欧州委員会が新たに定義しようとしている「E-car」という名の車両カテゴリーが、自動車業界で大きな波紋を呼んでいる。これはサイズと性能を制限し、現行の義務化されている高額な安全装備を一部免除することで、極限までコストを抑えた「手頃な小型電気自動車」を促進するものだ。この背景には、2035年の新車エンジン車販売禁止に対する事実上の緩和方針がある。超小型で低価格、かつ必要最低限の装備を備えた「欧州版・軽自動車」とも言えるこの計画は、果たして自動車市場の救世主となるのか。英・BBCトップギアの執筆陣が、この「底辺への競争」とも評される新戦略の実態と海外ファンの本音を深掘りする。

今回の「次の大ブーム」は、実際には「小さなもの」――すなわち「E-car」だ。これは欧州委員会が新たに定義した、小型で手頃な価格の電気自動車カテゴリーである。サイズと性能に制限を設けることで車両価格を抑えるだけでなく、現在すべての新車に義務付けられている高額な安全装備や高速道路での運転支援技術の一部を省略することが認められる見込みだ。
メーカー側には「スーパークレジット」というインセンティブが与えられる。E-carを1台販売するごとに、ガソリン車を1.3台販売することが認められる仕組みだ。他にも、メーカー向けのバッテリー製造補助金や、購入者向けの駐車料金割引など、様々な支援策が検討されている。
「検討されている」としたのは、現時点でまだ規制の詳細が確定していないからだ。パワーや性能の制限、あるいは「小型」の定義が何になるのかさえ不明である。ただ、これらは欧州域内で製造される必要があり、一度ルールが発表されれば、メーカーが再設計コストを嫌うため、少なくとも10年間はルールが変更されないことだけは決まっている。
とはいえ、メーカー各社は、このE-carルールが2035年に予定されていた欧州の新車ガソリン車販売禁止措置の転換という、より大きな変化の一環であることに大喜びだ。新ルールではガソリン車が10%まで許可され、e-fuelの使用でもクレジットが得られるようになる。全体として、新車のフリート(保有台数全体)の排出量を2021年比で90%削減しなければならない。EUは、低CO2製鋼プロセスの補助など他の手段を合わせることで、実質的に100%ZEV(ゼロエミッション車)化と同等の削減効果が得られるとしている。
ステランティスのような自動車メーカーは、古い車を買い替えることは、安全性や有害排出ガスの削減だけでなく、CO2削減の観点からも有益だと主張してきた。EU圏内を走る2億5000万台の車の平均車齢は12.5歳に達しており、さらに高齢化している。その上、多くの車がそれ以上に長く使われ続けているのが現状だ。ステランティスは、新型の小型ガソリン車は旧型車よりも効率的であるため、小型で手頃な車はガソリンエンジンであっても許容されるべきだと訴えてきた。
E-carの規制が確定した後も、現行の新車規制と大きく異なる内容であれば、適合する車を設計し、販売にこぎつけるまでには少なくとも2年かかるだろう。それに、イギリスではこれらの車が全く販売されない可能性もある。なぜなら、メーカーが支援やクレジットを受けられるのはEU域内だからだ。イギリスも同様の法整備を行わない限り、話は別である。
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=海外の反応=
「欧州版の『軽自動車』を持つというのは確かに面白い見通しだ。あまりにハンデが大きすぎない限り、エキサイティングでさえある。どれだけ売れるかが問題だけどね」
「週末にBYDの車をいくつか試乗したんだが(せいぜい、ひどい出来という印象しか残らなかった)、ディーラーが言っていたのは、中間グレードの需要はほとんどないということだ。みんな一番デカいSUVか、一番安いシティコミューターを欲しがっている。その話を聞いて、小型車というジャンルはまだ死んでいないと少し希望が持てたよ。ただし、運転中に『リール動画』を観ている連中のSUVに横から突っ込まれて、潰れたキューブ状のスクラップになるような結果にならない限り、の話だけどね」
「このクレジットインセンティブは、自動車市場が製品ラインナップに大きな溝を作るよう突き動か——いや、モチベーションを与える——ような気がする。EUの基準を満たす小型車が一方で売られ、それ以外のラインナップは、あまりに高額すぎて状況をさらに悪化させるような、利益率重視のマスタークラスの車で埋め尽くされるんだ。トゥインゴ級の小型車が一方にあり、その次はもういきなり巨大なエスパス(ミニバン)のような車になる。ゴルフやそのサイズの車は生き残れないだろう」
「その間、小型車たちは『いかに安く、いかに儲かり、いかに最低限の装備にするか』という底辺への競争を繰り広げるだろう。消費者の利益のためではなくね。ライアンエアー(※格安航空会社)が製造し、ルフトハンザ(※フラッグシップ航空会社)が販売するようなものさ」
「正直なところ、ガソリン車の強みである『長距離航続』と『ガソリンスタンドでの給油の速さ』に対して、高価で性能の劣るEVで対抗しようとする戦略が、なぜ理にかなっているのか理解できない。現在の技術でいえば、夜間に充電できる小さなシティコミューターこそが最適な使い方だと思っていたよ。膨大な航続距離も超急速充電もいらない。複雑な車体よりも、ずっと効率的で快適な街乗り車になるはずだ。全固体電池が実用化されるまでは、これが賢いやり方なんじゃないか?」





