【試乗】メルセデス・ベンツ GLB 200 d 4MATIC Urban Stars / C 200 Stationwagon Sports

「実用」という名の美学。黒きアクセントを纏ったメルセデスの「GLB」特別仕様と「Cクラスワゴン」新グレード。都市を泳ぐプロの道具として、知的な大人が今選ぶべき2台の「最適解」をトップギア流に読み解く。

「実用」という名の宝石。都市を泳ぐプロフェッショナルのための道具

英国のトップギア本国編集部には、一種の「Gクラス・コンプレックス」とでも呼ぶべき奇妙な空気が漂っている。「いつかはGクラス」と憧れつつも、ロンドンの狭い路地であの軍用車由来の巨体を操ることに、どこか理性を働かせてしまう連中だ。彼らは、あの四角い要塞が放つ魔力に惹かれながらも、日常のパートナーとして選ぶにはあまりに「過剰」であることを知っている。だが、そんな彼らが諸手を挙げて称賛する「回答」が存在する。それが、メルセデス・ベンツ GLBだ。

今回、私がステアリングを握ったのは、そのGLBに新たに設定された特別仕様車、「GLB 200 d 4MATIC Urban Stars(アーバン・スターズ)」。試乗の舞台は、整然とした区画と広い空が広がるベイエリア、浦安。このクルマが掲げる「都市の星」という名が、単なるマーケティング用語なのか、それとも真実の輝きを秘めているのか。それを確かめるには絶好のロケーションである。

「ベビーG」ではない、「プロの道具」の佇まい
まず、目の前にある機体を見てほしい。GLBのデザイン言語は、昨今の流麗なクーペSUVトレンドに対するアンチテーゼだ。四角い。あくまでも四角い。このボクシーなシルエットこそが、我々のような40代、50代の男たちの琴線に触れる。「機能が形態を決定している」という、工業製品としての正しさがそこにあるからだ。

そして、この「Urban Stars」という特別仕様車は、その正しさをより強固なものにしている。このモデルは人気オプションであった「AMGライン」を標準装備とし、さらに「ナイトパッケージ」を採用している。ボディカラーの「マウンテングレー(メタリック)」に、ナイトパッケージによるハイグロスブラックのフロントグリル、ウインドウモール、そして漆黒のサイドミラーが組み合わされると、どうなるか。もはや、ファミリー向けの「ベビーG」という愛嬌は消え失せる。代わりに現れるのは、プロのカメラマンが愛用するハイエンド機材や、特殊部隊が使用するツールのような、冷徹で機能的な美しさだ。

さらに特筆すべきは、足元に奢られた20インチAMGマルチスポークアルミホイール(ブラック)である。通常のGLBであれば18インチや19インチが関の山だが、Urban Starsではこの大径ホイールが標準となり、フェンダーのブラックアウト処理と相まって、都市のアスファルトを鷲掴みにする準備ができていることを主張している。738万円というプライスタグは決して安くはないが、この佇まいだけで、エンジニアリングへの対価を支払う価値があると思わせてくれる。

OM654qという傑作エンジンの真価
ドアを開け、適度な重みを感じながら閉める。密閉された空間に響く重厚な音は、金庫の扉を閉めた時のような安心感を伴う。
スタートボタンを押し、エンジンを目覚めさせる。搭載される心臓部は「OM654q」。このエンジン型式を聞いてピンとくる読者は、相当なメルセデス通だろう。2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボ。最高出力150PS、最大トルク320Nm。

スペックシート上の数字だけを見れば、スポーツカー好きの諸兄は鼻で笑うかもしれない。0-100km/h加速は9秒台と、決して速いクルマではない。しかし、トップギア本国の同僚たちが「このクルマにおける正解(The correct choice)」と断言するのが、まさにこのディーゼルユニットなのだ。

浦安の広く、信号の多い直線を走り出してすぐに、その理由が理解できた。このエンジンの真骨頂は、数字には表れない「躾(しつけ)」の良さにある。低回転域から湧き上がるトルクは極めて分厚く、人と荷物を満載にしても、1.8トンを超える車体を軽々と、そして滑らかに押し出す。

