すでに、空を飛ぶディフェンダーの予告編を見たことがあるかもしれない。新しいボンド映画「ノー・タイム・トゥ・ダイ」のシークエンスのことだ。3台のディフェンダーが必死に走っているのだが、どうやら3台のバイクに追われている。ボンド映画なら驚くことではないが、ヘリコプターもそこに巻き込まれている。
ランドローバーはこの映画のためにディフェンダー110を提供した。スタントカーは基本的に消耗品なので、10台も用意されている。ただ、ちょうどディフェンダーが誕生する時期だったが、撮影スケジュールはハードだった。最終的には、これらの映画用のクルマは、生産ラインで製造された最初の10台となったのである。001から010までのシリアルナンバーが付いている。
トップギアは、007のスタントの取材をしたことがある。実際の場所は、スコットランドの荒れた湿原とソールズベリー平原のクロスカットではなく、ウォリックシャー州の非常に泥だらけのフィールドでのドライビングだったけれど。助手席に座っていたのは、私にもっと速くいけと煽ってくるジェシカ ホーキンス。彼女は広告に出てくる3台のディフェンダーの真ん中にいるスタントドライバーだ。
このシークエンスを改めて要約しよう。ディフェンダーたちの空中ジャンプから始まるのだが、壮大なフェイクがあったに違いないと思うだろう。だが、そうではない。彼らは実際に30メートルを飛んでいたし、地面から3メートルの高さでピークを迎えていた。ミッドシークエンスは、丘、岩、水、木などの大きな醜い障害物を横切って高速で走っているシーンだ。最後には、そのうちの1台が斜めに転がり、胃が痛くなるような音とともにホイールダウンの姿勢に戻る。しかし、それでもフレームの外へと走り出す。
ボンドの撮影現場では、スタントが本物であるのは信じるべきだし、ポストプロダクションでは、小手先の演出は最小限に抑えられている。しかし、だからと言って、クルマが実際にあるように見えるわけではない。前作『スペクター』のローマでのシーンを見たが、ジャガー C-X75がアストンマーティン DB10で007を追ってテベレ川を下るシーンがあった。これは、実車ではなかった。ジャガーの方は、特別に作られたスペースフレーム構造を持っていたのである。そして、新しい映画に使われたアストンマーティン DB5は、まったくもって旧車ではない。BMW M3のメカニックの上にカーボンファイバー製のボディを被せたレプリカなのだ。今年の「トップギア・スピードウィーク」でわかったことだが、その方がはるかにスタントしやすいマシンに仕上がっている。
このスタントランドローバーの驚くべき点は、実はフツーの工場出荷時のディフェンダーだということ。シートはレース用の5点式ハーネス、フルケージとアンダーボディプロテクション、縦型ハンドブレーキレバーのラムロッドが付いている。トリムのほとんどは取っ払われていて、後部には帯鋸のようなポンプで燃料を供給するフューエルブラダーがある。もう少し重量を減らすために、バックドアのスペアホイールの代わりに、見せかけのプラスチック製の軽量レプリカを使用している。
ESPは永久に無効になっている。それで、ホーキンスが私にスラロームのドリフトを指導してくれたのかがわかった。4つの車輪が泥を跳ね上げながら、宙に浮かせているんだよ。
でも、それはさておき、標準モデルなのである。ショールームストックのP400直6エンジンに、8速トランスミッション、サスペンション、タイヤと、似たようなトリプルブラックを注文することができる。そうすれば、ほぼ同じものになる。
ホーキンスはジャンプには 目を見張るものがあったと言っている。「最初に見たときは、すごいなと思いました…。それから初めてジャンプに向けてクルマを走らせたときに、自分は何をしているんだろうと自問自答したんですよ」結果的には、何度も何度も跳んでしまっていた。
スタントコーディネーターのリー モリソン(写真でホーキンスと一緒に写っている男性)は、複数のアクション超大作映画のベテランで、ディフェンダーたちが2、3回のテイクでも、生き残ると予想していた。最終的には7回飛んでも、ディフェンダーは無双だったという…。
彼らが実際は何を企んでいるのかは、2021年4月まで待たなければならないだろう。コロナウイルスのせいで映画の公開が1年遅れているからだ。この病気がもたらした他の破壊的な行為を除けば、些細な事かもしれない。とはいえ、正直、腹立たしい限りだが。今のところ分かっていることは、この映画は魅力的なものになるだろうということ。スペクターよりもボンドの傷ついた精神を 深く掘り下げていくと言われているラミ マレック演じるサフィンという史上最も厄介な敵を手に入れることになる。
ボンド役にダニエル クレイグ、マドレーヌ スワン役にレア セドゥー、ブロフェルド役にクリストフ ヴァルツが復帰し、さらにM、Q、マネーペニー、味方のストークのライバルである00ノミを演じる俳優もおなじみだ。ただし、順調には行ったというわけじゃない。ダニー ボイルは「クリエイティブの違い」のために去り、監督はカリー ジョウジ フクナガが務めることになった。そして、フィオベ ウォーラー=ブリッジが通常の脚本チームを強化した。
もちろんアストンマーティンもいる。ヴァルハラのリリースが、映画のリリースと同時に遅れてしまったために、理由は違えど、一部分のプレイヤーになってしまった。しかし、古き良きDB5の復活、あるいはそのスタントシーンの復活は、豊かな気分をもたらしてくれる。さらに、クレイグのお気に入り、『リビング・デイライツ』で最後に見たアストンマーティン V8も登場するのだ。