持つ。足元を引き締める19インチのブラックアロイホイール「ZIRCON(ジルコン)」とともに、機能美とフランス流の洒脱さが完璧に融合している。
動くラウンジ「C-Zen Lounge」と先進のデジタル体験
ドアを開け、キャビンに足を踏み入れた瞬間に広がるのは、クルマの中というよりも、モダンで高級なホテルのラウンジを思わせる空間だ。ハイグレードである「MAX」には、“乗る人すべてを柔らかく包み込む快適性”をテーマにした「C-Zen Lounge(シー ゼン ラウンジ)」コンセプトが導入されている。
我々クルマ好きを最も歓喜させるのが、シトロエンの真骨頂とも言える「アドバンストコンフォートシート」の存在だろう。フランス車のシートは伝統的に疲れないと評されるが、本作のシートはその頂点にある。MAXグレードに専用装備される最上級仕様のシートは、背もたれやサイドサポートに厚さ15mmの特製パッドを採用。座った瞬間のふんわりとした柔らかさと、骨盤を的確に支え長時間でも姿勢が崩れない確かなサポート力を、奇跡的なバランスで両立している。さらに、シートヒーター、ベンチレーション、そしてマッサージ機能まで完備。もはや運転席は、極上のリラクゼーション・チェアである。
拡大されたボディの恩恵は後席にも及んでおり、レッグスペースは+50mm、頭上スペースは+68mmも拡大。大人4人がどこまでも快適に移動できる空間が確保された。ラゲッジスペースも565Lという大容量を誇り、週末のゴルフから数日間のロングバカンスまで、あらゆるライフスタイルを呑み込む実用性を備えている。
インフォテインメントの進化も著しい。ダッシュボード中央には、ステランティス・グループ最大級となる13インチの縦型「ウォーターフォールスクリーン」がそびえ立つ。ナビゲーションから空調設定までを直感的に操作でき、視線移動を最小限に抑えるヘッドアップディスプレイと相まって、極めて先進的で安全なコクピット環境を構築している(誤発進制御サポートなどの最新ADASももちろん初採用されている)。
そして、随所に散りばめられたユニークなディテールも見逃せない。MAXグレードのリアガラスにはブランドの拠点であるパリの情景をモチーフにしたグラフィックがさりげなく施され、グローブボックスの内側には1919年以来の代表モデルが描かれている。こうした「歴史と誇り」を遊び心とともに忍ばせる手法は、オーナーの所有欲を密かに、しかし確実に満たしてくれるだろう。
現代における最強の「癒やし」のグランドツアラー
新型「C5 AIRCROSS」は、ベーシックな「PLUS(5,350,000円・税込)」と、快適装備を極めたハイグレード「MAX(5,700,000円・税込)」の2グレードで展開される。ボディカラーは、新色である深みのあるグリーン「ヴェール・アストリア」をはじめ、フランス車らしい華やかな「ルージュ・ルビ」など、計4色が用意されている。
最高速を競うサーキットのパドックには、もっと刺激的で獰猛なクルマがいくらでもあるだろう。しかし、仕事の重圧から解放された週末、愛する家族やパートナーを乗せ、最高の音楽を聴きながら数百キロの道のりを走り抜けるとき。路面の不整を優しくいなし、絶妙なトルクアシストで滑らかに車体を押し出し、極上のシートが腰の疲労を揉みほぐしてくれるこのクルマ以上に、頼もしく愛おしい存在はそう多くない。
シトロエンが100年以上にわたって狂信的なまでに追求してきた「コンフォート」の哲学。その最新の解答である新型C5 AIRCROSSは、スピードという呪縛から解き放たれた大人たちにこそ似合う、現代における最強の「癒やし」のグランドツアラーである。トップギア読者のガレージに、こんなエスプリの効いたフレンチSUVが1台収まっていれば、あなたのカーライフは間違いなく、これまで以上に豊かで穏やかなものになるはずだ。
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