特筆すべきは、組み合わされる「8G-DCT(8速デュアルクラッチトランスミッション)」の仕事ぶりだ。ガソリンモデル(GLB 200)の7速DCTと比較して、この8速ユニットは驚くほどマナーが良い。日本の渋滞路や、浦安のようなストップ・アンド・ゴーが続く環境でも、ギクシャクした挙動は皆無。まるで熟練の執事がドアを開け閉めするように、黒子に徹してギアを繋いでいく。アクセルペダルを深く踏み込む必要はない。右足の親指に少し力を込めるだけで、GLBは周囲の流れをリードする。

アイドリングや低速時にはディーゼル特有のハミングが聞こえるが、不快な振動はペダルやステアリングには伝わってこない。むしろその音は、内燃機関が仕事をしているという頼もしい証として、心地よくさえある。

「古き良きメルセデス」の乗り味とアダプティブダンピングの恩恵
浦安の埋立地特有の、継ぎ目の多い橋の上を通過する際、GLB Urban Starsのサスペンションが真価を発揮した。
海外メディアがGLB全般に対して「Old-fashioned comfort(古き良き快適さ)」、あるいは「Wafty(ふわりとした)」と評したその乗り味は、このモデルでさらに洗練されている。

なぜなら、このUrban Starsには、通常モデルではオプション、あるいは設定のない「アダプティブダンピングシステム付サスペンション」が標準装備されているからだ。20インチという大径ホイールを履いているにもかかわらず、路面からの入力は見事に丸められている。「コンフォート」モードでは、路面の凹凸を「乗り越える」のではなく、しなやかに「いなす」。ステアリングを通じて掌に伝わる情報は正確だが、不要なノイズはシャットアウトされている。

最近のSUVの中には、背の高さを隠そうと過剰に足を固め、スポーティさを演出するものも多い。だが、GLBは違う。「私はSUVです。背も高いし重いですが、それが何か?」と開き直ったかのような、堂々としたロール感がある。コーナーでは適度に車体を傾けながら、4MATICシステムが四輪に最適なトラクションを配分し、レールの上を走るように旋回していく。

この「安心感」こそが、メルセデスの哲学だ。ドライバーを煽るのではなく、リラックスさせ、どこまでも遠くへ行ける気にさせる。高速道路でのタイヤノイズも最小限に抑えられており、ただ、大型のサイドミラーが風を切る音がわずかに聞こえる程度だ。それすらも、このクルマの実直な形状ゆえの愛嬌と思える。

機能美に満ちたコクピットと「Urban Stars」のバリュー
インテリアに目を向けてみよう。「Urban Stars」の恩恵は、室内にも色濃く反映されている。まず特筆すべきは、本革シートが標準装備されている点だ。従来の「レザーARTICO(合成皮革)」も悪くはないが、本革の香りと感触は、やはり所有欲を一段高いレベルで満たしてくれる。色はブラック、あるいは「レッドペッパー/ブラック」が選べるが、今回の試乗車のブラック内装は、カーボン調トリムと相まって、都会の夜にふさわしいクールな空間を演出していた。

ステアリングはナッパレザーが巻かれたスポーツステアリング。グリップの太さ、革の質感、そしてフラットボトムの形状。これらは単なる装飾ではなく、ドライバーがクルマと対話するための重要なインターフェースである。

そして何より、GLB最大の武器である「パッケージング」の優秀さには改めて感心させられる。直立したAピラーと四角いルーフラインのおかげで、頭上空間は広大だ。運転席からの視界は極めて良好で、車両感覚が掴みやすい。最新のMBUXは、タッチパッドが廃止され、ステアリングスイッチや音声入力、タッチスクリーンでの操作に集約された。英国の同僚たちは「物理ボタンを返せ」と嘆くこともあるが、慣れてしまえばレスポンスは良好だ。「Hi, Mercedes」と話しかければ、大抵のことは解決する。

3列目シートを備えた7人乗りであることも忘れてはならない。普段は畳んでおけば広大なラゲッジスペースとなり、いざという時にはエマージェンシー用として機能する。この「余裕」こそが、大人の道具としての深みなのだ。

