ベントレーが初の完全電気自動車「ベントレー トルカル」を発表した。最高出力888ps、113kWhのバッテリーを床下に敷き詰めた巨体は、一見すると中国製SUVと見紛うような光るグリルを備えている。しかしその内側には、革のハンマー音を再現したウインカーや16万km保証のバッテリーなど、EV特有の無機質さを徹底的に排除する偏執的なエンジニアリングが隠されている。伝統的ブランドが描くEVの生存戦略を紐解く。
裕福な蛾(光るものに群がる金持ちへの皮肉)にとってのビッグニュースだ。これが新型「ベントレー トルカル」である。目立つだろう? 夜の高速道路で背後から迫ってきても、絶対に見落とすことはないはずだ。しかし、この発光するデカ鼻に騙されてはいけない。その後ろには、これが電気自動車であるという事実をできるだけ騒ぎ立てないよう、細心の注意を払って作られたEVが隠れている。
我々が「アンチ ルーチェ アプローチ(フェラーリの派手なEVに対するアンチテーゼ)」と呼んでいる手法を用い、ベントレーはこのベントレー トルカルを既存のラインナップにシームレスに溶け込むようデザインした。おそらく、客が間違えて買ってしまい、数ヶ月後にガソリンを入れる穴が見つからなくて初めてEVだと気づくことを期待しているのだろう。
デザインについては後述するとして、まずは数字の話だ。EVの性質上、ベントレー トルカルはベントレー史上最もパワフルでトルクフルなモデルであり、最高出力888ps、最大トルク1350Nmを誇る。ベントレーはこの数値を「十分」と表現している。まったくその通りだ。EVプラットフォームは新型ポルシェ カイエンと共有されているため、ベントレー トルカルは同じ巨大な113kWhのバッテリーパックを搭載し、最大600kmという十分な航続距離を確保している。これに400kWの急速充電が組み合わされば、有能な大陸横断クルーザーになるはずだ。しかし、もし充電インフラが限られた場所へ行くのなら、おとなしくコンチネンタル GTに乗っていくことだ。
興味深いことに、ベントレー トルカルのNMCA(ニッケル マンガン コバルト アルミニウム)バッテリーパックは、大航続距離や急速充電だけでなく、寿命を重視して設計されている。ベントレーは自社の車を、シグネットリング(貴族の印台リング)や崩れかけの城とともに何世代にもわたって受け継がれるべき「家宝」と見なしているからだ。
そのため、孫たちが巨大な文鎮(動かなくなったバッテリー車の皮肉)を相続する羽目にならないよう、クルーのブランドはベントレー トルカルのバッテリーが16万km(10万マイル)走行後も元の容量の90%を維持することを保証している。我々は礼儀正しいので、「最近のEVの大半はそれくらいできる」と指摘するのは控えておいた。
デザインに話を移そう。全長5メートル弱のベントレー トルカルは、ショートホイールベースのベンテイガのすぐ下に位置する。ベントレーは、このベントレー トルカルがこれまでで「最も熟考されたデザインプロセス」を体現していると語るが、その結果は…ベントレーのSUVに見える。プロポーションと表面処理は間違いなくベントレーだ。フラットで堂々としたフロント、長いボンネット、筋肉質なリアフェンダー、そして「そこをどけ」と言わんばかりの全体的な雰囲気はすべて備わっている。ベントレーのデザインチームが少し羽目を外したのは、そのディテールにおいてである。
ヘッドライトでは、象徴的なベントレーの丸型2灯デザインが2本の縦線に置き換えられ、光るグリルは近くで見ると驚くほど立体的で、まるで発光するクリスタルがフロントマスクから有機的に生えているかのようだ。すべての人の好みに合うわけではないだろうが、正しく評価するには間近で見る必要がある。総じて言えば、ベントレー トルカルは、あの光る歯(グリル)を差し引けば、かなり無難なデザインに感じられる。
新型ID. ポロにおけるフォルクスワーゲンと同様に、ベントレーは既存の顧客にとってこの新型EVを可能な限り馴染み深いものにしようと努め、電動への乗り換え(あるいは車庫へのEV追加)という概念をできる限りシームレスで面倒のないものにしようとしているように感じられる。先ほど言ったように、アンチ ルーチェ アプローチだ。
インテリアには、フライングBのバッジから着想を得た新しいダッシュボードデザインが採用され、その中心には新しい湾曲したインフォテインメント スクリーンが据えられている。このアイデアは、肘をセンターコンソールに置いたまま手首を動かした際、常に突き出した指からスクリーンが等距離にあるようにすることで、操作の煩わしさを軽減するというものだ。理にかなってはいるが、内燃機関モデルのようにスクリーンを完全に回転させてアナログ時計に置き換えるボタンがないことに対する悲しみは隠せない。
それでも、ベントレーは乗員を過剰に刺激しないよう警戒を怠っていない。「デトックス」と記された大きなボタンを押せば、センタースクリーンはミニマリストな設定に縮小され、空調には引き続き物理的な(当然、ローレット加工が施された)コントロールが用意されている。オプションリストのどこを探しても、助手席用のインフォテインメント スクリーンは見当たらない。自然は回復しつつあるのだ!
