新型ルノー グランカングー クルールは「補強なし」でなぜ走れるのか? 南青山で聞いたルノーの技術的自負

南青山で開催された新型ルノー グランカングー クルールのレセプション。お洒落な会場の空気とは裏腹に、我々は開発担当者に「意地悪な質問」をぶつけた。なぜ足回りを強化しないのか? 猛暑は耐えられるのか? その回答から見えたのは、フランス製商用車の恐るべき基礎体力だった。

冬の南青山、SHARE GREEN MINAMI AOYAMA。都会の真ん中に突如として現れる緑豊かなこの場所で、ルノー・ジャポンは粋な計らいを用意していた。振る舞われたのは、フランスの新年には欠かせない伝統菓子「ガレット・デ・ロワ」と温かいコーヒー。アーモンドクリームの甘い香りが漂うリラックスした空気の中、その巨体は鎮座していた。南青山のSHARE GREEN MINAMI AOYAMAで、459万円のルノー グランカングー クルールの一般向け展示イベント「Appartement Renault GRAND KANGOO」が開催され、レセプションが実施された。

先日スタジオで対面した「新型ルノー グランカングー クルール」だ。無機質なスタジオの光ではなく、冬の柔らかな自然光の下で見ると、全長4.9mのボディは意外なほど景色に馴染んでいる。日本のミニバンのような威圧感がない。道具としての「機能美」が、一種のファッションとして成立しているのだ。だが、我々はガレット・デ・ロワの中のフェーヴ(陶器の人形)を探しに来たわけではない。前回の記事で触れたスペックの真偽を確かめるべく、開発担当者にいくつかの「意地悪な質問」をぶつけるために来たのだ。

疑惑の検証:「伸びた分、ヤワになっていないか?」
私が抱いていた最大の懸念は、ボディの延長に伴う剛性の低下と、足回りのセッティングだ。ホイールベースが390mmも伸びれば、通常はねじり剛性が落ちる。スライドドアの開口部が広がれば、ボディはさらにヨレやすくなるはずだ。
ルノー・ジャポンの商品戦略を統括する関 博幸氏に、単刀直入に尋ねた。
「リアサスペンションの減衰力やバネレートは、車重増に合わせてどう強化しましたか? また、スライドドア周辺のスポット増しは?」
関氏の回答は、私の予想を裏切るものだった。
「基本的には変更していません。スポット増しも行っていません」
一瞬、耳を疑った。コストダウンか? 手抜きか?
しかし、続く言葉にルノーのある種恐ろしさを思い知らされた。
「この車はもともと商用車(カングー)をベースに、重い荷物を積載して酷使されることを前提に開発されています。ドアの開閉テストは200万回をクリアしています。つまり、ショートボディの設計時点で、グランカングーの負荷に耐えうるオーバーエンジニアリングが施されているのです」

なるほど、そう来たか。
彼らは「補強が必要なかった」と言い切ったのだ。乗用車ベースのミニバンを無理やりストレッチした車とは出自が違う。商用という「戦場」で鍛え上げられた骨格は、全長が40cm伸びた程度ではビクともしないということだ。
1.3Lターボで7人は「走る」のか?
次にぶつけたのは心臓部の問題だ。1.3Lガソリンターボで、7人フル乗車+荷物は物理的に厳しいはずだ。シフトプログラムで低回転を補っているのか?
「パワートレインもショートボディと同じです。プログラムの変更もありません」
関氏は涼しい顔で答える。
「メルセデスと共同開発したこのエンジンは、低速から240Nmのトルクを発揮します。1.3Lとは思えないほどグイグイと車を引っ張る。7人乗りでもベストマッチです」
ブレーキについても同様に「変更なし」。これも「積載状態で止まる」ことがデフォルトの性能だからだという。
ルノーにとって、7人乗車は「特別な負荷」ではなく、想定内の運用なのだ。

日本の「猛暑」と「静粛性」への回答
とはいえ、日本の夏はフランスとは違う。広大なガラスエリアを持つこの車で、3列目はサウナにならないのか?
これについては、関氏も正直な反応を見せた。
「スペースが広いため、冷えるまでに少し時間はかかるかもしれません」

しかし、対策は打たれている。
「後席以降は全面ダークグラスを採用し、2列目用のエアダクトから風を送り込むことで、3列目も一度冷えれば快適になります」
また、足元にはミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」が奢られている。
「これは非常によくできたタイヤで、ノイズも振動も小さい。フェルト材などの遮音対策と相まって、静粛性はかなり高いです」
タイヤ選びに定評のあるルノーが選んだオールシーズンタイヤ。これが日本の変わりやすい気候に対する、彼らなりの「最適解」なのだろう。

なぜディーゼルがないのか?
最後に、多くのファンが抱くであろう疑問を代弁した。「なぜ、ディーゼルがないのですか?」
重量級のボディにこそ、ディーゼルのトルクと経済性が欲しいはずだ。
「日本側としても検討はしました」と関氏は前置きした上で、「しかし、本国のラインナップにグランカングーのディーゼルが存在しないのです」と明かした。
技術的な出し惜しみではなく、世界的な環境規制と電動化の流れの中で、グランカングーはガソリン一本で勝負するという決断がなされていたのだ。
「ないものねだり」をして待つ必要はない。この1.3Lガソリンこそが、世界統一の正解なのだから。

結論:ガレット・デ・ロワの「王様」になれるか
インタビューを終え、再びグランカングーの運転席に座ってみる。
南青山の洗練された空気の中で、この車は不思議な存在感を放っている。きらびやかな高級ミニバンとは違う、使い込まれたツールのような頼もしさ。
「あえて変える必要がなかった」というエンジニアリングの事実は、この車が持つポテンシャルの高さを逆説的に証明していた。
日本専用の観音開きドアを開け放ち、23kgのシートを外して、好きなものを放り込む。そんな「王様」のような自由な使い方ができる人間にとって、この車は最高の相棒になるだろう。

ガレット・デ・ロワの中のフェーヴを引き当てるのは、幸運な者だけだ。
しかし、グランカングーというフェーヴを手に入れることは、誰にでもできる。あとは、その「重さ」と「自由」を楽しむ覚悟があるかどうかだ。
私はコーヒーを飲み干し、南青山を後にした。次にこの車に会うときは、間違いなく泥だらけのフィールドになるだろう。

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