最高時速326km超!アウディが現代に蘇らせたV16エンジン搭載の幻のスーパーカー「ルッカ」の正体

新型R8ではない。アウディが1930年代に公道最高速記録を打ち立てた伝説のモンスターマシンを現代に蘇らせたのだ。6.0リッターV16エンジンを搭載するワンオフの特注スーパーカー「ルッカ(Lucca)」である。英国のスペシャリストが愛情を込めて作り上げた、このスチームパンクなレーシングカーの全貌と歴史的背景に迫る。


2024年後半にTopGear.comが最後のアウディ R8の製造を手伝って以来、アウディのラインナップには、ミッドシップスーパーカーがあるべき場所に大きなブラックホールが空いていた。今日までは。

これは「ルッカ(Lucca)」だ。正真正銘の新品で、リアにちっぽけなV10を積んでのんびり走るような車ではない。この怪物はメタノールを飲み干し、6.0リッターV16エンジンから火を吹く。おっと、おまけにスーパーチャージャー(過給機)付きだ。まさに「Vorsprung durch ANGRY(怒りによる技術)」(注:アウディの有名なスローガン「Vorsprung durch Technik=技術による先進」をもじったジョーク)である。

ご想像の通り、ここには1つか2つ、ほんのちっぽけな注意書きがある。まず第一に、これから説明するが、このルッカは全く新しいデザインではなく、1930年代の伝説を再現したレプリカなのだ。

第二に、これは量産車ではない。この息を呑むような宇宙船は、インゴルシュタット(アウディの本社所在地)のヘリテージ部門であるアウディ トラディションが特注したワンオフ(世界に一台だけの車)なのだ。

2024年に死の淵から蘇った3座席、V16エンジン搭載の「タイプ52」という過去からの強烈な刺客と同様、このルッカも英国のクラシックモータースポーツのスペシャリストであるクロースウェイト&ガーディナー社(Crosthwaite & Gardiner)が愛情を込めて作り上げた力作である。

3年の歳月と、7桁ポンド(1億9000万円)を下らない「お察しください」な請求書を経て、ルッカはついに命を宿した。

なぜこの奇妙なイタリア風の名前なのか? それは、オリジナルモデルが歴史の1ページにその名を刻んだ場所だからだ。

時は1935年。アウディの前身であるアウトウニオンは、地球上で最速の公道走行車を製造するという、メルセデスとの泥沼の戦いに巻き込まれていた。アウトウニオンの最新の刺客は、基本的に当時のグランプリレーシング用モンスター「タイプA」に滑らかな流線型のカウルを被せただけのものである。車重は1,000kgをわずかに超える程度で、5.0リッターV16エンジンが343bhp(約348ps)の咆哮を上げる。

季節は2月。ハンガリーの(封鎖された)公道で、この最新のアウトウニオン製スピードマシンを試す計画だった。しかし2月ということもあり、天候は最悪だった。そこでアウトウニオンは、代わりにイタリアに目をつけたのだ。

ベルガモとブレシア間のアウトストラーダ(イタリアの高速道路)の区間を検討した後、彼らはそこから300km南下した、トスカーナ州のフィレンツェとヴィアレッジョの間にある新しい場所を選んだ。一番近い都市はどこかって? それがルッカと呼ばれる、ルネサンス期から時が止まったかのような魅力的な街だったのだ。

アウトウニオンがフライングキロ(助走をつけて1km区間の平均速度を計測する方法)とフライングマイルの記録に挑戦するため、5kmの直線区間が割り当てられた。バレンタインデーのテストランを経て、1935年2月15日、間もなくドイツのレーシング界のメガスターとなるハンス スタックが、極小のシングルシートコックピットに乗り込み、最高速度326.975km/hを叩き出した。

