「熱狂は、終わらない」生産終了から3年、なぜ832台のホンダ S660は聖地・鈴鹿に集ったのか?

生産終了は、物語の終わりではなかった。日本の規格が生んだ奇跡のミッドシップ、S660。832台のオーナーが聖地・鈴鹿で樹立したギネス記録は、Hondaのエンジニアへの最高の返礼であり、自動車文化が生きている何よりの証左である。

クルマの価値は、カタログスペックや販売台数だけで決まるものではない。そのクルマが、どれだけ人の心を動かし、人生に深く関わったか。そして、生産という役目を終えた後も、どれだけ熱く語り継がれるか。我々トップギアの読者ならば、そのことを骨身に染みて理解しているはずだ。

2022年3月、ホンダ S660の生産終了が告げられた時、多くのファンがその早すぎる終焉を惜しんだ。軽自動車という極めて厳しい制約の中で、ミッドシップ・エンジン、リアドライブ、高剛性の専用シャシーという、本格スポーツカーの方程式を愚直なまでに追求した一台。それはまさに、ホンダのエンジニアリング魂が凝縮された「走る哲学」そのものだった。

そして2025年11月15日、その哲学に魅せられた者たちが、聖地・鈴鹿サーキットに集結した。生産終了から3年が経過した今、なぜ彼らはこれほどの熱量で結集したのか。その答えは、単なるノスタルジーではない。彼らが樹立したギネス世界記録™という金字塔は、S660という一台のクルマが、作り手と乗り手の情熱によって永遠の命を得たことの、高らかな宣言なのである。

聖地・鈴鹿を埋め尽くした832台の情熱
去る11月15日(土)、ホンダの2シーター・オープンスポーツ「S660」のオーナーたちが、三重県の鈴鹿サーキットで歴史的なイベントを成し遂げた。S660のオーナーズクラブ「S660 Chubu Community」が主催したこのイベントには、全国から832台ものS660が集結。サーキットの本コースを連なって走行するパレードを行い、「最大のホンダ車パレード(Largest parade of Honda cars)」として、見事ギネス世界記録™に認定された。

このイベントは、S660が発売10周年を迎える2025年に、歴史に残る偉業を達成したいというオーナーたちの純粋な想いから企画されたもの。当日は、色とりどりのS660オーナーカーに加え、このクルマの開発や生産に携わったホンダの従業員も自らの愛車で参加。作り手と乗り手が一体となってパレードを構成した。
ギネスワールドレコーズの公式認定員による厳格な審査の結果、すべての規定をクリアしたことが確認され、正式に世界記録として認定された。

■ギネス世界記録™ 認定概要
英語登録名: Largest parade of Honda cars
日本語登録名: 最大のホンダ車パレード
認定台数: 832台
記録更新の背景: これまでの記録は、S660の精神的な祖先ともいえる「ビート」が2010年5月9日にモビリティリゾートもてぎ(当時のツインリンクもてぎ)で達成した569台。今回、その後継車が15年の時を経て、その記録を大幅に塗り替える形となった。

クルマは、乗り手が文化を紡いでいく
今回の記録樹立が我々の胸を打つのは、単に台数が多かったからではない。それは、生産を終えた一台のクルマが、オーナーたちの手によって新たな物語を紡ぎ始めた、という事実そのものだ。

S660は、決して万人受けするクルマではなかった。限られたスペース、硬い乗り心地。しかし、そのステアリングを握れば、誰もが開発者のこだわりと情熱を肌で感じることができた。それは、効率や合理性とは対極にある、極めて贅沢なエンジニアリングの結晶だった。

今回のイベントに参加した832人は、その価値を誰よりも深く理解する「同志」だ。彼らが鈴鹿のコースを埋め尽くした光景は、ホンダのエンジニアたちに対する最高のアンサーであり、感謝のメッセージに他ならない。「あなたたちが生み出したこの素晴らしいクルマを、我々はこれからも愛し、大切に乗り続ける」という、声なき誓いのパレードだったのだ。

ガレージで愛車を磨き、仲間と集い、時にはサーキットを走る。クルマは単なる鉄の塊ではない。それは人生を共に歩むパートナーであり、情熱を共有する仲間との絆を生む触媒でもある。S660と、それを愛するオーナーたちが打ち立てた記録は、自動車が持つ文化的な価値を、改めて我々に教えてくれた。伝説は、終わらない。乗り手がいる限り、その物語は未来永劫続いていく。
「熱狂は、終わらない」生産終了から3年、なぜ832台のホンダ S660は聖地・鈴鹿に集ったのか?

400号記念:UK400マイルロードトリップ/フェラーリ F80/フェラーリハイパーカー:トップギア・ジャパン 069

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