KGモーターズが開発した一人乗り超小型EV、ミボットが発表された。コンパクトなサイズと軽量設計で、地方都市での短距離移動に最適。最高速度60km/h、最大航続距離100kmを誇り、エネルギー効率も高いこのEVは、2025年から広島県と東京都に初期モデル300台を納車予定。将来的には自動運転技術を活用したMaaSビジネスの展開も計画されている。
一人乗り超小型EVミボット(mibot)は、持続可能な移動を実現するために設計された新しいモビリティロボットだ。小型で軽量なこのEVは、特に地方都市での移動手段としての新たな可能性を提供しようとしている。KGモーターズCEOの楠一成氏を中心に、メディア向けに説明会が開催された。司会やトークショーの流れがとてもスムーズでわかりやすい発表会だった。それも当然だ。なぜなら、彼らは累計登録者数28万人を誇る【KG Motors】くっすんガレージ モーターズというYouTubeチャンネルで活躍するYouTuberなのだから。動画SNSに強い集団であることは、現代社会において成功の重要な要素なのである。
ミボットは、電動ミニカー規格に基づいており、乗車定員は1名。サイズは約2,400×1,100×1,500mmで、重量は430kgと、超小型で超軽量だ。高速道路を走行することはできないが、最高速度は60km/hで、最大航続距離は100kmとなっており、近距離移動の人をターゲットに開発が行われている。国交省が行った超小型モビリティのアンケートによれば、クルマ移動の7割が毎日10km未満、移動の7割が1人乗りで、約5割が高速道路をほとんど利用しないという結果が出た。KGモーターズはここに目をつけたというわけだ。
2025年度には量産300台を広島県と東京都のユーザーに納車し、2026年度から3,000台を目標としている。価格は100万円と、現行の軽自動車と比べてもかなり低価格となっており、注目が集まっている。現在、Webサイトで予約を受付中だ。
楠氏は、ミボットは、高いエネルギー効率と低い環境負荷が特徴だ。現在の日本の発電ミックスと比較してもCO2排出量を80%以上削減でき、再生可能エネルギーを利用すれば99%の削減が可能となる。
車検不要で税金も安く、維持コストを大幅に削減できる。電気代も抑えられるため、軽自動車や普通車と比較しても経済的となっている。
地方の公共交通機関が減少する中で、個人が一台の車で生活することが難しくなってきている。ミボットは、この問題を解決し、特に短距離移動に特化した効率的な移動手段としての役割を果たそうとしている。
今後の展望としては、2025年から本格化するミボットの製造・販売を基盤に、2027年頃からは自動運転技術を活用したマース(Mobility as a Service)ビジネスの展開を目指している。公共交通の減少や2024年問題に対応し、さらに多様なモビリティソリューションを提供することを考えているのだ。
今後の開発スケジュールについては、以下のような進行が見込まれている。
1. 製造開始(2024年度):ミボットの製造が本格的に始まる。この段階では、試作車両の製造とその性能検証が行われ、量産体制の確立が進められる。
2. 販売開始(2025-2026年度):初期モデル300台の市場投入が予定されている。販売地域は国内の広島県と東京都に優先納車される。2026年度には、本格量産3,000台となり、量産効果による原価ダウンを目指し、販売網の拡大も図られる。
3. 自動運転技術の導入(2026年~2027年):自動運転技術の開発が進み、初期段階での実験運行が行われる予定。この期間には、自動運転のためのシステムの試験と改良が行われる。
4. マースビジネスの展開(2028年以降):自動運転技術を活用したモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)ビジネスの展開が計画されている。この段階では、地域の交通網に統合するためのプロジェクトが進められ、広範なサービス提供が目指される。
5. グローバル展開(2030年以降):国内市場での成功を受けて、海外市場への展開が進められる可能性がある。国際的な認証取得や現地パートナーシップの構築が行われるだろう。
以上のスケジュールは、開発の進捗状況や市場の反応により調整される可能性があるが、十分に夢のあるストーリーとなっている。
