【試乗】アストンマーティン DB12:最新ボンドカーのクオリティは3,000万円超という価格に見合っているのか

アストンマーティンの最新フラッグシップモデル、DB12に試乗。メルセデスAMG製V8ツインターボを搭載し、最高出力680ps、最大トルク800Nmという圧倒的なパワーを誇る。3,090万円という価格に見合う走りと質感を、都市部での試乗で確かめた。低速域からのトルフルな加速、快適な乗り心地、上質なインテリアなど、ブリティッシュラグジュアリーの真髄を体感できる一台だ。

【KINTO】

「DB12シリーズのご試乗いかがでしょうか?」と、アストンマーティンのPR代理店から連絡があった。喜んで!と二つ返事で答えたいところだが、なにしろ車両価格は税込3000万円を超えるスーパーカー。どうしようかと躊躇しつつ、友人でありレポーター仲間であるSくんに相談したところ、「せっかくの機会だから、乗せてもらいましょう!」ということになり、ふたりで試乗することにした。

アストンマーティン DB12について、簡単におさらいしておこう。2023年5月、DB11の後継モデルとして登場したDB12はアストンマーティンの「DB」の血統を受け継ぎ、グランツーリスモを超越した「スーパーツアラー」と謳っている。

DB11の正常進化形だが、そのスタイリングはより力強さとポテンシャルを表現した、筋肉質なものとなった。いっぽう、インテリアはクリーンで現代的なデザインにアストンマーティンの伝統でもあるクラフトマンシップを融合させて、スポーティかつラグジュアリーにまとめられている。

パワートレーンはDB11と基本的に同じ、メルセデスAMG由来の4L V8ツインターボだが、最高出力は680ps、最大トルクは800Nmとデビュー当時クラス最強のパワースペックに引き上げられた。これに8速ATをリアアクスル側に搭載するトランスアクスルを採用する方式も変わってはいない。

なお、DB11にはV12エンジンも搭載されていたが、このDB12ではV8ツインターボのみとなり、新開発のV12ツインターボは今年9月に発表されたフラッグシップのスーパーGT「ヴァンキッシュ」専用ユニットとなるようだ。また、少し遅れてオープンモデルの「DB12 ヴォランテ」も追加された。

前置きが少し長くなった。今回の試乗車はDB12クーペ。まずはパーキングで車両に乗り込み、操作系の簡単な説明を受けてから、ブレーキを踏み、イグニッションボタンを押す。一瞬の空白の後、V8ツインターボが轟音というほどではないが、最近のクルマとしては迫力のあるサウンドで目を覚ます。

全長は4.7mほどだからクラウンなどより短いくらいだが、低いドライビングポジションにロングノーズで最小回転半径は6.2mと大きく、全幅も2m近いから、一般的な地下駐車場の通路でも外に出るまでは少し気を遣う。

今回は市街地と首都高速を中心とした短時間の試乗だったので、そのパフォーマンスの一端しか味わっていないが、そのさわりだけでも紹介しておこう。

まずは撮影のために、あらためて内外観のディテールを観察。じつは以前にDB11クーペを試乗したことはあるが、それはもう7年ほど前。やはりスタイリングの進化は時の流れを感じさせる。

アストンマーティン レーシンググリーンと呼ばれる新色の明るめのグリーンはDB12に似合っている。フロントのラジエター開口部は大きくなり、抑揚のあるシルエットに伝統のファストバックスタイルはよりマッシブで鍛えられたアスリートのような造形だ。イタリアのスーパースポーツカーとは違う、ブリティッシュテイストを感じさせる気品のある美しいスタイルだ。

インテリアは、ラグジュアリーだが成金趣味ではない。ヘッドレスト一体型のフロントシートをはじめ、インテリアには手縫いのレザーが採用されている。ショルダーラインの下にまで達する高いセンターコンソールがコクピットをセパレートし、メーターは全面液晶モニター、センターコンソール上には10.25インチのタッチスクリーン、その手前には小ぶりのATセレクターやスイッチ類などが配され、伝統と革新をうまく融合させている。

前述したように、DB12のパワートレーンはメルセデスAMG由来のV8ツインターボ。基本的にはメルセデスAMG GTに搭載されているものと同じで、そのアメリカンV8的なフィールも似ている。最大トルクの800Nmは2750rpmからとなっているが、実際には1000rpmも回っていれば十分なトルクを発生しており、低速域からきわめてフレキシブルだ。

エンジン回転数は8速の80km/hで約1100rpm、100km/hで約1500rpmといったところ。したがって、高速ツーリングは「スーパーツアラー」の名に恥じない、きわめて快適なもの。大径の超偏平タイヤを履いているにもかかわらず、乗り心地は悪くない。

もちろん、アクセルペダルを踏み込んで高回転まで回せば、それなりに豪快なサウンドを発するが、それでもメルセデスAMG GTよりはソフィスティケートされているようだ。

また、試乗車にはオプションのカーボンセラミックブレーキが装着されており、低速時では初期の効きが甘いのは気をつけなければならないが、高速のハードブレーキングでは(試すことはなかったが)存分に効いてくれそうだ。

今回はワインディングロードでハンドリングを試すというような機会はなかったが、エレクトロニック リアデフや5つのドライブモードによるESCなどを搭載しており、そのパフォーマンスはかなりのレベルであることは間違いない。

バウアース&ウイルキンス(オプション)のオーディオシステムが奏でる音楽とV8ツインターボのサウンドのハーモニーを楽しみながら、ハイウエイのロングツーリングを楽しむ。アストンマーティンDB12に似合うシチュエーションは、まさにそんな世界だろう。

いつかは…などと望むべくもないが、昨今の電気仕掛けパワートレーンを搭載したクルマが多い中、この内燃機関らしいエンジンと美しいスタイリングに上質なインテリアのスーパーツアラーの試乗は、一人のクルマ好きとしても十分以上に上質な時間を味わわせてくれた。(文と写真:篠原 政明)

■ アストンマーティン DB12クーペ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4725×1980×1295mm
●ホイールベース:2805mm
●車両重量:1788kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ
●総排気量:3982cc
●最高出力:500kW(680ps)/6000rpm
●最大トルク:800Nm(81.6kgm)/2750−6000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:トランスアクスル式FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・78L
●WLTPモード燃費:8.2km/L
●0→100km/h加速:3.6秒
●最高速度:325km/h
●タイヤサイズ:前275/35ZR21、後325/30ZR21
●車両価格(税込):3,090万円

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