7代目となった新型ダイハツ ムーヴに試乗。スライドドア採用で利便性が向上した一方、NAとターボで走りの個性は明確に。街乗り中心ならNAモデルの滑らかで重厚感ある乗り心地が最適だ。価格と性能のベストバランスを探る。
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ダイハツ ムーヴ RS 1,897,500円
ダイハツ ムーヴ X 1,490,000円
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街乗りに最適なNAモデルの滑らかな乗り心地。スライドドア付きで150万円を切るという、優れたコストパフォーマンスも大きな魅力だ
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ターボ車は街中ではパワーがやや過敏に感じられる場面も。人気のあった「カスタム」グレードが廃止された点を寂しく思うファンもいるだろう
ダイハツ「ムーヴ」。その名は、日本の自動車史において軽ハイトワゴンという一大ジャンルを、スズキ ワゴン Rと共に築き上げた立役者として深く刻まれている。1995年の誕生から約30年、6度のモデルチェンジを経て、国内累計販売台数は派生車種を除いても340万台に達する。この数字は、ムーヴがどれほど多くの人々の日常に寄り添い、信頼されてきたかの証左に他ならない。
初代モデルからカスタムモデルを投入し、ドレスアップ文化の定着にも貢献してきたムーヴだが、市場は常に変化する。現代の軽自動車市場では、スライドドアを備えたスーパーハイト系が約6割を占めるまでになり、ユーザーの価値観も多様化した。
この大きな変化の時代に、7代目として登場した新型ムーヴは何を目指し、どこへ向かうのか。今回、ターボエンジンを搭載するトップグレード「RS」(1,897,500円)と、自然吸気(NA)エンジンの中核グレード「X」(1,490,000円)の2車種に試乗する機会を得た。先に結論を述べるならば、日々の暮らしの道具として、特に街乗りを主体とするならば、NAモデルの「X」グレードが見せた乗り味こそ、現代における軽自動車の一つの理想形であると感じられた。本稿では、その結論に至った背景を、開発コンセプトから試乗インプレッションまで多角的に解き明かしていく。
コンセプトは「メリハリ実用」― 時代のニーズとの対話
新型ムーヴの開発にあたり、ダイハツがメインターゲットとして見据えたのは「新人世代」と呼ばれる60歳前後のユーザー層である。人生経験が豊富で、モノ選びには合理的でありながら、自身のこだわりも持つ。この世代の価値観に応えるべく掲げられたコンセプトが「メリハリ実用」だ。そして、その思想を具現化した商品コンセプトが「今の私にジャストフィット、毎日使いこなせる軽スライドドア」である。
最大の変化は、やはりスライドドアの採用であろう。軽自動車の全長3.4mという厳しい制約の中でスライドドアを搭載すれば、デザインは必然的に箱型になる。しかし、ムーヴが目指したのは単なる箱ではない。「美しい箱型」の実現である。そのための工夫の一つが、Aピラーを従来よりも寝かせたデザインだ。これにより、スタイリッシュな印象を与えつつ、特に右左折時の死角を減らし、優れた前方・側方視界を確保している。Aピラーの根元に設けられた縦長のガラス窓も、交差点での巻き込み防止に貢献する実用的なデザインだ。
カラーリングにもこだわりが見える。新色の「フレースブラッククリスタル」を含む全13色の展開。この新色は、光の当たり方によって陰影が豊かに変化し、ムーヴのシャープなキャラクターラインを一層際立たせる。
また、6代目まで設定されていた「カスタム」は、その役割を終え、その代わりに、ユーザーの個性を表現する選択肢として「アナザースタイル」というオプションパッケージが用意された。外観を引き締める「ダンディスポーツスタイル」と、内装の質感を高める「ノーブルスタイル」。これにより、ユーザーはベース車の持つ優れたバランスを享受しながら、自らの好みを的確に反映させることが可能となったのである。
走りの進化を支えるDNGAの思想
7代目ムーヴの走りを根底から支えるのは、2019年から展開されている「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」プラットフォームと新世代パワートレーンである。開発陣が目指したのは、単なる移動の道具ではなく、「毎日でも走りたくなる軽快な走行性能」だ。
その実現のため、プラットフォームの素性の良さを最大限に引き出すチューニングが施された。ばね定数とショックアブソーバーの特性は徹底的に見直され、上質な乗り心地としなやかな足さばきを両立。電動パワーステアリング(EPS)の制御も最適化され、ドライバーの意図に忠実で素直なハンドリングを実現している。姉妹車であるムーヴ キャンバスが「街での穏やかな走り」に重きを置くのに対し、新型ムーヴは市街地での快適性はもとより、高速道路での直進安定性や、郊外のワインディングロードでの操縦安定性まで、より広い速度域での性能が追求された。
エンジンは改良が加えられたKF型。ターボ車には、力強く滑らかな加速フィールで定評のある「D-CVT」が組み合わされる。これらの技術的進化は、ムーヴを単なる実用車から、運転そのものに喜びを感じられるパートナーへと昇華させているのである。
街乗りでこそ光るNAの「重厚感」― ターボとの本質的な違い
試乗して最も印象的だったのは、ターボの「RS」とNAの「X」、両者のキャラクターの明確な違いであった。
