1941年の誕生から85年。「どこへでも行ける」哲学を貫くジープから、最強グレード「アンリミテッド ルビコン」をベースにした100台限定車『Jeep Wrangler 85th Anniversary Edition』が登場した。アメリカンアウトドアを体現する専用のチェック柄内装や特別色ホイールを装備。アンバサダー平野歩夢氏の動画も公開された究極のオフロードギア、その全貌を解説する。
自動車業界には、いつの時代も変わらない「岩」のような存在がある。昨今のトレンドである流線型の有機的なデザインや、風洞実験室で何千時間もかけて削り出された空気抵抗係数などという、エコで軟弱な概念を完全に無視し、ひたすら己の信じる我が道を突き進むクルマだ。その筆頭であり、絶対的な王座に君臨し続けているのがジープ ラングラーである。
我々トップギア ジャパンの編集部がある東京のコンクリートジャングルを眺めていると、たまにこの四角い鉄の塊が堂々と闊歩しているのを見かける。タイヤには泥の跡ひとつなく、おそらくオフロードなど一度も走ったことがなさそうな、ショールームから出てきたばかりのようなピカピカのボディで。だが、それでいいのだ。最高時速300km/hのスーパーカーで都内の渋滞をノロノロ走るのと同じように、地球上のあらゆる悪路をねじ伏せる本物の走破性という「圧倒的な余裕」を、あえて都市部で転がすことこそが、現代における究極の贅沢なのだから。
さて、そんな愛すべきSUVの元祖であるジープが、2026年に記念すべきブランド創設85周年を迎えるという。1941年の誕生以来、「Go Anywhere. Do Anything.(どこへでも行ける。何でもできる。)」という、まるで映画に登場する腕利きの特殊部隊のようなスローガンを掲げ、自由と冒険を象徴するブランドとして歩み続けてきた。85年前といえば、世界は激動の時代。ジープの原点である「ウィリス エムビー」は、もともと戦場という究極の極限状態を生き抜くために開発された軍用車両である。そこから途切れることなく受け継がれてきた屈強なDNAを、最も色濃く継承しているブランドの象徴的なモデルがラングラーだ。
その歴史的な節目を祝うべく、Stellantis ジャパンは2026年8月5日、アニバーサリーイヤーを彩る限定車の第一弾として「Jeep Wrangler 85th Anniversary Edition(ジープ ラングラー エイティーフィフス アニバーサリーエディション)」を正式に発表した。
この記念すべき限定車のベースとして選ばれたのは、ただのラングラーではない。現行ラインアップの中で、極悪非道な岩場や泥濘地ですら鼻歌交じりで走破してしまう、最強のオフロード性能を誇る「アンリミテッド ルビコン」グレードである。(ルビコンという名前は、アメリカのカリフォルニア州にある世界一過酷と言われるオフロードコース「ルビコントレイル」に由来する。前後のディファレンシャルをロックする機能や、フロントのサスペンションストロークを極限まで伸ばすためにスウェイバーを電子的に切り離す機能など、大半の都市部ユーザーにとっては一生に一度もスイッチを押さないであろう、ガチすぎる四輪駆動システムを満載した、まさに走るスイスアーミーナイフである)。この硬派極まりないルビコンをベースに、ジープが85年にわたって培ってきた伝統と冒険の精神を表現する数々の専用特別装備を惜しげもなく投入したのが、今回の限定モデルなのだ。
まず特筆すべきは、そのインテリアの仕立てである。重厚なドアを開けると、そこには無骨なエクステリアからは想像もつかない、驚くべき光景が広がっている。なんと、シートの中心部分やインストルメントパネルのインサートに、専用の「プレイド(チェック)柄」が大胆に採用されているのだ。(チェック柄のシートといえば、我々クルマ好きとしてはどうしてもフォルクスワーゲンのGTIシリーズを思い浮かべがちだが、ジープがこれをやると一気に「アメリカの屈強な木こりのネルシャツ」や「大自然でのグランピング」といったワイルドな雰囲気が漂うから不思議なものである)。プレスリリースによれば、これはアメリカの古き良き伝統やアウトドアカルチャーから着想を得たデザインであり、壮大な自然の中で過ごす時間や、気心知れた仲間や家族と囲むキャンプファイヤーの温もりを感じさせることを意図しているという。
さらに細部を見れば、チェック柄のシートには誇らしげに「85th」のタグがあしらわれ、シフトレバーには専用の「85th」ロゴ入りメダリオンがキラリと輝いている。リアのテールゲートにも専用の「85th」ロゴ付きプレートが装着されている念の入れようだ。そして足元には、立体感のある織り目と極めて高い耐久性を備えた専用のバーバー織りフロアマットが敷き詰められている。(バーバー織りのマットは、泥だらけのブーツで乗り込んでも、あるいはドライブスルーで買ったコーヒーを派手にこぼしても、水洗いでガシガシ汚れを落とせそうなタフさが魅力だ)。ラングラーならではのスパルタンな魅力の中に、どこか懐かしく温かい上質感を絶妙に融合させた特別な空間に仕上がっている。
