2025年WEC第7戦富士でプジョーのCEOがブランドの未来を語った。電動化を推進し欧州トップ3を目指すグローバル戦略、そして競合との戦いについて、その核心に迫る。
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FIA世界耐久選手権(WEC)第7戦の舞台、富士スピードウェイ。レースの興奮が渦巻くパドックの一角で、プジョーブランドの未来を語る重要なプレスカンファレンスが開催された。登壇したのは、PEUGEOT CEOのアラン ファヴェ氏、Stellantis Motorsports Senior VPのジャン=マルク フィノ氏、そしてStellantisジャパンでプジョーブランドを統括する小川隼平氏の3名だ。ファヴェCEOの口から語られたのは、電動化とグローバル化の荒波の中をプジョーがどう航海していくのか、その羅針盤となる野心的な戦略であった。
プジョーの現在地と未来へのロードマップ
プレゼンテーションの冒頭、ファヴェCEOは世界の自動車市場の現状分析から語り始めた。
世界の自動車市場は2025年最初の7ヶ月で4%の成長を見せ、全体としてはポジティブな傾向にある。しかしその内実は地域によって大きく異なり、中国が9%増、アジア太平洋地域が3%増と成長する一方で、プジョーが歴史的に深く根を張る欧州市場は3%の減少という厳しい現実に直面している。
このような逆風の中、プジョーは欧州市場で販売台数を3%増加させ、市場シェアを拡大するという目覚ましい成果を上げた。これは、ブランドの基盤である欧州での強靭さを示すものだ。さらに、プジョーの成長は欧州に留まらない。南米や中東、そして特にアジア太平洋地域での成長は著しく、今年に入ってから22%増という驚異的な数字を記録した。ファヴェCEOは「その成長の原動力となっているのが、ここ日本市場である」と述べ、日本市場への強い期待感を表明した。
欧州トップ3を目指す野心的な目標
プジョーは、14のブランドを擁するステランティスグループの中で、「アッパー メインストリーム」ブランドとして明確に位置づけられている。これは、大衆車ブランドの上位に位置し、品質やデザイン、体験価値で差別化を図る戦略だ。
このポジショニングに基づき、ファヴェCEOは具体的な目標を掲げた。現在5.7%で欧州5位の市場シェアを、今後5年間で7%まで引き上げ、トップ3、すなわち表彰台に立つことを目指す。この目標達成のために、Bセグメント、Cセグメント、そして商用車という3つの主要セグメントに経営資源を集中投下していく。
また、現代の自動車産業における最重要課題である電動化においても、プジョーはリーダーシップを発揮している。現在、主要メインストリームブランドの中で最も幅広いEVラインナップを提供しており、欧州のハイブリッド市場ではトヨタに次ぐ第2位のポジションを確立している。これは、プジョーが低CO2排出モビリティへの貢献を本気で考えていることの証左である。
革新技術とブランドを際立たせる3つの柱
プジョーの革新性は、13年前に導入された「i-Cockpit」に象徴される。小型ステアリングホイールと、その上からメーターを確認する独自のドライビングポジションは、運転の楽しさと直感的な操作性を両立させた。この革新は続き、最新の3008に搭載された「パノラミックi-Cockpit」では、ダッシュボード上に浮かぶように配置された21インチの巨大なスクリーンが、未来的な運転体験を提供する。
そして、さらにその先を見据えている。2年後に市販車への搭載が予定されている次世代技術「Steer-by-Wire」、コードネーム「Hypersquare」だ。これは、ステアリングホイールとタイヤの間に物理的な接続を持たない、全く新しいステアリングシステムであり、ドライビングの概念そのものを変える可能性を秘めている。
激しい競争が繰り広げられる市場で、プジョーが他社と一線を画すために掲げるのが、以下の3つのブランド差別化要素である。
フレンチ オリジン(French charisma): 200年以上の歴史を持つプジョーには、フランス特有のカリスマ性、優雅さ、そして創意工夫がデザインの隅々にまで息づいている。
ドライビング センセーションズ(Driving sensations): 伝説的なホットハッチ「GTI」の血統が示すように、プジョーは常に特別なドライビング感覚を約束してきた。機敏性、ダイナミズム、純粋な運転の喜びがその核心にある。
デザイン トゥ ラスト(Designed to last / Quality promise): 製品そのものの品質はもちろんのこと、顧客へのサービスを含めた総合的な品質を約束する。長く愛されるための設計思想である。
最後にファヴェCEOは、改めて日本市場の重要性を強調した。「日本のディーラーは、ブランドに対して強い情熱とコミットメントを持っており、プジョーのポジティブな地位を確立してくれています」。そして、今回のWEC富士6時間レースへの参戦は、この重要な市場におけるブランドの認知度とイメージをさらに向上させるための、極めて重要な活動であると締めくくった。