まず、スムースグレーマイカメタリックの「RS」。15インチタイヤと高性能ショックアブソーバーが与えられたこのモデルは、まさに「全部載せ」のトップグレードだ。アクセルを踏み込めば、ターボチャージャーが即座に過給を開始し、軽自動車とは思えない力強い加速を披露する。高速道路での合流や追い越し、あるいは郊外の登坂路では、このパワーが絶大な安心感と余裕につながることは間違いない。開発陣が語るように、コストをかけられる分、細部まで作り込まれている感覚があり、絶対的な動力性能やスポーティな走りにおいては、疑いなくRSに軍配が上がる。
しかし、舞台を交通量の多い都内の市街地に移すと、その印象は少し変化する。ストップ&ゴーが延々と繰り返される状況では、RSの持つ有り余るパワーが、かえって繊細なアクセルワークを要求する場面があった。ほんの少しの踏み込みで車が前に出ようとする感覚は、活発である一方、常に気を配る必要があり、人によっては「落ち着かない」と感じるかもしれない。
対して、スカイブルーメタリックの「X」グレードのNAモデルは、全く異なる世界観を見せてくれた。走り出しの第一印象は、意外にも「重厚感」という言葉がしっくりくるものだった。これは決して鈍重という意味ではない。アクセル操作に対して、クルマがスッと、しかしどこか落ち着きを払って滑らかに動き出す。そこにはターボモデルのような鋭さはなく、ドライバーの意思を汲み取ってくれるような、穏やかで上質な感覚があるのだ。
開発担当者が「ムーヴは車重が軽いためNAでも十分走る」と語っていた通り、街乗りの速度域で力不足を感じるシーンは皆無であった。むしろ、パワーの出方がリニアで予測しやすいため、渋滞時の微速前進や、車庫入れの際の速度コントロールが非常に容易い。この扱いやすさこそ、日常の運転におけるストレスを大きく軽減してくれる要素である。過去、他の車種ではターボモデルの爽快感に魅力を感じた経験があるが、今回のムーヴに関しては、明確にNAモデルの乗り味に心惹かれた。それは、ムーヴというクルマが伝統的に守り続けてきた「バランスの良さ」という美点が、このNAモデルにこそ最も色濃く表れているからだろう。
RSの高性能は確かに魅力的だ。長距離移動や山道を走る機会が多いユーザーならば、最高の選択肢となる。しかし、多くのユーザーの主戦場である「街乗り」においては、Xグレードが見せる落ち着きと滑らかさ、そして運転のしやすさこそが、本当の快適性、すなわち「心地よさ」に繋がるのではないか。このNAモデルの絶妙なチューニングは、ムーヴがユーザーの日常にとことん寄り添って開発されたことの何よりの証明である。
哲学の具現化 ― 150万円へのこだわりと顧客への寄り添い
新型ムーヴは、その価格戦略においても注目すべき点がある。特にXグレードは、片側電動スライドドアや充実した安全装備を備えながら、150万円を切るという戦略的な価格設定がなされた。これは、開発陣が「予算に制約のある顧客にも良い商品を届けたい」という強い想いを持って実現したものだ。
この価格を実現するための努力は、何か一つの大きなコストカットによるものではなく、無数の地道な工夫の積み重ねによって成り立っている。「同じものをより安く、もしくはより軽く」「製造原価を下げて作り方を簡単にしていく」という思想のもと、例えば、より硬い高張力鋼板(ハイテン材)を使うことで部材の厚みを減らして軽量化を図ったり、従来3つの部品で構成されていたものを一体成型で2部品にするといった改善を、絶え間なく続けているという。
こうした技術的な努力は、ユーザーに見えない部分かもしれない。しかし、その恩恵は、優れた燃費性能や軽快な走り、そして何よりも購入しやすい価格となって、確実にユーザーに還元される。エアコンの吹き出し口に設けられたペットボトルホルダーなど、日常の使い勝手を考え抜いた細やかな配慮も、ダイハツが自動車業界の「裾野」を担う企業として、いかにお客様に寄り添うかを重視しているかの表れだ。
「新技術を手頃な価格で普及させること」。このダイハツの企業哲学は、7代目ムーヴという一台のクルマの中に、見事に具現化されているのである。
日常に寄り添う知性、NAモデルという最良の選択
7代目となったダイハツ ムーヴは、スライドドアという現代のニーズに的確に応えながら、その本質である「優れたバランス」を失うどころか、DNGAという新たな骨格を得て、さらなる高みへと昇華させたモデルであった。
そして、今回の試乗を通じて強く感じたのは、NAモデルが持つ非凡なまでの「日常性」の高さである。ターボモデルの力強さがもたらす非日常的な高揚感も魅力的だが、日々の暮らしの道具としてクルマと向き合うとき、本当に価値があるのは、穏やかで、扱いやすく、乗るたびに心安らぐような信頼感ではないだろうか。
新型ムーヴのXグレードは、まさにその価値を提供する一台だ。滑らかで落ち着きのある走行フィールは、街乗りのストレスを和らげ、運転を純粋な喜びに変えてくれる。可愛すぎず、威圧的すぎない知性を感じるデザインと共に、子育てを終え、これからの人生を自分のペースで楽しみたいと考える「新人世代」にとって、これほどジャストフィットする選択肢も少ないだろう。
ダイハツがその原点を見つめ直し、持てる技術と哲学の全てを注ぎ込んだ新型ムーヴ。その中でも、街乗り中心のユーザーにとって、NAモデルは間違いなく最良の選択肢の一つであると断言できる。
写真:上野和秀
アルファ ロメオ 33 ストラダーレ/ランド ノリス✕R32 東京ナイトドライブ/R35日本取材:トップギア・ジャパン 068
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