プレゼンテーションのあとは、楠木CEOと車体開発リーダーの久保昌之氏によるトークショーが行われた。楠木氏は、革新には本当に必要なものと不要なものを見極めることが重要だと強調した。久保氏は、ミボットの開発における主な焦点として、安全性とデザインの重要性を挙げた。彼は、乗り心地の快適性といった要素が乗り続けられるために必要であり、開発チームはこれらの要素をできるだけ達成するように努めていると述べた。さらに、コストやその他の制約が多い中での挑戦の難しさも語られた。例えば、金型の最適化。従来の小型モビリティは、構造や製造数に制約があったが、ミボットではフルモノコックボディの採用が特徴だ。この設計変更により、金型体の数を減らし、コスト削減が実現されている。金型の前後対称化により、部品の発注数を増やし、コストをさらに削減している。右フロントフェンダーと左リアフェンダーを共通部品として製造することで、発注数を倍増させることができ、結果的にコストを抑えることが可能になる。このような革新的なアプローチがコスト削減に寄与している。
安全性の確保のため、衝突実験も行われたが、80%ほどポジティブに評価している。コンセプトと実際のデータが非常に近かったため、今後の開発がしやすくなったと久保氏は述べている。今後はシミュレーションと実際のデータの違いを反映させ、さらに精度の高いシミュレーションを行い次世代の施策に織り込む予定。最終的には再度実際の衝突試験を行い、結果を検証する。
走行性能に関しては、坂道性能のテストが行われた。小型のミニカー規格では、モーターの定格出力に制限があり、0.6kW以下であるため、パワーを得るのが難しい。モーターは初動トルクに優れているが、出力が小さいため、坂道での加速や最高速度のバランスを取るのが非常に難しい。車体の強度と軽量化のバランスが重要であり、これがコストや安全性にも影響するということだ。現在の性能に関しては一定の目処がついているが、電気性能や加速力など、さらに改善すべきポイントがある。ので、最後までクオリティ向上のために努力を続ける必要がある。
質疑応答が行われた。
製造場所について
現時点では広島県で製造することが決定しているが、具体的な場所についてはまだ協議中であるため詳細は後日発表予定。社内の工場で製造を行う予定である。
シートベルトの位置について
展示中のコンセプトカーでは、シートベルトが左側から伸びる理由について、ユーザーの意見を反映させるために、現時点では左側に設置されている。将来的には右側に変更する可能性がある。
モニター参加人数について
モニター募集は現時点では数十人を予定しており、長期的に使ってもらいフィードバックを得る予定。具体的な人数や詳細は未定で、クローズコースでのテストも含めて調整中。
自動運転の実現時期について
自動運転技術の実現については、現在のところ具体的な時期は明言できない。ただし、将来的には高度な自動運転技術を目指しており、段階的に技術を進化させていく計画だ。まずは基本的な運転支援技術から始め、最終的には完全自動運転を実現する方向で開発を進めていく。
自動運転技術の開発の進め方
自動運転技術の開発は、複数のステップに分かれている。初めに、基本的な運転支援システム(ADAS)を導入し、これを基盤にして技術を進化させていく。次に、より高度な運転支援機能を追加し、最終的には完全自動運転に向けたシステムを構築する。開発は社内の技術者と外部の専門家と連携しながら進めており、実際の走行データを活用して技術の安全性と精度を高めている。
自動運転車のテストは、クローズドコースでの走行テストと、限定された公道での実証実験の両方を通じて行われる。これにより、様々な環境での性能や安全性を確認している。また、テスト段階で収集したデータを基に、システムの改善を続けている。
自動運転車の安全性対策
自動運転車の安全性は最優先事項です。複数のセンサーやカメラ、LiDARなどの技術を組み合わせて周囲の状況を把握し、リアルタイムでの判断を行う。また、万が一のトラブルに備えた緊急対応機能も備えている。さらに、テスト段階での徹底的な評価を行い、安全基準をクリアすることを目指している。
自動運転技術の将来ビジョンについて
自動運転技術の将来ビジョンは、交通の効率化と安全性の向上を目指すものである。完全自動運転が実現すれば、交通事故の減少や渋滞の緩和が期待できる。また、障害者や高齢者など、運転が難しい方々の移動手段の選択肢を広げることも可能になる。弊社は、これらの目標に向けて技術開発を進めており、社会に貢献できるよう努力している。
楠CEOに伺った。
楠CEOは、自社のEVに関する戦略について、10代から70代までの幅広い世代のニーズに応えるための取り組みを明らかにした。特に、普段は軽自動車を使用しているがコストや使用感で悩む若年層に注目し、彼らのニーズに合った新しいモビリティの提供を目指している。特に、都市部から地方に移住した若者たちが直面する移動の不便さに対応するための手段として、自社のEVが有望であるとしている。
また、Z世代や若年層が車に対して持つ関心についても言及。これまで車に興味を持っていなかった若者たちが、田舎での移動手段としてのEVに興味を示しているとのことだ。実際、先行予約やモニター登録には、20代から70代までの幅広い世代が参加しており、特に40代から50代が中心となっているとしているが、今後は若い世代にもリーチしたい。