結論:知的な大人が選ぶべき「究極の道具」
試乗を終え、浦安の夕暮れの中に佇むGLB 200 d 4MATIC Urban Starsを眺めて思う。このクルマは、決して「Gクラスの代用品」ではない。そして、単なる「家族のためのミニバン代わり」でもない。高度なエンジニアリングに裏打ちされたディーゼルエンジンの効率性。4MATICによる全天候型の走破性。そして、アダプティブダンピングシステムによる極上の乗り心地。それらすべてが、極めて高い次元でバランスされている。

「Urban Stars」というパッケージは、従来モデルで同等のオプションを装備した場合と比較して、約30〜40万円もお買い得な設定になっているという。だが、金額の多寡以上に重要なのは、メルセデス・ベンツ日本が「この仕様こそが、日本の都市で乗るGLBの最適解だ」と提示してきたことにある。

ナイトパッケージで武装し、本革シートと極上の足を標準で備えたこのGLBは、見栄やブランドロゴのためではなく、製品の背景にある哲学や、道具としての完成度に対価を払いたいと考える知的層に向けられたメッセージだ。

フェラーリやポルシェが「ハレの日」の相棒だとするなら、GLB Urban Starsは、あなたの日常を支え、守り、そして確実に目的地へと運んでくれる、頼れる「ケの日」の相棒となるだろう。それも、とびきり上質で、知的な相棒に。
これこそ、トップギア・ジャパンが推奨する、現代の「賢者の選択」である。

「引き算」の美学と「賢者の選択」。Sクラスの夢を見るワゴン

英国の片田舎、コッツウォルズの濡れた石畳を想像してほしい。あるいは、ロンドンの混雑した環状線を。そこでは何が必要か?0-100km/h加速を3秒でこなすスーパーカーか?否。必要なのは、外界の喧騒を遮断し、ドライバーの脈拍を平常値に戻してくれる「移動する聖域」だ。メルセデス・ベンツ Cクラスは、長らくその役割を担ってきた。そして今、私の手元にあるのは、その最新の解釈である「C 200 Stationwagon Sports(ステーションワゴン スポーツ)」。

メルセデス・ベンツ日本は、この主力モデルを「Sports」と「Luxury」の2つに明確に分けたという。今回試乗するのは、戦略的な価格設定で我々を誘惑する「Sports」。果たしてこれは、装備を削ぎ落としただけの廉価版なのか、それとも、あえて選ぶべき「賢者の選択」なのか。その真価を問う。

1.5リッターという「数字」に惑わされるな
まず、誰もが気にするボンネットの下の話から始めよう。搭載されるエンジンは、1.5リッター直列4気筒ターボ「M254」。「全長4.7mを超えるプレミアムワゴンに1.5リッター?」と眉をひそめる読者もいるだろう。かつての常識で言えば、それは明らかに力不足を意味した。

だが、このクルマには秘密兵器がある。ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)だ。エンジンと9速ATの間に挟み込まれたこの電気モーターは、あくまで黒子に徹しているが、その仕事ぶりは極めて優秀だ。

走り出しの瞬間、エンジンが唸るよりも早く、電気がスッと車体を押し出す。アイドリングストップからの復帰も、セルモーターの「キュルキュル」という音も振動もなく、いつの間にかエンジンがかかっている。この「シームレス(継ぎ目のない)」な感覚こそが、現代のプレミアムカーに求められる資質だ。

アクセルを深く踏み込めば、確かに4気筒特有のノイズが遠くで聞こえる。英国の同僚たちが「プッシュすると少し甲高い音がする」と評した通りだ。しかし、204PS、300Nmという数値は、日常使用において全く不足を感じさせない。むしろ、鼻先が軽いことによる回頭性の良さが、このワゴンの美点となっている。