プレゼンテーション後に行われた質疑応答では、メディアからより踏み込んだ質問が寄せられた。
ーE-208 GTIの開発において、モータースポーツ(9X8ハイパーカー)のノウハウはどのようにロードカーに活用されているのでしょうか。また、205 GTIのDNAはどのように受け継がれていますか
ジャン=マルク フィノ氏:
はい、非常に良い質問です。E-208 GTIの開発チームは、WECハイパーカーである9X8の開発チームと全く同じ人々が担当しています。これは比喩ではなく、文字通り彼らは午前中に9X8の作業をし、午後にE-208 GTIに取り組んでいるのです。これにより、モータースポーツで培われた最先端のノウハウが、ダイレクトにロードカー開発へと活かされています。
また、DNAについてですが、40年前に伝説的な205 GTIのシャシーチューニングを担当した技術者が、現在も私たちのチームにおり、彼が『E-208 GTIには、あの205 GTIのDNA、すなわち非常にシャープなステアリングと高い効率性が再び見られる』と保証してくれています。さらに、EV化による恩恵もあります。バッテリーをフロアに搭載することで重心が大幅に下がり、車のハンドリングを向上させる上で非常に有利に働いています。
ープジョーが掲げる「フレンチ カリスマ」とは具体的に何を意味するのでしょうか。また、アッパー メインストリームブランドとしての主要な競合他社はどこですか
アラン ファヴェCEO:
『フレンチ カリスマ』を理解していただくために、まずステランティスグループ内の他のフランスブランドとの違いを説明させてください。シトロエンは、2CVに代表されるように、親しみやすく非常にポピュラーなブランドです。一方、DSはエレガンスとラグジュアリーに焦点を当てたプレミアムブランドです。プジョーはその中間に位置するアッパー メインストリームであり、ラグジュアリーではありません。
私たちが言うフレンチ カリスマとは、フランス語で『パナッシュ(panache)』という言葉が最も近いでしょう。これは、熱狂的な雰囲気や才気、華やかさといったニュアンスを持つ言葉です。フランス映画に例えるなら、DSが芸術性の高いインディペンデント映画、シトロエンが家族で楽しむコメディ映画だとすれば、プジョーは多くの人々を魅了するメインストリームのブロックバスター映画のような存在です。しかし、そこには必ずフランスらしい才気や創意工夫が組み込まれているのです。
主要な競合他社ですが、我々と同じヨーロッパのアッパー メインストリームブランドであるフォルクスワーゲンが最も重要な競合相手だと考えています。また、グローバルな視点で見れば、近年素晴らしい仕事をしているヒュンダイ/キアも注視しています。トヨタは、その世界的な支配力という点で我々とはカテゴリーが異なると認識しており、直接的な競合とは考えていません。
ーモータースポーツにおけるブランドの正統性について教えてください
ジャン=マルク フィノ氏:
プジョーはモータースポーツにおいて、非常に高い正統性を持っていると自負しています。その歴史は100年以上前に遡り、第一次世界大戦前には米国のインディアナポリス500で優勝し、ル・マン24時間レースでは3度の総合優勝を飾っています。このように、プジョーはアッパー メインストリームブランドでありながら、フェラーリのような非常にハイエンドでスポーティなブランドとサーキットで渡り合うことができる、稀有な正統性を備えているのです。
ーWECレースにおける将来的な水素技術(内燃機関または燃料電池)の使用について、計画はありますか
ジャン=マルク フィノ氏:
現在、WECでは水素技術に関するレギュレーションがまだ整っていません。我々の知る限り、早くとも2030年以降になるだろうと考えており、現時点ではその動向を注視している段階です。
一方で、私たちは現在、パートナーであるトタルエナジーズから供給される100%再生可能な燃料を使用しています。これにより、原材料の生産から車両の走行まで(ウェル・トゥ・ホイール)のCO2排出量を66%削減しています。モータースポーツは、未来のモビリティのための新技術を開発する実験場として、CO2とエネルギーの削減に貢献していくべきだと考えています。
ーグローバルブランドとしての成長を目指す中で、製品ポートフォリオをさらにグローバルに拡大する計画はありますか
アラン ファヴェCEO:
ご指摘の通り、現在の我々の製品ポートフォリオは、販売の多くを依存するヨーロッパ市場に由来するものが中心です。ステランティスグループは、ヨーロッパ、南米、中東、アジア太平洋といった地域ごとに高い自律性を持つ組織戦略をとっています。将来的には、例えば南米のピックアップトラック市場のように、ヨーロッパ以外の特定地域のニーズに適合したモデルを開発する可能性は十分にあります。現時点で発表できる具体的な計画はありませんが、その可能性は常に検討しています。