これは203.17mphであり、当時の公道において人類最速の記録であった。

アウトウニオンは、第二次世界大戦が勃発するまでの1930年代を通じて、「ライクラスーツ(ぴっちりした水着のような素材)を着た狂気のV16」というコンセプトを開発し続け、時速300mph(480km/h)の領域へと足を踏み入れようとしていた。しかし、オリジナルのルッカはその過程で姿を消してしまったのだ。

旧式化した後に部品取りのために解体されたという説もあれば、多くのアウトウニオン製レーシングアイコンと同様に、1945年に侵攻してきたロシア軍が戦利品として持ち去ったと考える者もいる。いずれにせよ、今日博物館に存在する本物のアウトウニオンはごくわずかである。だからこそ、アウディは文字通り、一族の家宝を再建しているというわけだ。

この新しい車は約1世紀にわたる後知恵の恩恵を受けて作られたため、アウディ トラディションはアップグレードを依頼した。当時と同じ5.0リッターV16の代わりに、公称520馬力を発揮する後期型の6.0リッタースペックが搭載されている。しかも、ちゃんと走るのだ。近日公開予定のトップギアのYouTubeチャンネルで、その独占映像とサウンドを楽しみにしていてほしい。

仕上げの基準も極めて絶妙だ。オープンゲート式(シフトレバーの根本のHパターンが剥き出しになった構造)のマニュアルギアリンケージは鏡のように磨き上げられている。手打ちされたボディパネルは「セルロースシルバー」で塗装されている。これは、昔の塗料のように人間の呼吸器系に悪影響を与えない最新の塗料を使用しつつ、可能な限りオリジナルカラーに近い、信じられないほど繊細な質感を再現したものだ。
鋭い読者なら、スピードメーターが全くもって不十分なままであることに気づいただろう。哀れなことに300km/h(186mph)までしか目盛りがないのだから。

アウディは、ごくたまにデモンストレーション走行のためにこのスチームパンク風のバットモービルを走らせる予定だが、最高速アタックのようなバカげた挑戦をする計画はないと述べている。その理由の一部は、価格(超高額)、シートベルト(無し)、衝突安全性(期待するな)にある。そしてもう一つの理由は、まだ解明されていない謎があるからだ。

アウトウニオンが、戦闘機スタイルのキャノピー(風防)を高速走行時に車体上部へ固定していたそのメカニズムは、歴史の闇に消えてしまった。図面も、設計図も、YouTubeのチュートリアル動画すら存在しないのだ。
もし今、ルッカが栄光を掴みに行こうとすれば、途中で屋根を吹き飛ばしてしまうという、極めて現実的な危険性が潜んでいるのである。

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新車にリースで乗る 【KINTO】
=海外の反応=
「アウディがこれを作ったのは、単に『作れるから』というだけで、他に大した理由がないってところが素晴らしいね。(まあ、実際に作ったのはクロースウェイト&ガーディナーだけど)」
「当時のドイツの、えーっと、かなり残酷な政治的背景(控えめに言って)は別として、このアウトウニオンのマシンは魅力的だ。タイプCは600馬力近く、トルク1100Nmもあって、1930年代にブガッティ シロン並みのスピードを出せたんだから。しかも安全装備ゼロのオープントップレーサーなんて、狂気の沙汰としか思えない代物だよ」
↑「1937年のドニントン グランプリにこいつらが現れた時の反応を読んだことがあるけど、当時の他の機械と比べたらまるで宇宙船だったらしいね。あの30年代のメルセデスやアウトウニオンが本気で走る姿は、今見ても本当に圧巻だよ」
「かっこいい」
「なんてこった、最高に美しいじゃないか」
「注目を集めるための必死なアピールだな」
↑「俺に関する限りそのアピールは大成功してるよ、なんて凄い車なんだ」
↑「あるいは、戦争で失われたアウディの歴史の一部である歴史的モデルの、信じられないほどの完璧な復刻版ってことさ。ひねくれてない普通の感覚の人から見ればね」
↑「オー、ナイン(やめてくれ)! 奴ら戦争の話しやがったぞ」
↑「ハハハハハハ」

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