ダイハツの軽商用車「ハイゼット カーゴ」、「アトレー」およびそれらをベースとした特装車、福祉車両を17年ぶりにフルモデルチェンジ、「ハイゼット トラック」、「ハイゼット トラック」をベースとした特装車をマイナーチェンジし、車両の撮影会が開催されたので、足を運んできた。価格は、ハイゼット カーゴが 1,045,000-1,606,000円、ハイゼット トラックが902,000-1,452,000円、アトレーが1,562,000-1,826,000円となる。月間販売目標台数はハイゼット カーゴが5,700台、ハイゼット トラックが6,000台、アトレーが1,000台。
「ハイゼット」シリーズは、1960年にダイハツ初の軽四輪車として誕生した、ロングセラーカーだ。農業等の一次産業から建設業、配送業等、幅広い業種の“働く相棒”として、地方部から都市部まで全国津々浦々で使用され、累計生産台数は750万台以上になる。
近年、働き手の多様化や少子高齢化による労働力不足、新たな使用用途への対応等の軽商用車を取り巻く環境変化に対応すべく、今回のフルモデルチェンジで商用車に初めて「DNGA(Daihatsu New Global Architecture )」を展開した。「ハイゼット カーゴ」「アトレー」のプラットフォームを一新するとともに、「ハイゼット トラック」も含めFR用CVTを軽商用車として初めて採用し、燃費や静粛性、発進性等の基本性能を向上させた。また、最新の予防安全機能「スマートアシスト」等を採用することで高まる安全・安心へのニーズに応えている。
今回のトピックスとして、一番にあげられるのが、新開発のFR用CVTだ。小型化することで軽商用車の床下スペースへの搭載を実現し、CVT採用等により燃費、発進性、静粛性等を大幅に向上させている。燃費は「ハイゼット カーゴ」でWLTCモード15.6km/L<5MT14.9km/h>(JC08モード20.5km/L<5MT18.0km/h>)、「ハイゼット トラック」でWLTCモード16.5km/L<5MT15.6km/h>(JC08モード21.0km/L<5MT19.0km/h>)で、CO2排出量ともに5MTよりも優れた数値となっている。2022年度から小型貨物車に新しく適用される商用CAFE規制の基準値にも対応できている。
さらに、変速比幅を拡大し、発進時はLOWギヤ化したことにより、力強い発進で、駆動力が途切れることがない無段階変速により、スムーズな加速で登坂時も快適だ。そして、車両開発本部の大野宣彦氏も一押しなのが、無段変速による静粛性の向上だ。「50-60km/hくらいで、驚くほど静かなんです。ぜひ、試乗していただきたいですね」
そして、CVT車に軽キャブオーバーバン、軽キャブトラッククラス初となる電子制御式4WDを採用している。用途に応じて、スイッチ操作で2WD/4WD AUTO/4WD LOCKの3モードを選択可能だ。4WD AUTOモードでは、路面に合わせて最適な前後駆動力配分を行うことで、悪路や雪道など滑りすい路面を走行時の安定性を確保するとともに、乾燥した路面でのタイトコーナーブレーキング現象を抑制してくれる。
「ハイゼット トラック」では、従来MT車のみに搭載されていたスーパーデフロックを軽キャブトラックで初めてCVT車にも設定し、ぬかるみ等での悪路走行をサポートしている。
11代目となる新型「ハイゼット カーゴ」は、ラストワンマイルを担う小口配送ニーズの増加や建設業の方々の多能工化などによる多くの荷物を効率的に積みたいというニーズに応え、車体形状のスクエア化等によりクラス最大の積載スペースを実現するとともに、荷室の側面や床面のフラット化等、荷物を傷つけることなく効率的に使用できる使い勝手の良さを追求した。
新型「アトレー」はレジャー等のニーズに応えるため、商用車ならではの広く積載性に優れた荷室を最大限活用できるよう刷新。さらに、専用デザインや充実した快適装備を採用している。
また軽特装車シェアNo.1の特装シリーズは、豊富なバリエーションが魅力的。今回から「デッキバン」を「アトレー」にも新設定し、より幅広いニーズにお応えします。さらに、軽福祉車両シェアNо.1である「フレンドシップシリーズ」としてご好評の「ハイゼットスローパー」、「アトレースローパー」も進化し、車いす乗車スペースの拡大と使い勝手の良さの向上を図っている。
なお、会場には、2022年の中頃からサービスを開始予定のNibakoプロジェクトも展示されていた。こちらは、移動式の物販を行うためのキットをリースで行うという、ユニークなサービスである。ベース車両に手を加えることなく、軽トラックの荷台に設置する。3箇所の扉でカンタンに店舗に早変わりするという画期的なもの。これまで、キッチンカーは豊富にあったが、「試しで物販をやってみたい」という人にとっての車両はなかったという。リースということで、保管場所も必要なく、コスト面でも折り合うケースが多くなりそうだ。「フリーマーケットや移動図書館など、さまざまな用途が考えられると思います。Nibakoプロジェクトによって、地域の活性化につながるといいですね」と、くらしとクルマの研究所所属の菅 嘉毅氏も期待を寄せている。
オンラインプレゼンテーションで、奥平総一郎社長から、2030年には新車を100%電動化することや2025年には補助金効果含めて実質100万円台の軽EVの予定があるという話があった。「電動化やEV化が目的なのではなく、カーボンニュートラルを目指すことが必要」だという話には、感銘を受けた。常に良品廉価の姿勢を貫いているダイハツだが、軽商用車のジャンルではまた躍進が期待される新型車の発表であった。