いじくり回すための2つ目のスクリーンの代わりに、助手席の乗員には、賞賛し、撫で回したくなるような素晴らしい素材の数々が用意されている。ベントレーはFox Brothers & Coと協力し、柔らかくも堅牢なメリノウールを開発し、室内装飾のオプションとして提供している。さらに、2026年のメニューに新しいウッドトリムのオプションが追加されたことは大きな喜びだ。クルーの最高峰の木材使い(ツリー ウィスパラー)たちは、薄い板を何枚も重ね合わせて圧着し、豪華な「ombre(オンブレ=陰影)」効果(原文では"hombre"(スペイン語で男)と誤記されているため、後述のコメントで突っ込まれている)を生み出す新しい仕上げを革新した。
他の部分でも、音と光が慎重に活用され、すべてが愛らしく、高価なものであると感じられるようになっている。ウインカーの音は革のハンマーが動く音を録音したものであり、音声コマンドを起動した時の音は、誰かがクリスタルグラスの縁に息を吹きかけた音だ。
なんと、人工的なV8のエンジン音まで用意されている。もちろん、下品になるような荒々しいものではない。ベントレーによれば、これはドライバーだけでなく同乗者のためでもあるという。聴覚的な文脈がないことが、しばしばEVで人々が異常に車酔いを感じる原因になるからだ。賢い!
実際の走りがどうなのかについては、あと数ヶ月待たなければならない。しかしベントレーは、様々なドライブモードで全く異なる個性をもたらすというアクティブ サスペンション システムを特に誇りにしている。コンフォートモードでは「魔法の絨毯」のような乗り心地を誇る一方で、最も尖った設定では、床下の巨大なバッテリーとそれに伴う低重心の恩恵を受け、これまで作られた中で最もダイナミックな4ドアのベントレーになると保証されている。
ベントレー トルカルの価格は3,650万円(173,300ポンド)から、ベントレー トルカル Sは4,200万円(199,300ポンド)からとなり、最初の納車は2027年夏を予定している。さて、ベンテイガの注文をキャンセルする時間だろうか?
=海外の反応=
「Top Gearよ、フランス語で陰影を意味するのは『ombre(オンブレ)』だ。ベントレーが『hombre(スペイン語で男)』効果のウォールナット材なんて作ってないことは保証するよ。男のクルミ(金玉の隠語)を模したオプションにチェックを入れる奴が多いとは思えないからな。まあ絶対とは言えないが、本物の皮(ベニヤと掛けている)を調達するのは法的に少し怪しいだろうね。
この手の車としてはプロポーションはかなり良いと思うけど、フロントのデザインは下品さと平凡さの奇妙なミックスを選んだ上に、リアは特徴がない。でも、ウール張りのインテリアは素晴らしい空間になりそうだ」
「冗談だろ。あの『グリル』はカーペットの切れ端みたいだし、緑色はバンの塗装みたいで、リアは想像力のかけらもない中国製SUVだ。最も退屈な車としてフェラーリのEVに対抗しようと決めたみたいだな」
「なんてこった。あのグリル…何を考えてたんだ? ヘッドライトもかなり不快だ。それ以外の部分はベンテイガよりずっと良いのに、フロントエンドが酷すぎる。インテリアもポルシェ カイエンならいいけど、ベントレーにしては特別感が足りない。VWのコスト削減の最初の兆候か?」
「どうしてロールス ロイス スペクターと全く同じ見た目にして、さらにずっと醜くしようとしたんだ? ゴールドのカラーまでスペクターのプレス向け資料から丸パクリじゃないか。これに比べたらコンチネンタルGTも、ベンテイガでさえ綺麗に見えるよ…」
「正直、あのグリルがなければJaecoo(中国チェリーの安価なSUV)と間違えられそうだ。内外装ともに、特に特別には見えないな」
↑「Jaecooがレンジローバーのデザインをパクってるのは知ってるが、『レンジローバーにそっくり』なんてのはナンセンスだ。100メートル離れて目を細めればそう見えるかもしれないが…。
それに、この新型ベントレー トルカルもJaecooには見えない。ボディワークはきちんと彫刻されているし、確かな存在感がある。実物を見れば素晴らしいはずだ。Jaecooは安っぽく平坦な、車輪のついた量産箱だ。このベントレー トルカルはそうならない。誰もがするような怠慢な比較に過ぎないね」
「フロントの顔つきが、針金みたいな眉毛をした『どうぶつの森』のキャラに見えるな。トヨタ センチュリーSUVの雰囲気も少しある。まあ、そのうち慣れて好きになるだろう」



