トップギアTVプレゼンター パディ マクギネスの人生とクルマ

現在のトップギアTVのプレゼンターを務める、イギリスのコメディアンのパディ マクギネスは1973年生まれ。パディがこれまでに乗ってきたクルマについて語る。

父は私にヒルマン アヴェンジャーで、運転を教えてくれたんだ。そのクルマでは、世界最強の男、ジェフ ケイプスのように、足でクラッチを全力で踏み込まなければならなかったので、道路でカンガルーのように跳ね上がったり下がったりしていたのを覚えている。だが、その後アヴェンジャーは、僕が原因で壊れてしまい、父は結局、クリーム色のローバー メトロに乗り変えることで、諦めなければならなかった。
クラッシュの経緯はこうだった。仲間のクルマを追い越そうとしたのだ。どうにかして通過したと思った瞬間(たかだか、ローバー メトロなんかに!)、相手のクルマをVの字に跳ね飛ばし、そしてクルマを前後逆向きにしてしまった。そのメトロはぺしゃんこになり、もう1台は少しへこんだ。僕は公衆電話から父に電話し、起こったことを正直に話さなければならなかった。その後何年も、ボンネットは太いゴム紐で押さえられていた。そう、修理代金が無かったからだ。
じつは、初めての運転免許試験には不合格だった。インストラクターは60歳代のヨボヨボのじいさんだったから、ハズレたよ。2度目のときはすごく暑くて、サッカー選手のケビン キーガンブランドのショートパンツをはいていた。試験官は女性で、めでたく合格した。
最初のクルマは友達から買った。タンジーと呼ばれていたその友人から、赤いボディ、ツインウェバー、コショウのフタのホイールの2代目フォード エスコートを売ってもらった。彼は90ポンド(1.3万円)欲しがっていて、僕は彼に値引き交渉を持ちかけた。「車検は終わっているのか?」「いや。90ポンド」「税込?」「いや。90ポンドだから」「もういいや、もらっていくよ」
その後、ターコイズ色のキャバリエを手に入れ、それをレカロシート付きのオースチン モンテゴと交換した。ボンネットを持ち上げたり、何か質問したりすることはせず、ただ仕事中のそいつに向かって言ったのだった、「交換するかい?」と。だが、それは壊れていた。その1か月後にフォード シエラを買ったのだが、これはもっとひどかった。
しかし、僕はフォードに乗り続け、オリオンとXR3iを持っていた。オリオンは無垢な白だった。白、灰色のベロア。私はそのクルマのために、一所懸命節約した。値段は約1,000ポンド(14万円)で、パワーウィンドウが付いている。「ついにオレもここまで来れたか」、と思った…。と思ったのもつかの間で、ブラックアイスバーンに乗ったときに、さっきの言葉は帳消しにしたけれど。でも、オリオンをとても気に入っていたね。
XR3iは、「自分はここにいるよ、みんな」とアピールしているように感じさせるようなクルマだった。若い女の子や男の子がこっちを見ている目線に気付いたのは、そのクルマが初めてだったな。黒いボディ、グレーの内装、ブラウプンクトのステレオ、後ろには大きなサブウーファー。リスペクトされて、コメディ番組のフェニックスナイトに出てきそうなクルマ。バルティモアの「ターザン・ボーイ」を聞きながら、上機嫌で運転した。このクルマには、払った金以上のものを経験できたと思っている。本当に。
それから、アルファ ロメオ 156 2.0 ツインスパークを買った。TVでは、フェニックスナイトのセカンドシリーズをやっていた。28歳のときだ。クリーム色の革とウッドトリムのついた、シルバーのもので、見事だった。買って初めて、アルファ ロメオについて人々が言うことが本当なんだと、理解できたものだ。アルファ ロメオは、正真正銘のホンモノ。美しく、メカとしても最高。機械洗車に行くと、フロントガラスの上から水が降って来たけれど!
ある女の子のためにスバル STiにしたが、その後、別な女の子のために、またクルマを変えた。新しいガールフレンドはスバルが大嫌いだったので、もう我慢できず、初めてレンジローバー スポーツを買うことになる。そして、それ以来ずっとこのクルマだ。2005年から2019年まで、ずっとレンジローバー スポーツの黒づくし。
それから、しばらくアストンマーティン ヴァンテージ V8 に乗っていた。サッカー選手友達のジェイソン マカティアから買ったものだ。一日中それを眺めていることもできるほど美しかったが、乗り心地は決して快適だとは思わなかった。このV8の後は、クルマを慎重に選ぶようになり、メルセデス・ベンツ CLSを購入したが、長くは持っていなかった。その後はベントレー コンチネンタル GT。こいつは、なんてクルマだ。製造工程を見るために工場見学に行ったが、仕事の正確さは一目でわかった。それから、夏の間はしばらくフェラーリ カリフォルニアに乗っていたね。クリス ハリスはこのクルマに乗っていることを嘆いたが、毎日使うことができるし、とても気に入っていた。パンの製造メーカー、ウォーバートンで働いていた友達に会いに行ったときには、宝くじにでも当たったのかと思われていたんだけれど。

パディのクルマ
ヒルマン アヴェンジャー

フォード エスコート XR3i

アルファ ロメオ 156

アストンマーティン V8 ヴァンテージ

フェラーリ カリフォルニア

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