1970年代に異彩を放った名機「VANAC」が、最先端のチタン素材と精緻なメカニズムを纏い現代に蘇った。高速道路の疾走感をダイヤルに宿した、我々クルマ好きの心をくすぐる新たなタイムピースを紹介する。
我々トップギアの読者にとって、クルマと腕時計は切っても切れない関係にある。どちらも限られた小さな空間に高度なエンジニアリングが詰め込まれており、その背景にはブランドの深い歴史や思想が息づいているからだ。特に「名車の復刻」や「軽量化素材の採用」と聞けば、無条件に血肉が騒ぐ諸兄も多いはずだ。
今回紹介するのは、まさにそんな我々の琴線に触れる一本である。1972年に誕生し、鮮やかなカラーリングと斬新な多面形状で異彩を放った「キングセイコー VANAC(バナック)」が、50余年の時を経て現代に蘇った。スポーツカーのチューニングさながらにチタン素材を採用し、ダイヤルには「高速道路のスピード感」が表現されているという。早速、その詳細を見ていこう。
セイコーウオッチは、<キングセイコー>VANACより、チタン素材を採用した3つのモデルを2026年7月10日(金)に発売する。希望小売価格は473,000円(税込)だ。
新生VANACのデザインコンセプトは「Tokyo Horizon」。キングセイコー誕生の地である東京に広がる地平線の情景を、ケースとブレスレットに落とし込んでいる。金属の塊から削り出されたようなダイナミックなケースは、ベゼル(ガラス縁)のないデザインにより、広がりのある優美な雰囲気を放つ。
特筆すべきは、ケースとブレスレットにチタン素材を採用している点だ。広範囲にわたる鏡面仕上げとヘアライン仕上げを組み合わせることで力強い輝きを放ちつつ、ステンレススチールより約40%もの軽量化を実現している。着脱しやすいワンプッシュ三つ折れ方式の中留と相まって、長時間の着用でも負担を感じさせない軽快な装着性を誇る。
また、ダイヤルデザインは、東京の都市景観と「高速道路のスピード感」から着想を得ている。中央から放射状に広がるパターンと水平方向のストライプを組み合わせることで、高速道路を駆け抜け、広大な地平線へと向かう時に感じる疾走感を表現。カラーバリエーションは、ドライバーの目に映る情景に見立てた「薄明の静かなる地平線(パープル、HKF001J)」「無機質で都会的な高速道路の構造美(グレー、HKF002J)」「東京の夜を車が駆け抜ける時の疾風(ブラック、HKF003J)」の3色が用意される。
細部へのこだわりも深い。1970年代のVANACに着想を得た立体的な「インデックスリング」を配置し、視認性を向上。さらに12時位置と秒針のカウンターウェイトには、VANACの頭文字「V」をかたどったシルエットが隠されている。
このタイムピースの心臓部となるのは、メカニカルムーブメント「キャリバー8L45」。ダイバーズウオッチにも搭載可能な堅牢性を備えつつ、日差+10秒〜-5秒という現行最高レベルの安定した精度と、約72時間のロングパワーリザーブを併せ持つ。裏ぶたからは、回転錘や受にあしらわれた美しい波目模様を覗くことができる。ケースサイズは外径41.0mm、厚さ14.3mm。ボックス型サファイアガラスと10気圧の日常生活用強化防水を備え、アクティブなシーンでも安心して使用できる仕様だ。
徹底した軽量化、無駄のない流麗なデザイン、そしてタフで高精度なエンジンの搭載。新生「キングセイコー VANAC」の成り立ちは、優れたピュアスポーツカーの開発プロセスと見事に重なる。ステンレススチール比で約40%も軽いチタンの恩恵は、ステアリングを握り続けるロングツーリングにおいて、間違いなくドライビングプレジャーの向上に寄与するはずだ。
ふと腕元に視線を落とすたびに、東京の高速道路を駆け抜けるような疾走感と、50年の歴史の重みを感じさせてくれる。そんなロマン溢れるタイムピースは、メカニズムの奥深さと物語を愛するトップギア読者の、完璧な相棒となるだろう。
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