110周年を迎えたアストンマーティン、電動化されても失われないものとは?


2023年は、アスティンマーティンが110周年を迎える記念の年ということで、発表会が催された。アジアパシフィックのリージョナル プレジデント、グレッグ アダムス氏によるプレゼンテーションをはじめ、UKとオンラインでつなげ、エグゼクティブ バイスプレジデント兼チーフクリエイティブオフィサーのマレック ライヒマン氏も参加した。伝統的な衣装に身を包んだバグパイプ奏者の演奏によって、華やかな幕開けとなった。

アストンマーティンは記念すべき110周年を、多くのイベントで祝うことを発表した。まず、グローバルイベントとして、今年のシルバーストーンでの英国グランプリから始まり、その次にグッドウッド フェスティバル オブ スピード、それからペブルビーチなど、続いて出展を予定。テーマは「インテンシティ」で、強烈、強さ、集中力、といった意味だ。

そのほかにも、2023年は、75年にわたるDBシリーズ、DB5の60周年、イギリスゲイドンにある本社施設の創業開始からの20周年記念でもある。それを受け、今年、ウルトララグジュアリー車、ハイパフォーマンスカー、ドライビングインテンシティをさらに強化した最新次世代のスポーツカーが発表される。また、110周年記念の限定モデルも用意されるという。

また、アストンマーティンにとってはF1も期待される年だ。新しいドライバー、それは2回のF1ワールドチャンピオンとなった、フェルナンド アロンソがチームに参加した。フェルナンドは勝利へ強い意志を持ってアスティンマーティンに加わり、さらに自身もパフォーマンスカー愛好家として、アスティンマーティンブランドの素晴らしいアンバサダーとして活躍が期待される。彼は最近、自身のソーシャルメディア上で、現在パーソナルカーとして使用しているDBXの運転がいかに楽しいかを語っている。彼の言葉を借りれば、期待を遥かに超えるパフォーマンスを発揮してくれるドリームカーなのだ。

そして、昨年、レーシンググリーン、サスティナビリティ戦略を発表して、持続可能な超高級車ビジネスのリーディングカンパニーになるという発表を行った。これには、気候変動への取り組みも含まれており、アスティンマーティンは2030年までに製造施設を、2039年までにサプライチェーン全体をネットゼロにすることを目指している。また、今後の原動化の戦略も明確に定めており、2024年に最初のハイブリッド車のデリバリーを開始する。2025年に最初の電気自動車を発売し、さらに2030年までにスポーツGT及びSUVを完全に電動化することを目標にしている。

日本では、2023年にアジア太平洋地域本部を東京に設置するという大きな転換期を迎える。日本は引き続きアジア太平洋地域最大の市場だが、今後はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、東南アジアの活気に満ちた多様な市場に対して責任を持つことになる。アジア太平洋地域は、2023年末に日本で開催されるアストンマーティン フェスティバルで、インテンシティ、110周年シリーズの締めくくりとして素晴らしいイベントを開催する予定だ。詳細は後日発表となる。

グレッグ氏は次のように述べた。「ここ東京で110周年記念を迎えるにあたって本当に大切なことは、熱心なお客様やメディアの友人たちが日本で長いアストンマーティンブランドに示してきた情熱と愛です。皆様が長いにわたって英国や当社を経営陣と共有してきた深い理解とつながりは決して当たり前のことではありません」

続いて、マレック ライヒマン氏からのプレゼンテーションがあった。

2023年は、アストンマーティンにとっては非常にエキサイティングな年となる。これは、ルックス、外観上の変化だけではなく、110周年記念をお祝いするというインテンシティである。アストンマーティンは、非常に競争的で高性能な製品を創造するウルトラパフォーマンスのブランドだ。例えば、今日の会場にもあるDBX707は、我々のスポーツカーに引けを取らないSUVである。

この110年間で製造した台数は、わずか110,000台だ。この数字から、アストンマーティンがどれだけ希少価値があるレアな車、そしてスポーツカーであるかということが分かるだろう。

そして、新たなデジタルマーケティングのコンテンツとして、「インテンシティ 110周年」のメイキング、このデジタルコンテンツを近いうち立ち上げる。新しい、非常にエキサイティングなスポーツカーの機種を、今年中に発表することになる。

新型F1カーについては、車両の発表が今年2月13日に行われ、アストンマーティンのF1チームは、シルバーストーンにある新しい工場に移転する予定となっている。

グッドウッドのフェスティバル オブ スピード、リバイバル、ペブルビーチに続いて、9月には110周年記念ラリーも開催し、ヨーロッパを横断し、フィニッシュは、ゲイドンとなる。だが、その前に、アスタマーティンの新型車で、新年を祝うことになるだろう。