さらに、自社のEVには、OTA(Over-The-Air)機能を利用したソフトウェアアップデートや、通信機能に関する課金オプションが提供される予定だという。ユーザーが必要とする機能を選択できるようにすることで、個々のニーズに応じたカスタマイズが可能になるとしている。
―シトロエン アミなど他社の超小型EVについて
自社の小型EV開発に関して、他社の小型EVを広く研究・参考にしています。シトロエンアミももちろん、含まれています。特にそのデザインや機能性を参考にしています。それから、中国のEVメーカーが提供するモデルも調査しており、実際に輸入して研究したり、現地の工場に訪問して乗り心地を確認したりしています。具体的には、ウーリン(Wuling)のホンガー ミニ(Hongguang Mini EV)やAir EVなど、さまざまなモデルをベンチマークしています。最近ではスペインのSilence S04の小型EVモデルも研究対象ですね。一番は、トヨタ車体の超小型EV、コムスも参考にしており、日本の自動車メーカーの高い品質と技術レベルを評価しています。特に、トヨタが持つ技術的なアプローチや品質管理のレベルの高さに感銘を受けています。ただし、自社のコンセプトやターゲットユーザー層とは異なる部分があるのも事実です。トヨタの車は一般的な小型EV市場に向けたデザインや機能を持っており、自社の目指すニーズや方向性とは少し異なるため、単純に模倣するのではなく、学びつつも独自のアプローチを取っています。
よくある質問/Q&A
Q1: ミボットの主な特徴は何ですか?
A1: ミボットは一人乗りの超小型電動ビークルで、サイズは約2,400×1,100×1,500mm、重量は430kgです。最高速度は60km/hで、最大航続距離は100kmです。エネルギー効率が高く、環境負荷が低いのが特徴です。また、車検不要で税金も安く、維持コストが大幅に削減されています。
Q2: ミボットはどのようなユーザーをターゲットにしていますか?
A2: 主に地方都市での短距離移動を必要とするユーザーをターゲットにしています。特に、日常的に10km未満の移動が多く、高速道路をほとんど利用しない人々に適しています。
Q3: 2025年度からの販売計画について教えてください。
A3: 2025年度には初期モデル300台が広島県と東京都に優先納車され、2026年度には量産3,000台を目標としています。価格は100万円で、軽自動車と比較してもかなり低価格です。
Q4: ミボットの自動運転技術について、具体的な実現時期は決まっていますか?
A4: 現時点で自動運転技術の具体的な実現時期は明言されていませんが、段階的に技術を進化させ、まずは基本的な運転支援技術から始め、最終的には完全自動運転を目指しています。
Q5: 自動運転技術の開発はどのように進められていますか?
A5: 自動運転技術の開発は複数のステップに分かれており、初めに基本的な運転支援システム(ADAS)を導入し、次により高度な運転支援機能を追加、最終的には完全自動運転に向けたシステムを構築します。クローズドコースでの走行テストと限定された公道での実証実験を通じて技術の安全性と精度を高めています。
Q6: ミボットの製造場所はどこですか?
A6: 現時点では広島県での製造が決定していますが、具体的な製造場所についてはまだ協議中であり、詳細は後日発表予定です。
Q7: シートベルトの位置について、今後の変更予定はありますか?
A7: 現在、展示中のコンセプトカーではシートベルトが左側から伸びていますが、ユーザーの意見を反映させるため、将来的には右側に変更する可能性があります。
Q8: 自動運転車の安全性対策について教えてください。
A8: 自動運転車の安全性は最優先事項です。複数のセンサー、カメラ、LiDARなどの技術を組み合わせて周囲の状況を把握し、リアルタイムで判断します。また、緊急対応機能も備えており、テスト段階での評価を徹底的に行い、安全基準をクリアすることを目指しています。
Q9: ミボットのグローバル展開についてはどうなりますか?
A9: 国内市場での成功を受けて、2030年以降に海外市場への展開が進められる可能性があります。国際的な認証取得や現地パートナーシップの構築が計画されています。
Q10: 他社の超小型EVとの違いについて教えてください。
A10: ミボットはシトロエンアミや中国のEVメーカーのモデルなど、他社の小型EVを研究・参考にしていますが、自社のニーズやターゲットユーザー層に合わせた独自のアプローチを取っています。特に、軽自動車と比較してもコストや使用感で悩む若年層に焦点を当てています。
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