なぜEVのバッテリーは重いのか?BYDやBMWが導入する「セル・トゥ・ボディ」が解決する課題とリスク

電気自動車(EV)の最大の弱点は、重量とコストの塊であるバッテリーだ。従来のEVは、セルをモジュール化し、さらにそれをパックに収めるという重厚な構造を採用してきたが、このやり方は無駄も多い。現在、BYDやテスラ、そしてBMWの次世代「ノイエ・クラッセ」などがこぞって採用を進めているのが、バッテリーそのものを車体構造の一部にする「セル・トゥ・ボディ」技術だ。これによりEVは、軽量化、航続距離の延長、そしてコスト低減という「三方よし」を実現しようとしている。このEV界の次なる大革命がもたらすメリットと、専門家が懸念する修理リスクの深層を解説する。


バッテリーはかさばり、重い。誰もそんなものは望んでいない。さらに悪いことに、その過剰な重量の多くは、電気を蓄える「セル(電池の最小単位)」そのものからではなく、それらを収容し冷却するための構造物から生じている。

EVは個々のセルを使用し、それらを直列に繋いで、駆動システムに必要な約400Vや800Vという電圧を確保する。一般的な手順は、多数のセル——おそらく20個強——を「モジュール」と呼ばれる構造体にパッケージングすることだ。これは基本的に金属製の箱であり、セル間の配線や冷却チャンネルが組み込まれている。そして、複数のモジュールをより大きく強力な「バッテリーパック」という箱の中に固定する。

これは安全な方法に思える。セルは三重の箱に守られているからだ。もし一つのモジュールでセルが故障しても、パック全体ではなく、そのモジュールだけを交換すれば済む。しかし、それは同時に無駄の多いやり方でもある。冷却チャンネルや配線は、これら構造用の鋼鉄やアルミニウムの間を縫うように這わさなければならず、構造物自体もかさばるのだ。

そこで、BYDのような革新的なメーカーはモジュールを廃し、セルを直接バッテリーパックに積み上げている。温度を均一に保つために冷却チャンネルと配線は再設計され、慎重な設計によって修理可能性も維持されている。そもそもセルが故障することは滅多にないのだ。

BYDのセルは、近年の多くの車種と同様に「リン酸鉄リチウム(LFP)」の化学組成を採用している。これは安価な鉱物を使用し、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン(NCM/NMC)タイプよりも発火しにくいという利点がある。LFPセルはNCMよりもエネルギー密度が低いため、LFPバッテリーの構造においてスペースと重量を節約することは重要であり、モジュール構造を廃止することは理にかなっているのだ。

BYDはこれを「ブレードバッテリー」と呼ぶ。テスラは「ストラクチュラル・バッテリーパック」と呼ぶ。多くの中国メーカーがこの段階に達しており、ルノーは「トゥインゴ」に、VWは新型小型EVにこれを採用している。

そして次なる段階が「セル・トゥ・ボディ」だ。ここでは、バッテリーはもはや独立したユニットですらない。バッテリーパック自体が、車のモノコック(車体構造)の一部となっているのだ。ここでもBYDは「Seal(シール)」で実現しており、BMWは「ノイエ・クラッセ」で採用している。言い換えれば、車体はバッテリーなしでは自立できず、バッテリーも車体と一体化して初めて完成品となる。

セル・トゥ・ボディのバッテリーなら、車内のスペースをより有効活用でき、セルを増やして航続距離を伸ばせる上、軽量化が可能で、潜在的にコストも下げられる。ただし、これは非常にトリッキーな設計を要求する。バッテリー周囲の下部構造のあらゆる要素が、少なくとも二つの役割(構造体としての強度確保と、衝撃吸収や温度管理)を同時にこなさなければならないからだ。

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=海外の反応=
「セルが『滅多に』故障しないとしても、ノイエ・クラッセで不良セルがいくつか発生した場合、それを取り出して交換するコストは一体いくらになるのか疑問だ。最近の車は(ギガキャストもそうだが)少ない一体成型部品で作る傾向がある。組み立てや重量は節約できるが、小さな損傷が車全体の全損(廃車)に繋がってしまうんじゃないか?」
「それ以外にも要因はある。衝突時の衝撃を吸収するためにクラッシャブルゾーンが設計されているが、軽い事故でさえ構造の重要な部分を押し潰してしまうことがある。また、ホイールを四隅に追いやるトレンドのせいで、高価な部品(ホイール、タイヤ、ブレーキ、サスペンション)が事故の現場に近い位置に配置され、損傷リスクが高まっている。ハロゲン/キセノンヘッドライトなら数百ポンドの部品代と電球で済んだものが、LED一体型のアセンブリになれば1,500ユーロ以上かかることもあるんだ」
「もしノイエ・クラッセでセルがいくつか故障しても、コストはゼロだよ。長年メーカーは、広告されている使用可能容量よりも大きなバッテリーを搭載することでこれを補ってきた。セルがいくつか死んでも、車がシームレスに予備の容量に切り替えるから、あなたは一生気づくことさえないだろう」

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