1936年、アストンマーティンはレーシングカーやスポーツモデルの製造から新たなモデルへと目を向けた。それがこの新しい2.0リットルエンジンを搭載した豪華な新シリーズ、15/98と名付けられた。そしてアストンヒルクライムのレースからからアストンの社名を付けた。15/98は、製造台数も非常に限られ、このロングシャシーのクルマは110,000台のうちの3台となる。4ドアセダン、さらに4ドアツーリングがあった。当時は、まずシャシーを入手して、そこにコーチワークを作っていく時代。このツアラーは、このロングシャシーということもあり、非常にハンドリングに優れた、エレガントで、気品に満ち溢れたクルマだったわけだ。15/98というこのクルマの名前は、15はRAC(王立自動車クラブ)が決めた分類で、税金にも関わってくる。そして、98は最高馬力だ。
販売価格が575ポンド(9.3万円)だが、現在の価値に換算すると、500万(8億円)から600万ポンド(9.7億円)となる。

それから、ボンドカーとして、世界的にも有名なDB5。1964年「ゴールドフィンガー」のセットデザイナーの目に止まったことから、採用された。彼が、ニューポートパグネルの前を通るたびに、なんとかこのクルマを映画に出せないものか、と思っていたところから、実現した。DB5は5速ギアボックスを搭載した、最初の英国生産車の一台でもある。DB5はニューポートパグネルで生産され、アルミのパネルは職人の手作業で作られていた。製造台数はサルーンとして887台、コンバーチブルが123台、シューティングブレークが12台、合計1,022台だった。生産台数はかなり少ないのだが、世界で最も有名なクルマのうちの一台だろう。そしてこの実際に作られたDB5の多くの台数が未だに生存していて、ほとんどの台数の居所も把握されていて、ごくわずかが行方不明ということになる。ライヒマン氏は、「個人的には最も美しいクルマだと考えている」と述べた。

そして、SUVであるDBX707。DBX707を作るときに、エレガントであること、純粋であること、プロポーションがアストンマーティンならではのもであることを重視した。SUVにも関わらず、スポーツカーのルックスとフィーリングを誇るクルマである。ライヒマン氏も、毎日このSUVを運転していて、自分は決してレースドライバーではないのだが、非常に高性能で素晴らしいクルマであることを確認しているそうだ。フェルナンド アロンソも
多くのアストンマーティンの中からDBX707を自分のクルマとして選んでいる。そして彼自身も、性能が期待を遥かに超えているとインスタグラムで発表している。そして、特筆すべきはインテリアだ。アストンマーティンならではのクラフトマンシップ、それからディテールへのこだわり、スティッチングでも、レザーの品質、木材やカーボン、金属類など、本格的で上質な素材のみを使っている。ウッドは一つ大きなブロックから削り出している。

ヴァルキリー AMR Proはルールに縛られないハイパーカーだ。私はアストンマーティンに入社して17年が経つが、ル マン優勝ドライバーの運転で隣に乗ってサーキットをこのヴァルキリー AMR Proで走った。11,000rpmまで回る高回転エンジンは、外からでも内側からでも、素晴らしいサウンドを奏でていた。Gフォースも優れていた。

ライヒマン氏に、次のような質問をしてみた。
―アストンマーティンが電動化するということですが、電動化されても失われない、アストンマーティンらしさとは何でしょうか?

「電動化されても、アストンマーティンのクラフトマンシップおよび美しさは維持できると考えています。電動化はパフォーマンスの向上をもたらしますが、このクラフトマンシップ、素材の選び方、プロポーションの美しさを考え直すきっかけにもなるでしょう。多くの人々が、電動化するとサウンドが失われることについて心配しているようです。ですが、私たちはノイズについて、研究をしています。それは、美しい野獣が奏でる、エキサイトで、無音も楽しめる、クレッシェンドがあります。戦闘機やグライダーの音などは、センセーショナルなスピードを想起させるノイズの好例となるでしょう。電動化されたアストンマーティンは、とてもエキサイティングでハイパフォーマンス、みなさんが好きなスポーツカーのサウンドを有しているものです。美しいプロポーション、これはアストンマーティンにとっても絶対的ですが、電動化することによって、V8やV12エンジンのサイズの制約を受けないこともメリットとして出てきます。むしろ、アストンマーティンの美しさを自由に表現できるようになるのです」



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