ーヨーロッパ市場以外の市場向けに、異なるパワートレインを開発する計画はありますか
アラン ファヴェCEO:
基本的にはヨーロッパ市場向けに設計されたエンジンとパワートレインをグローバルで展開していますが、我々は現在のハイブリッドおよびPHEV技術の性能に非常に満足しています。しかし、先ほどの質問とも関連しますが、ヨーロッパ以外の特定地域の市場や規制に特化したエンジンを開発するという可能性は否定しません。現時点でお話しできることはありませんが、当然ながらそうした選択肢も検討のテーブルには乗っています。
熱戦が繰り広げられるサーキットの外でも、WEC富士は訪れる人々を魅了してやまない。グランドスタンド裏に広がる「Fan Zone(ファンゾーン)」は、モータースポーツの枠を超えた、まさに自動車文化のるつぼとなっていた。
その一角で、多くの人々の視線を集めていたのが、プジョーの最新ホットハッチ「E-208 GTi」の展示だ。CEOのプレスカンファレンスでも語られた、「午前中に9X8、午後にE-208 GTi」を手掛けるエンジニアたちの情熱が詰まった一台。そのアグレッシブなスタイリングと、電動化時代における「GTI」の新たな解釈を、ファンたちは間近で興味深そうに見つめていた。
しかし、このファンゾーンで一際異彩を放ち、そして個人的に非常に興味深かったのが、陸上自衛隊・駒門駐屯地による装備品展示エリアだ。自衛隊の活動への理解を深めるための啓蒙活動として行われていたこの展示には、普段はまずお目にかかれない迫力の車両たちがずらりと並んでいた。
日本の防衛を担う最新鋭の「19式装輪自走155mmりゅう弾砲」、105mm砲を備え高い機動力を誇る「16式機動戦闘車」、災害派遣などでも活躍するおなじみの「高機動車」、そしてアクロバティックな走行もこなす「偵察用オートバイ」。これらの車両が、最先端のレーシングカーが走るサーキットのすぐそばに展示されている光景は、WEC富士ならではのユニークなコントラストを生み出していた。メカニズムとしての機能美に溢れたその姿に、多くの来場者がカメラを向け、隊員の話に耳を傾けていた。私自身、その迫力と精緻な造りに見入り、大いに楽しませてもらった。
もちろん、お祭りにはグルメも欠かせない。プジョーの故郷フランスにちなんだ、美味しそうなフレンチスタイルの屋台などが軒を連ね、あたりには食欲をそそる香りが漂う。レースの合間に、美味しい食事を楽しみながら仲間と語らう人々の笑顔が溢れ、ファンゾーン全体が祝祭のような高揚感に包まれていた。未来を拓くEV、国を守るタフな車両、そして美味しい料理。これらが混ざり合うWEC富士のファンゾーンは、レース観戦の体験をより豊かで思い出深いものにしてくれる場所だった。
今回のWEC富士への旅路を共にしたのは、プジョーと同じステランティスグループに属する、イタリアの小さな伊達男、フィアット 600 ハイブリッド(419万円)だ。そのボディカラーは「Sunset Orange」。夕焼けを思わせる鮮やかなオレンジ色が、道行く人の視線を集める。
ステアリングを握り、アクセルを軽く踏み込むと、その走りは実にキビキビとしたものだった。1.2リッターの直列3気筒ターボエンジンは、モーターのアシストも相まって、想像以上に活発な印象だ。特に心に残ったのが、そのエンジン音である。
かつての名車、チンクエチェントを彷彿とさせる「ブンブン丸」的な小気味良いサウンドが、車内に心地よく響く。ステランティスグループは、同じ形式のエンジンでも、ブランドや車種によってその味付けを巧みに変えてくるが、この600に与えられたのは、間違いなく「運転する楽しさ」を増幅させる陽気なサウンドチューニングだ。
正直に言えば、静粛性はさほど高くない。しかし、それは決して欠点ではない。むしろ、吹け上がりの良さを感じさせる快活なエンジン音は、ついついもっと聞きたくなり、ドライバーを「もっと前へ、もっと勇敢に進め!」とけしかけてくるかのようだ。
気になる燃費だが、取材道中はエアコンを常に最大風量で稼働させていたにもかかわらず、実燃費は17.2km/Lを記録した。WLTCモード燃費が23.0km/Lであることを考えると、過酷な条件下でのこの数字は十分に優秀と言えるだろう。
最新の運転支援システムや、アイボリーの洒落たエコレザーシートなど、装備の充実ぶりも特筆すべき点だ。快適性とイタリア車らしい遊び心を両立させたフィアット 600 ハイブリッドは、単なる移動の道具ではなく、目的地までの道のりそのものを楽しませてくれる、最高の相棒であった。
400号記念:UK400マイルロードトリップ/フェラーリ F80/フェラーリハイパーカー:トップギア・ジャパン 069
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