エクステリアの演出も見逃せない。足元を力強く支える専用の17インチアルミホイールには、「スチール オキサイド」と呼ばれる特別な専用塗装が施されている。(スチール オキサイドを直訳すれば「酸化鉄」、つまりサビのことだが、長年使い込まれた愛着のあるアウトドアギアの味わい深い質感を表現しているのだという。もちろん本当にサビているわけではないので、神経質なオーナーも安心してほしい)。
そして、漆黒のブラックボディに鮮烈なアクセントを加えているのが、「ブルー アガベ」と名付けられたカラーを採用した専用デカールである。(アガベと聞いてテキーラの原料を思い浮かべたあなたは立派な酒飲みだが、まさにその通り。乾燥した過酷な大地で力強く生き抜くアガベ植物から抽出したような、深い青色に由来しているという。くれぐれも飲酒運転は厳禁だ)。このブルー アガベの「85th」デカールに加え、ブロンズのアクセントが入った専用「RUBICON」デカール、さらには同じくブロンズカラーに彩られた「TRAIL RATED」バッジと専用リヤトーイングフックが組み合わされている。ブラックのボディにブルーとブロンズの差し色が絶妙なコントラストを生み出し、ラングラーの持つ根源的な力強さを際立たせながらも、都会の夜にも映える洗練されたアクセントを加えているのだ。
さらに、この85周年の記念すべき幕開けを盛り上げるべく、ブランドアンバサダーを務めるプロスノーボーダーでありスケートボーダーの平野歩夢氏を起用した、特別な動画コンテンツが公開されている。このスペシャルムービーは、特設キャンペーンサイトおよびジープジャパンの公式YouTubeチャンネルで視聴可能だ。
驚くべきことに、世界を股にかけて活躍する平野氏が人生で初めて自腹で購入したクルマも、他ならぬラングラーだったのだという。動画内では、自ら選び抜いたこだわりのパーツをまとったラングラーの納車の様子が収録されている。納車前には「自分で選んだパーツを近くで見るのが楽しみ」と期待を膨らませ、いざ完成した実車を前にすると「めちゃくちゃかっこいい」と、まるで少年のように満面の笑みを浮かべている。(ハーフパイプで空高く飛び回る超人的なトップアスリートが、お世辞にも空力性能が良いとは言えない空力抵抗の塊のようなラングラーに惚れ込んでいるというギャップが、なんとも痛快ではないか)。動画ではさらに、「休日に大自然や落ち着いた場所を気持ちよく走りたい」と、ラングラーと共に過ごす自由な時間への思いも語られており、アンバサダーとしての顔だけでなく、ひとりの熱狂的なラングラーオーナーとしての等身大の魅力が伝わってくる内容となっている。
また、2026年8月22日(土)と23日(日)の週末2日間には、全国のジープ正規ディーラーにおいて「Meet Wrangler(ミート ラングラー)」と題した試乗キャンペーンが大々的に実施される。期間中にラングラーを試乗したファンには、平野歩夢氏とジープダックがコラボレーションした特製グッズ(トートバッグ、またはタンブラー)がプレゼントされるという。(ジープオーナーの間で流行している、他人のジープにアヒルのおもちゃをそっと置いていく「Jeep Duck」の文化を公式がしっかりと取り入れているあたり、流石のマーケティングセンスだ)。数は限られているとのことなので、気になる方は早めにディーラーへ足を運ぶべきだろう。
さて、誰もが気になるお値段だが、「Jeep Wrangler 85th Anniversary Edition」のメーカー希望小売価格は9,440,000円(税込)となっている。発売日は2026年10月3日(土)からで、日本国内ではわずか100台のみという極めて限られた枠での限定販売となる。
約944万円。決して安い買い物ではない。最新の運転支援システムや、まるでリビングルームのような静粛性を備えたラグジュアリーSUVがいくらでも買える金額だ。しかし、我々トップギア ジャパンが日々さまざまなコンテンツを発信する中で、ひとつの確固たる真実に気付かされる。それは、時計などの小洒落たライフスタイル系の話題よりも、真に魂の込もった「圧倒的なメカニズム」を持つ本物の自動車ネタの方が、時に190万回以上のアクセスを叩き出すほど、読者の心を強烈に揺さぶるということだ。人々は、表面的な飾りではなく、根底に流れる確かな「本物」の哲学に惹かれるのである。
この限定車は、単なる移動手段ではない。85年という途方もない時間をかけて泥と埃の中で磨き上げられてきた「本物」の証明であり、自由と冒険を渇望する大人たちに向けた究極のギアである。アメリカの古き良き伝統を現代的な感性で磨き上げたこの第一弾モデルは、これから始まるジープ85周年の壮大な祭りの幕開けを飾るにふさわしい一台だ。この100台のキーを手にする幸運なオーナーたちは、道なき道を行く圧倒的な権利と、自動車史に刻まれる歴史の一部を所有する喜びを、同時に手に入れることになるのだ。
ジープが気になった方へ
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