「Sports」の名が示す乗り味
「Sports」というグレード名がついているが、騙されてはいけない。このクルマの本質は、あくまで「快適性」にある。標準装備されるスポーツサスペンションと、今回新たに採用された18インチアルミホイール(ディッシュ部がブラックに塗装された新デザイン)の組み合わせは、英国の評論家たちが「BMW 3シリーズよりも明らかにピロー(枕)のように柔らかい」と評したキャラクターを裏切らない。
確かに、低速域でマンホールや鋭い段差を越える際、AMGライン特有の硬さを一瞬感じることはある。しかし、速度が乗るにつれて、Cクラスは本来の姿を現す。フラットで、重厚で、矢のように直進する。

特筆すべきは、その静粛性だ。風切り音やタイヤノイズは見事に抑え込まれており、車内はまさに「ミニSクラス」。高速道路でのクルージングにおいて、これほどリラックスできるDセグメントワゴンは他にないだろう。ドライバーを戦わせるのではなく、癒やす。それがCクラスの流儀だ。

「引き算」が生んだ、クールな機能美
さて、今回の「Sports」の最大のトピックは、その装備内容と価格のバランスだ。メルセデス・ベンツ日本は、人気オプションだった「AMGラインパッケージ」を標準化しつつ、さらに「ナイトパッケージ」を追加した。

エクステリアを見てみよう。フロントグリルには無数のスリーポインテッドスターが散りばめられ、ウィンドウモールやサイドミラーは漆黒に塗られている。ポーラーホワイトのボディに、黒のアクセントと黒いホイール。このモノトーンのコントラストは、華美な装飾を排した「引き算の美学」を感じさせる。実にクールだ。

インテリアも同様だ。トリムには「アンスラサイトライムウッド」が採用された。これは、ギラギラしたカーボン調でもなければ、古臭い茶色の木目でもない。グレーがかったマットな木目は、モダンな高級家具のように洗練されており、ブラックのレザーARTICO/MICROCUT(スエード調)シートとの相性も抜群だ。

「Luxury」グレードには本革シートやブルメスターオーディオ、パノラミックルーフがつく。だが、それらがなくても、この「Sports」の空間は十分にラグジュアリーだ。むしろ、スエード調素材の滑りにくさや、シンプルにまとめられた装備群は、「道具として使い倒す」ワゴン本来のキャラクターには合っているとさえ思える。

デジタルとの対話、そしてワゴンの矜持
コクピットに座ると、縦型の11.9インチディスプレイが圧倒的な存在感を放つ。物理ボタンの少なさには最初は戸惑うかもしれない。特にステアリングの静電容量式スイッチは、「押したのかどうかわかりにくい」と苦言を呈される可能性のある部分でもある。だが、慣れれば「Hi, Mercedes」と話しかけるだけで、温度調整から目的地の設定まで、ほとんどのことが解決する。このクルマは、スマホ世代の執事なのだ。

そして忘れてはならないのが、ステーションワゴンとしての実用性だ。ラゲッジルームは広く、開口部は低い。リアシートを倒せば、長尺物も余裕で飲み込む。SUV全盛の今だからこそ、低重心で走りが良く、荷物も積めるワゴンの価値が再評価されるべきだ。

結論:これは「廉価版」ではない
C 200 Stationwagon Sports。価格は761万円。以前のモデルで同等のオプションを追加した場合よりも、約15万円以上安くなっているという。

だが、このクルマの価値は「お得感」だけではない。必要な装備(AMGライン、最新のMBUX、優秀なADAS)を厳選し、過剰な装飾を削ぎ落とし、クールな「ナイトパッケージ」で引き締める。その結果生まれたのは、単なる廉価版ではなく、都市生活に最適化された「プロフェッショナルのためのギア」だ。

もしあなたが、見栄や「全部入り」の安心感よりも、自分に必要なものを理解し、スマートに乗りこなすことを好むなら、迷わず「Sports」を選ぶべきだ。

Sクラスの夢を見ながら、現実の都市を軽やかに泳ぎ切る。C 200 Stationwagon Sportsは、そんな知的な大人のための、最良のパートナーとなるだろう。
写真:上野和秀
【試乗】メルセデス・ベンツ GLB 200 d 4MATIC Urban Stars / C 200 Stationwagon Sports

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