ピアジェ アルティプラノ アルティメート コンセプトは、最も薄い機械式時計のひとつで、ピアジェの研究・イノベーション部門により自社で開発・製造されたもの。6年間にわたり各チームがプロジェクトに従事し、これまでの技術を集約し、まったく新しいウォッチメイキングを生み出した。価格は4,400万円(税抜)。
このアルティプラノ アルティメート コンセプトを、実際に間近で見る機会が得られたので、ご紹介しよう。何よりもカスタマイズの豊富さが魅力だ。受けと文字盤の色、針とメインプレートの仕上げ、そして自分の肌になじむストラップを選ぶことができる。ます。約 10,000 もの幅広い選択肢が可能で、世界で唯一無二の自分だけのオリジナルの時計を作ることができるのだ。
ピアジェは1874年にスイスで創業した歴史あるブランドだが、顧客のためにウォッチケースの形や文字盤やブレスレットのタイプ、ジェムセッティングのデザインなどを提案するサービスを50年前から採用していた。この考えは広く受け入れられ、世界中のピアジェの店舗で実施されていた。そして今、オーナー一人一人の要求に合わせた「アルティプラノ アルティメート コンセプト」のカスタマイズが可能となったのである。上の写真にあるのは、実際にシミュレーターを使って選んでみたものだ。こういった体験をしたいという人は、ピアジェ 銀座本店 などで試してみよう。
アルティプラノ アルティメート コンセプトのもう一つの特徴として、ケースとサファイアクリスタルを含めた厚さわずか2mmのウォッチということが挙げられる。正面から見えているのと、サイドにしたときでは、全く違った顔を見せてくれる。ピアジェは 1957 年に手巻キャリバー9P を製造して以来、常に薄型のウォッチにフォーカスしてきた。ブランドを代表するウォッチ「アルティプラノ」は薄型ウォッチの代名詞となった。 特に、キャリバー「9P」が発売された当時、2mm という薄さは世界最薄の機械式ムーブメントのひとつだったのである。
以来ピアジェはこの分野において一連の記録を確立してきた。2017 年に発表されたキャリバー「670P」の薄型フライングトゥールビヨンのみならず、1960 年の 2.3mm キャリバー「12P(当時世界最薄、自動巻ムーブメント)」からスケルトン、ダイヤモンド付きスケルトン、デイト、自動巻、手巻、手巻クロノグラフウォッチにまで及ぶ。
部品の数は 283 個にも及び(基本的な手巻ウォッチより少なくとも 100 個は多い)、究極の薄さを実現するために顕微鏡レベルの極めて小さいサイズの部品が使用されている。それにもかかわらず、精度、信頼性、堅牢性に対するピアジェの厳格な基準は厳しく守られた。同じく、手作業で精巧な装飾が行われるムーブメントを生み出す当メゾンに対する評価も守られたのだった。
ピアジェの職人はこの課題に取り組み、サンレイ仕上げやサテン仕上げ、受けの面取り・ポリッシュをしてムーブメントを飾り、ケースと地板の部分には高度な PVD 処理で見た目を美しくした。
また、薄さを追求するため、そして実用性を維持するために、特別な薄いアリゲーターストラップと、ブルーのバルティモラストラップを開発した。それらはベルベット調カーフスキンのライニングと頑丈なケブラー芯を特徴とし、薄いコバルトピンバックルで留まるようになっている。
アルティプラノ アルティメート コンセプトのもとになっているのは、層構造ではなく、サイズを調整した多数の部品を組み合わせ、ケースとムーブメントを一体化させるという斬新なアイデア。その過程で、様々なパーツの小型化を追求した結果、ピアジェは5つもの特許申請に至っている。こうしてホイールの厚さが0.12mm、サファイアクリスタルが0.2mmという、 2mmという超薄型の手巻ウォッチが実現した。
香箱も設計を刷新し、カバーやドラムをなくして、それをセラミック製ボールベアリング 1 箇所に取り付け、完全に巻かれた状態から 40 時間のパワーリザーブを可能とした。
リューズも入れ子式(特製の巻き上げツールを使用)の平らなものが新たに開発され、ケースに埋め込まれた。その内部では従来のスライディングクラッチに代わって、たったひとつのネジが稼働する。
文字盤の位置が中心からずれているため、従来の真っ直ぐな巻真が使用できない問題を、「心棒」の特許技術を取得することで解決した。
このように極めて薄い「アルティプラノ アルティメート コンセプト」を着用した場合、肌とムーブメントの間にあるのはわずか 0.12mm のコバルトのみ。すなわち、針に対しても新たなアプローチが必要となった。文字盤と 2 本の針をブリッジ(受け)の上に配置する代わりに、ブリッジの下に文字盤を配したことで、衝撃を受け剛健なクリスタルと接触しても、部品が保護されるのだ。
これらを完璧に機能させるため、分針は通常の針のままだが、時針は回転ディスクに表示させるようにしてある。「アルティプラノ アルティメート コンセプト」は確かに薄いウエハースのようでいて、曲技飛行のジェット機で経験する G フォースの圧力レベルから、地球に激突する隕石の力まで、あらゆるものに耐えられるほどタフなのである。
そして、第20回Grand Prix d’Horlogerie de Geneve(GPHG - ジュネーブ ウォッチ グランプリ)で"Aiguille d’Or (金の針賞)” を受賞したばかりだ。
現在発売中のトップギア・ジャパン 039号はカスタマイズ時計を特集し、こちらの時計を取り上げているので、参考にしてほしい。